第33話 歩さんかあゆむちゃんか
「あ、あの、しー、しーです。あゆむちゃん起きちゃいますよ」
「す、すまない」
部下の彼女ではあるが、独身女性の部屋に入るの初めてだ。※姉はノーカン
そもそも未婚女性が男性を部屋にあげる意味って…。
ないよな。わかってるよ。
笹原さんはアイツしか眼中にない。
俺をこの部屋に呼んだのもあゆむちゃんが寝てしまったからだって事だ。
ああああ、笹原さんの友達を紹介してくれないかなぁ。
そう思うのも、今の彼女は幸せの絶頂にいるような雰囲気が駄々洩れになっている。
漫画的表現で言えばハートが具現化して飛び交っているのだろうな。
ここまでの幸せが溢れるのは男に戻った一ノ瀬が何かしたとしか思えない。
どこまでやったんだ?まさか、一線を越えたのか。
だとすると、一ノ瀬もついに男になったか。※姉はノーカン
「それで、家出はどこまで行ったんでしょうね」
「それが記憶が曖昧なんですよね。すごく近くに居たような気がするんです」
「なるほど、もしかすると一ノ瀬の部屋のように一ノ瀬の存在ごと消滅しかけていたのかもしれないですね」
「それだと存在を忘れてしまいませんか?私は覚えていましたが、
「え、ああ、覚えていましたよ。う~ん?覚えていたと言う事はそうではないと言う事…か?」
うん?存在ごと消滅?何か引っかかるんだが、なんだったかなぁ…。
「それよりも、一ノ瀬はどうやって男に戻ったんですか?」
「それが殴られた拍子に気を失ってしまって、そのあとすぐに戻っていました」
「殴ったって…笹原さんが殴ったのですか?」
「いいえ…、実は、その時昔の彼氏が来ていまして、その人があゆむちゃんを殴り飛ばしたんです」
「なっ、子ども相手に酷い奴ですね」
「その後、元の姿に戻ってソイツを殴り飛ばして追い払ってくれたんですよ」
言いにくそうに言った昔の彼氏は何しに来たのか、聞かなくてもなんとなく察した。
暴力的な行動を取るような奴なら、きっとどうしようもない奴なんだろう。
笹原さんは怪我をしなかったのかと一瞬確認しようと思ったが、この幸せそうな表情から考えて、これ以上蒸し返すべきではないと思った。
それで、暴力を振るわれて気絶したのが男に戻るトリガーになったのか?
だからと試す訳にもいかない。そんな事をしたら笹原さんに嫌われる。
いくら部下の彼女とは言え、女性に嫌われるというのは精神的に堪えるのだ。
「戻ったあと、また子どもに戻るまでの間はなにをしていたのですか?」
「あ…、それ、聞いちゃいます…?えへへ…」
あ、やっばい。これやばいわ、聞いてはならん事を聞いたかもしれん。
「実はですね…、歩さんがその、全裸でして…」
「あ、あーあーあー、わかりました。それ以上は聞きません。って全裸?どうして?子どもの状態で着ていた服は?」
「あ、着ていましたよ。でも、見た事のない成人女性もののコートでした、それが破ける様はまるでどこかのアニメみたいでした」
「アニメってあたたた的な?」
「ええ、あたたた的です」
「不思議な事に、コート以外にの服の残骸が無かったんですよね」
「裸コートだったとかですかねって、子どもがそんな事しませんよね、ははは」
「そのあと、お互いを直視できなかったので背を向けて話し合ってたのですが、そのうちに元に戻ってしまいまして」
「え、エッチな事をしたとかではなく?あ、し、失礼、忘れてください」
「あははは、残念ながらそうはならなかったんです」
「残念って…」
「あ、すみません、はしたない事を…」
「正直に言うと、全裸でって所で照れてたので、そう想像してしまいましたが照れながら言う要素ありましたか?」
「え、ええ、だって、好きな人の全裸ですよ?って、もうっ何言わせるんですかっ」
「んん……あれ……、潤井さん?」
「あゆむちゃん、おきちゃった?」
「…お前、どっちだ?」
「どっちって俺は俺だけど?ん…え?幼女に戻って…る」
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