シールの輪 3

 僕が教室に戻るとなぜかとても騒がしかった。ただ会話が盛り上がって騒がしいとは違う。とても嫌な盛り上がり方の騒がしさだ。僕は自分の席に座り、その場を見つめる。教室内に見える輪の色はほとんどが青色だ。心配ごとや不安の青。けれど教室の前の方で赤い輪を浮かべているのが一人とその相手が一人。もう一人の方の頭上には何も浮かんでない。多分何かの言い争いや喧嘩だろうと何となく検討が付く。

 僕は近くにいたクラスメイトに「何があったの。」と聞く。その人曰く、よくわからないが、山田と竹林がなぜか口論になったらしい。山田というのは赤い輪を浮かべている方で、竹林は何も浮かべてないほうだ。僕は二人とは二年生になってから初めて同じクラスになったが、何も知らない僕から見ても二人はものすごく親しい中なのだろうと察しがつくくらい仲がいい。そんな二人がなぜけんかをしているのか、僕は疑問に思った。仲がいいほど喧嘩もするだろうし、喧嘩できるくらい仲がいいのかもしれないが、周りの反応がやはり気になる。山田と竹林と一年生の時も同じクラスだった人ですらも心配をしている。つまり、二人は普段は喧嘩をしないが、今は珍しく喧嘩をしているということだろう。

 僕がこんなことを考えている間にも二人の口論は熱をあげ、今にも殴りあいになりそうなくらいになっていた。誰か止めないのかなと思った瞬間、僕の横を黄色く光るシールが貼られた輪が通る。山中さんだ。山中さんは二人の間に入り、なぜ喧嘩になったのかを聞く。そしてあっという間に二人を仲直りさせてしまったのだ。教室の空気は先ほどまでとは違い、少しのざわつきは残しつつも、いつも通りに戻った。そして山中さんの輪はなぜかずっと赤いシールを光らせていた。そして午後の授業もあまり集中できなかった。山中さんの輪がどうしても気になったからだ。

 午前の授業と同様に山中さんの輪を目で追ってしまう。だが午前と違い、僕が山中さんの輪を見るのには明確な理由がある。山中さんのシールを確認するためだ。山中さんの席は僕よりも前の方にあるため、輪の前方にあるシールはなかなかに確認しにくい。そのため、山中さんの頭上を注意深く観察する必要があり、それ故にまた何回か目が合ってしまった。


 僕は放課後に海君と約束した通り、メッセージを送った。

「山中さんの天使の輪について送ります。

 山中さんの輪には赤とか黄色とか青のシールが8枚くらい貼られてて、大きさはバラバラ、形も三角形とか四角とか丸とかいろんな形がありました。

 あと、今日教室でちょっとした喧嘩があって山中さんが仲裁に入ったときに、赤い丸のシールが光ってました。

 じゃあ、明日の昼休みに答え合わせね!!」

 僕が寝る前にメッセージを確認をすると、既読マークがついていた。僕はそれを確認すると、そのまま眠った。

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