第32話 振り回される潤井さん
俺はなんであんな辺鄙な所に居たんだ?
俺はあんなボロアパートに何の用があったんだ?
記憶が混乱している。
何か思い出せそうではあるんだが…。
笹原さんから、一ノ瀬が消えたとの連絡を受けて、とりあえず会って話をする事にした。だが移動時間を考えると予定していた外出時間を過ぎてしまう。
仕方がないから、もう今日は仕事をする時間がないだろうと諦め、部下に連絡を入れた。
トゥルルー…トゥルルー…
『俺だ、ちょっと用事が長引きそうなんで、午後は休みにすると皆に伝えといてくれないか』
『わかりました伝えておきます。そういえば、朝会のあとトラブルがありまして』
『どうした?システムトラブルか?』
『それが、システムトラブルの方は解決したのですが、その件で緊急会議をした時に一ノ瀬さん…かもしれない人が途中で退出しました。かなり様子が変でしたね』
『は?どういう事だ?かもしれないってもう少し具体的に』
『なんといいましょうか、犯人のインタビューみたいな声でして、よく聞くと薄っすらと幼女の声が混じったり、口調が子どもになったりで…一ノ瀬さんって妻子持ちでしたっけ?』
ピッ
早速なにしてくれてんだアイツはっ。
どうして、直接会議に出た?ああ、なにか話しづらい状況にあって、気まずくて彼女に頼めなかったのか?
それで、自分でどうにかしようとしたが、どうしようもなくなって家出?
わからん、なにがどうなったら家出する事に繋がるんだ…。
いやいや、今の一ノ瀬は能力こそ大人だが感情的には間違いなく子どもだ。
その子供が何をやるかなんて俺に想像できるわけないだろう。
それにしても、この移動時間がまどろっこしい。
◆ □ ◆ □ ◆
ブーブッブブブッ………
まだ到着には時間がかかるというのに、笹原さんから電話がかかってきたと思ったらすぐ切れた。
と思った直後、メッセージが届いた。
『あゆむちゃんが帰ってきて歩さんになりました!』
うん?何言っているんだ?俺の日本語の読解力が低いのか?
ぜんっぜん理解できん!
それから返事をしても中々返事がこず、やきもきしていた。
もうすぐ待ち合わせの喫茶店に着くと思った頃に電話がかかってきた。
『あの、直接私の部屋に来ていただけますか?住所はメッセージで送ります』
『わかりました。所で先程のメッセージはどういう意味だったんですか?』
『はい、あゆむちゃんが元に戻ったんですよ。元の姿に戻ったんです』
『おおっ、本当ですかっ、急いでいきます、結構近くにいるので、すぐ着きます』
『はいっ待ってます』
んで、なんで一ノ瀬が電話をしてこないんだ?
◆ □ ◆ □ ◆
笹原さん宅───
目の前に膝枕で幸せそうに眠る幼女がいた。
「なんでだよ!!!」
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