第4話 いつかまた来る日に

悲しい別れがあった



ふと動物を飼ってみたくなったので、私はペットショップに足を運びました。

小さい頃から猫が大好きだったので、まず猫を見に行きました。

猫や犬はもちろん、たくさんの動物がいました。


帰る時は新しい家族と一緒で幸せな気分でした。

新しい家族は、自分でも思いもしなかったうさぎです。


飼ってみたいと思ったこともなかったのに、運命を感じたように一目ぼれをしてしまったのです。


名前は「ラン」に決めました。

それからの日々は慣れないこともあったのですが、ランとの日常は楽しいものでした。


何が必要かも調べながら揃えていき、好きなものや食べてはいけないものを把握するのも大変ではありましたが幸せでした。


たまに元気がなさそうだと心配で寝れなくなることもあったのですが、ランは翌朝には何もなかったように遊びまわっていました。


生後2ヶ月頃から一緒に暮らすようになり、誕生日が来たらケーキを買ってきてお祝いをしました。

ランが食べるようには、いつもより豪華なおやつをあげました。


環境の変化や気温・気圧の変化に敏感なので、私との暮らしに慣れてきたと思えるようになってからは公園に遊びに行ったりもしました。


家の中とは違って走り回ったり、芝生の上で寝っ転がる姿が今でも浮かんできます。


2歳になると身体も大きくなり、抱っこした時に出会った頃からの成長を実感して嬉しくなりました。

部屋の中を移動すると後ろをついてきて、台所にいる時は後ろで寝そべっていました。


ケージはランを迎えた時に買ったままだったので、2年以上使っていました。


❝3歳の誕生日プレゼントは新しいケージにしてあげよう❞


少し早めにプレゼントが決まり、ランの誕生日の8月が待ち遠しくなっていました。


そんな中、仕事から帰るとランはぐったりしていました。

今までにも似たようなことはあったのですが、それとは違うように思えて朝までそばにいようと思いました。

日が昇り始める少し前には、軽く動くようになり、呼びかけにも反応するようになっていました。


自分が体調を崩しても行けないと思ったので、私は少し仮眠を取りました。



目が覚めたのは9時半頃---


すぐランのところへ行ったのですが、ランはもう動くことはありませんでした。


あのまま起きていたら

もう少し寝るのを遅くしていたら

もっと早く起きていたら


いろいろな❝もしも❞が頭の中を巡りました。


大切な家族を守ってやれなかった


幸せに暮らしてくれていたのだろうか


病院に行かなかったことを恨んでるんじゃないだろうか



自分を責める言葉がたくさん浮かんできました。


けど、私のエゴだとしてもランの命を無駄にはしたくありませんでした。

辛かったのに私の声に反応してくれたこと。

少しでも❝うごけるよ❞って元気を見せてくれたこと。


それらはきっとランなりの私への気遣いだったのかもしれません。


火葬を終えた時に分かったのですが、内臓辺りに出血があった可能性があると言われました。


仕事に行くまでは元気に遊んでいたので、病気に気付くのは医者でも難しかったそうです。


後悔は尽きないけど、ランとの日々を私は忘れません。


納骨はせずに、今までの写真と一緒に今でもランはそばにいます。


時間が傷を癒してくれるなら、またランのような子と過ごしたいと思っています。

できることならランが生まれ変わって、また私を選んでほしいと願っています。



ランが亡くなってから数か月後、いつものように窓辺でランと日向ぼっこをしていました。

骨壺の中に湿気が貯まるといけないので、定期的に中を開けて換気をしなければいけません。


うとうとしていると何かに触れられる感触で目を覚ましました。


ベランダからノラ猫が入ってきていました。

今まで1度もこんなことはなかったのに珍しいと思って頭を撫でていると、ランに触れられない日々の悲しさが涙として溢れてきました。


不思議とその猫は私に慣れていて、涙を舐めてくれました。


新しい子を迎えるのは、ランの代わりを作るようで今まではできませんでした。

けど、ランとはこれからも一緒にいます。

だから、新しい家族を迎えてもいいのかもしれない。

そう思い、その猫を飼うことにしました。



ランの骨壺から骨が亡くなっていることに気付いたのは、それから数週間後。


新しくも昔からの家族との生活が、また始まりました。

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