6/10:GINZA Station

 銀座駅の改札を駆け抜けると同時に電車の轟音が聞こえた。人を押しのけながら、弾む心臓に鞭を打って細い通路を走り続ける。思いのほか長い通路を抜け、ホームへ駆け込むと同時に先頭車両が追い越していった。


 意外にも人の多いホームを見渡す。クラブの最寄だからか奇抜な若者ばかりで見分けがつかず、誰もが律儀に列をなしていて逃亡者らしき怪しいモノは見あたらない。金属のこすれあう高音が響いて電車が減速していく。ドアが開けば乗り降りで客が入り乱れ、みすみす逃がしてしまうことになるだろう。


 焦りを押し殺して早足で後部車両に向かうと、ピンク色の髪の女が目に入った。首にアルミホイルのような光沢質のものを巻いているのは新手の流行ファッションだろうか。

 そこで電車のドアが開き、人が流れていく。


 クラブにあった死体の通信モジュールはうなじから抜き取られていた。犯人は自分の通信モジュールをオフラインにさえできれば、改札の認証をかいくぐって地下鉄に乗ることができる。問題はその方法だった。


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