第8話 まるで夢のよう

 殺されるのを実感した日、目の前で人が死ぬのを見るまで、次テルトークで雑談あったら会話に入ってみようかな、なんて呑気に考えてた自分がいかに馬鹿だったか。

 前に三人が死んだときにいかに分かっていなかったか。


 

 2日休みぐらいじゃあ目の前で誰かが死んだのを立ち直れるわけがなかった。心がぐちゃぐちゃしたまま一日が過ぎていく。もちろん仕事はぼーっとしてミスが多い。

 それでも日曜日の夜、なんとか頭が多少動くようになった。

 秋田さんは生きたかった。けど私を守った。秋田さんが残って次へ繋いでいった方が良かったのではないか。それでも守ってくれたのだ、あんなに怖い思いをしてこんな甘たれた子供みたいな自分を守った。最後にあんな事になって悔しい。けど相手の音なんて分からなかった。

 

 悔しい怖い死にたくない繋ぐなんて役目したくない。この星を守るなんて言われても実感がわかない。逃げたい。

 ずっとグルグルする。

「…けど…自分も怖いのに……」

 守ってくれた。たった数回しか会ってないけどその数回がとても濃い。常に暖かさを感じた。怖いし戦いなんて知らないから相手がどうやって動いてるかなんて知らない。だけどこのまま死ぬのを怖がるだけは腹が立つ。高みの見物を決めてる誰かが飽きるまでズルズル生き延びてやりたい。

 幸い動物に変身できるようになった。動物について少しでもしってる方が有利だ。もしそうじゃなくてもせめて地理やその国々の建物の特徴など調べないといけない。

 まだ死ぬのが怖くて秋田さんの死で全てに実感がわからないけど明日の夜まで出来ることをしよう。


 前の時の報告は何かあったのだろうか。あれから全くスマホ触っていなかったからテルトークがどうなってるのか分からない。

 通知はたった数件だけだった。報告だけでとまっているのか、雑談らしきものはなかった。

『今日わかったことがありました。私達はどうやらドラゴンや動物になれるそうです。なり方は、感覚になりますが動物の気持ち…獣の感覚…になるとなれました』

『俺はドラゴンになったのだが、ドラゴンの他に何かなってみようと思ったが俺はできなかった』

『私は動物で…動物は他のに変身できたわ…』

『今度先輩と共に誰がどんなのに変身できるのか試しましょう』

 とだけで終わっていた。


もしかしたらあの血だらけなのは仲間の血なのか、そう思うと恐怖と気持ち悪さと生きる欲求とこれならいっその事死にたいという複雑な気持ちの中に、不気味な嬉しさが混じった。


 寝る前に基本の猫と犬だけサイトを開いて調べる。全く頭の中に入ってこないから何度も読み直しになるがそれでも読んでいく。

 戦いの中で人とはこうも簡単に死ぬというのだろうか。戦争ってこんなに死んで当たり前だったのかな。

 あの地獄のような時間が始まってから毎日がまるで夢のようだ。


 猫と犬を調べたあと、テルトークのグループをもう一度開いて誰がグループに入っているのか見てみると、秋田さんが居なかった。自己紹介のとこを見てもなくなっていた。

 ああ、本当に居ないのか。それに、海外だから日本人のこの人だと分かって家族に報告が行って正式に死んだとなるのはいつなんだろう。


 あのニュースに出てた海外の姉妹も、まだ母国では失踪というふうになっているのかな。


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