第2話 お隣との付き合い方
改めて自分の姿を見る。
見た目はかなり可愛いというか愛らしい。将来間違いなく美人になるとか美少女になるとか言いたくなる顔だ。くりっとした目がまた愛らしい。ただ、髪の毛が腰まであって洗うの面倒そうだ。シャンプー代も高くつきそう。
首元を引っ張り上から少し胸を見る。そこに見えるのは小さな平原。
くっ、どうせ女になるなら胸を盛ってほしかったっ。
そしたら少しは目の保養になったのに!
大人の男性向けLLサイズのシャツはあまりにも大きかった。
大きさだけで言えばワンピースともいえる。
首回りがよれて広くなっているせいか肩がどうしても出てしまう。
ついでにいうと下着が無いので落ち着かない。
でもまぁ、当分は問題ないな。
さて何をしようか。突然仕事を休んでしまったので何もやる事が無い。
部屋を見渡して考えると喉が渇いたと思った。
電気ポットを床に降ろしたらコーヒー飲めるな…。
3Lタイプなのにで少し重そうだが、電気ポットを手軽に使える様になればインスタントラーメンも食べれるし即席の味噌汁も作れるようになる。ポット一つで生活の幅が広がる。俺にとって最も必要な物かもしれない。
そう、これは重大なミッションだ。
ポットは台所の奥の壁際に置いてあったせいで取りづらい。
背伸びしてようやくポットの下の方に触れる事ができる程度だ。
ちょっとずつ手元に引き寄せて、両手掴むことが出来たので、一気に降ろそうとした。
その時、逆方向に引っ張られる感覚と何かが抜ける音がした。
俺はすぐに察した。電源ケーブルの事を忘れてたのだ。ワーヤーで短めに括ってたから長さの限界がすぐにきた。電源ケーブル自体は磁石でくっ付いているだけのなのですぐに外れたが、その際に一瞬引っ張られる事によりポットのバランスが一気に崩れた。
ガンガラガッシャーン!
大きな音を立てて、電気ポットが勢いよく床に落ちる。
蓋は外れ、お湯が舞い散る。
「熱っ」
俺自身にそれほど多くは掛かってはないが熱いものは熱い。
しかも床はびしゃびしゃで湯気が立ち上った。
ドンドンドン!
「一ノ瀬さん!大丈夫ですか?」
お隣のOL、笹原さんが大きな音に驚いて駆けつけてくれたみたいだ。
親切な人で時々おかずをお裾分けしてくれる。
見た目は美人だけどドジな面も持っている可愛い人だ。
そしてこっそり思いを寄せている相手でもある。
って、マズイ!この姿で会ったら怪しまれないか?
駄目だろ!?俺の部屋に幼女が一人、完全に事案じゃないか!
どうしようどうしよう。
ガチャ
あ、ドアの鍵かけ忘れてた。
俺の人生、終わったー!
「一ノ瀬さん!」
「…」
「…誰?」
勢いよく入って来た笹原さんが俺をみて固まる。俺も固まる。
状況は最悪だ。どう言い訳すればいいんだ。
「あの、一ノ瀬さんのむす……姪御さんかしら?」
「あ、はい、そう…です」
「って、きゃあああああ、電気ポットがひっくり返ってる!火傷!火傷してない?冷やさなきゃ、大丈夫?どこかぶつけてない?」
笹原さんは明らかに動揺している、ここは俺が落ち着いて対処して優位性を確保しなくては。
「大丈夫、少しかかっただけ」
「どこ!?早く冷やそう?ほら、お風呂にいきましょ!」
手を引っ張られ連れていかれる。その行為に抵抗できる力はない。
手にかかったと言うと、その手を引っ張られシャワーで水を掛けられた。
冬場に床暖房も付いていないユニットバスはそこに居るだけでかなり寒い。さらに酷く冷い水を掛けられた。
「ちゅめたっ」
「我慢して、火傷のあと残ったら大変だからね」
クシュン!
寒さでつい、クシャミをしてしまった。
え?
俺のクシャミに動揺したのか笹原さんの手からシャワーヘットが離れる。
床に落ちたシャワーヘッドは自由を謳歌するかのように暴れ、俺と笹原さんを水浸しにした。
俺は兎も角、笹原さんは大問題だ。
濡れたシャツが透けて浮かび出るブラが魅惑的で、写真にとって大事に保存したいくらいだ。
いやいや、そうじゃない濡れて髪をかき上げる姿も美しいって言うべきだな。
こんな人が奥さんなら幸せなのにな…。
「あははは、ははは、ごめん、ごめんねぇ、もうお風呂はいっちゃおっか。ってここ、男物のシャンプーしかないじゃない、リンスはそもそもない!?あぁぁ、じゃあちょっとウチに来ない?」
「え、あ、はい」
そういうと、笹原さんは透けブラになっている事も気にせずに部屋を移動した。
ばったり誰か会って、見られるとか思わないのかな?
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