第7話 強制ショータイムは突然に
仲間に写真を送ってた事や、通話していた事は笹原さんに気づかれていなかった。
だが、イヤラシイ姿を自撮りしていると思われて怒っている訳だ。
といっても、首筋、太もも、ヘソくらいしか映してないので後ろめたいとは思っていない。
だが、何の為に撮っていたのかと聞かれ、素直に友達に送るためだと答えるとより一層怒られた。
「一ノ瀬さん、ネットリテラシーって知っていますよね?素顔出して自撮り写真送ったりとか駄目ですよ。友達かどうか知りませんがその写真、児ポ法とか大丈夫なんです?それに…(くどくど)」
結果、二時間も説教されて写真も没収された。
没収というのも笹原さんのスマホに移動させただけだ。
「え、なんで移動なんですか?」
「それは、その、ほら、似合う服を考える為です。保護者なら当たり前なんですよ」
「は、はぁ、そうなんですね。え、保護者?」
少し違和感を感じていたが、この時は足がしびれてそれ以上は考えが及ばなかった。こんな写真で喜ぶ奴らもどうかと思う。俺だけが説教されるのは不公平だ…。
そういえば笹原さんは帰って来た時に大量の紙袋を持っていたな。
「あの袋は何を買ったんですか?」
「ふふふ、見てもらえます?」
買ってきたのは俺の服。ひらひらしたスカートがやたら多く、女の子はこんな高そうな服を普段着にするのかと驚いた。そして一番シンプルな部屋着を選んで着替えようと手を伸ばしたら静止された。
「あの、その服を着たいんだけど」
「ふふふ、とりあえずですね、こっち服を着て欲しいんですよっ」
なんだか、やたらひらひらした物を指定されて着る様におねだりされた。
まぁ、それで機嫌が良くなるなら大人しく従おうと思った。
だが、そこから始まったのは俺にとって屈辱的な体験だった。
「わぁ、やっぱりこれ似合いますね!あ、次はこれを着てください」
「その服には、そうですねえ~、この帽子がっ、やっぱりぃ、凄い可愛いです!!」
「ちょっとくるっと回ってみて、スカートひらひらさせて~」
ああああああ、完全に着せ替え人形だ。
一体何着買ってきたのかと聞きたくなるほどの量を全て着せられた。
さらに写真も大量に撮られる。俺が撮るのはダメで笹原さんが撮るのはいいのか?どういう事なんだっ。
下着を買ってきてくれたことは有難い、やっぱりノーパンは落ち着かないんだ。
インナーも随分と肌触りのいい物だった、一体いくらしたんだろう。
だけど、着せ替え人形にされるのは辛い、早く終わってほしいと心底思った。
「はい、そこで振り返ってウインクっ!きゃーかわいいー!」
完全に笹原さんのペースだった。
夕飯はいつになったら食べれるのやら。とほほー。
「もしかして、笹原さんって、俺が好きというより幼女が…」
「うう、ごめんなさい、でも一ノ瀬さんも好きなんです。信じてください。どっちも好きって贅沢ですか?」
「あ…、いや、まぁ、それならいいけど」
面と向かって好きと言われると照れてしまう。好きと言った瞬間の表情がおねだりする感じで、俺の心が締め付けられる感じだ。
くそう、男の姿に戻って、あんなことやこんなことをしたいぞ。
「その、私、結婚したら、女の子が欲しいんです…」
「ああ、いいですよね」
「それで、いっぱい色んな服を着せたいんです。それが夢で今叶っているのがとても幸せなんですよ。今回は急だったので買っちゃいましたけど、できたら自作したいんです、って変ですか?」
「良いと思いますよ、なんとなくわかります」
「ちょっと確認なんだけど、俺と一緒にお風呂に入る事は恥ずかしくないの?」
「それはお互い様じゃない?」
「??」
一瞬、理解できなくて思考が停止してしまった。
一緒にお風呂に入ると俺は笹原さんの裸が見れて幸せだ、それと同じく笹原さんも俺の裸が見れて幸せと言う事か?
それはつまり、幼女の体を見るのが好き?一般的に言う所のロリコンか。
だが、う~ん、まぁこの際、目を瞑るしかないよな。
それから笹原さんは夕食の準備を始めた。
台所で調理をする後ろ姿。包丁で野菜を切るときのトントントンという音。
俺の為にご飯を作ってくれる彼女がそこいる。
視覚と聴覚の両方から幸せを感じる。
結婚や同棲している奴らって毎日、こんな幸せな気分なのかと改めて思った。
そして出来上がったのはシチューだった。
笹原さんから何回か作りすぎたといって料理の御裾分けをもらった事があったから、わかってはいたがやはり料理上手だ。
まぁ比較対象が俺の料理だからってのもあるかもしれないが、シチューなんて誰が作っても同じ様な味になると思ってただけに味に明らかな差がある事に少し驚いてしまった。
「ごちそうさまでした」
「お粗末様です」
「そういえば、今日って笹原さんはお休みだったの?」
「はい、代休だったんですよ。おかげで一ノ瀬さんのお世話をする事ができてラッキーでした」
ラッキーね。まぁ俺としてもラッキーと言えばラッキーかな。
「それでですね、お願いが」
「うん?なんでも言って」
「それはですね、
照れた感じにお願いされると断れない。というか下の名前で呼び合うのは俺としても嬉しい。生唾を飲み込み、動揺しながらも声に出して呼んでみた。
「彩月さん…。あの、俺の事も下の名前で…」
「あゆむ…ちゃん?」
ガクッ
んあー!見た目年齢的に仕方がないとはいえ、コレジャナイ感が半端ない。
まさか、この俺がちゃん付けで呼ばれる事になるとはな。
今はその方が自然だから、受け入れよう。だがいつかは呼び捨てして欲しい。
でも、下の名前で呼ばれたことには違いない。
少し仲が進展したみたいで嬉しい。
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