第21話 お買い物デート
「変な邪魔がはいっちゃったね。それで何たべよっか」
「うーん、パスタ!」
「パスタすきなの?」
「うん、だいすきっ」
歩さんもパスタが好きなのかな?
元に戻ったら歩さんの好きな物をいっぱい聞いて、いっぱい作ってあげたいなぁ。
料理を食べ終わるころに気付いた。
あゆむちゃんが頼んだのはトマトソース系で、そのトマトソースが口の周りと服に着にべったりとついてしまっていた。
頭は良くても体を動きは見た目の歳相当かそれ以下なのかな。
「もう、口の周りにいっぱいついてるよ」
口の周りを拭いてあげる。
なんだか、本当の親子みたいな感じがする。
実は私と一緒の戸籍にあゆむちゃんが入ってたりしないよね?
こういうお世話をするのは嫌いじゃない。でも、できたら恋人同士のような事もしたい。
指輪を貰ってから、私は欲張りになってしまった。
恋人同士のような事をしつづけたら、元に戻るかもしれない。
根拠なんてないけど、できる事をしたい。ただそれだけ。
問題は女の子同士で恋人の様な事って何をしたらいいかわからない。
「服、汚れちゃったね。いっそ新しいの買っちゃおうか」
「うん!」
丁度、あゆむちゃんの服をもっと欲しかった。いまのままじゃ足りない。
靴もちゃんと測らずに買った1足しかない。
手袋やマフラー、コートと買わないといけないものは沢山あった。
「あのね、お金これじゃ足りないかな」
「気にしなくていいのに」
「彩月ちゃんの負担減らしたいから」
「私の好きでやってる事だから大丈夫。気にしなくていいよ」
「でも、これだけは受け取ってっ」
渡されたのは指輪を買った余りの7万円。
「わかった。これで、服いっぱいかっちゃお」
「彩月ちゃんのも買お?」
「じゃあペアになるようなの買おっか」
「うん!それさいこー」
親子コーデ専門店に行けばど、完璧に母親だと思われるのがちょっとねぇ…。
それでもデートみたいなものよね。
買い物もそこそこに帰路についた。
「おてて繋げないね」
私が大量の紙袋を持っているのが原因なんだけど、あゆむちゃんに持たせるわけにもいかない。
「ごめんね、買いすぎちゃったから」
「うん…」
「どうしたの?」
「あのね、驚かないでね」
「え」
「つけられてるみたいなの」
思い当たるフシがある。
絶対あいつだ。
「ちょっとまってね」
私はスマホを取り出すと、梶君に電話を掛けた。
『お、やっぱり付き合う気になった?』
『あのね、つけるのやめてよ』
『何の事だよ』
『今どこにいるの?近くにいるんでしょ?』
『知らねえよ。今、駅に居る。ほら、駅のアナウンス聞こえるだろ?そろそろ電車くるから切るぞ』
『あ…、ごめん』
ツー、ツー、ツー。
「まだ、付けられてる?」
「わかんない、もうちょっとあるこ」
「途中の喫茶店に入ろう」
「うん」
喫茶店に入ると付けて来た人は姿が見えなくなったみたい。
「何になさいますか?お決まりになったらお声がけください」
「はい」
あゆむちゃんは、何かに気付いたようにお店の中をきょろきょろと見る。
すぐに何か思い当たったのか、ヒソヒソ声で話し始めた。
「(あのね、このお店来た事あるみたい)」
「(おもいだしたの?)」
「(忘れてたみたい。わたしね、ここのこーひー好きなの)」
「(そうなんだ、よく来てたの?)」
「(うん、コロナ前はよくモーニング食べてたの。すっごいボリュームあって美味しいの)」
「(へぇ、じゃあ軽く食べよっか)」
「(うんっ)」
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