第5話 会える
今日はなかなか繁盛してくたくたに疲れた帰り。11時20分。月曜日の夜、またあれが始まるのか…もし本当の事ならまた始まる。次から火曜日に休めるよう明後日仕事行ったらシフト相談しないといけない。
電車の待ち時間に呟いちゃお!を早速開く。向こうもフォローしてくれていたらしく通知が来ていた。合ってるかどうかツイート内容を確かめていく。
鉄で出来た部屋に布団がある
寝たら知らない人たちが部屋に集められてた等々。随分下に行くとプロフィール画像を新しく更新しましたと呟きがあってそこにはあの最初に説明してキリッとした女性の顔があった。
合ってたのでDMを開いて『DM失礼します。秋田由美子という女性からグループを作っていると聞きました。菫と言います。』と送信した。すぐ既読はついていないので少しあのよく分からない事を少しでも理解できるよう整理して待つことにした。
なぜ自分があんな目に、というのは無差別に選んでいるから何とも言えない。月曜日の夜には必ず始まる。始まる前の時間は分からないけど生き残る時間は1時間、帰るまでの時間は10分。その10分の間に向こうに戻ったときのために体をならしておく。
向こうで死んだら現実に戻った時に同じ場所で多分同じ死に方で戻る事になる。
電車が来るときの音楽が流れたのが聞こえたので考えをとめた。まだ暫く止まるのに時間かかるから今のうちに呟いちゃお!を開いて返事が来てるか確かめよう。
『確認できました。写真送りますのでテルトークで登録してください、そこからグループ誘います』
と、すぐに下にある写真を保存してテルトークで読み込んで友達登録した。
電車のなかで椅子に座りまたテルトークで文字を打つ。
『呟いちゃお!のDMでお話しました菫です』
今度はすぐに既読がついて、数秒後グループの誘いがきた。
『失礼します』
『海外の人も居るけどこのグループにテルトークの翻訳機能いれてあるので日本語で話しても大丈夫です』
『わかりました』
『私達の自己紹介文はノートに書いてあります。名前と見た目が一致してる方が分かりやすいと思うので確認をお願いします』
『はい。あの、今帰り道なのでもしかしたら電車から降りたらしばらく見れない事があります』
『分かりました』
ふぅ、とため息ついてノートを開く。
西 里穂。明るい茶髪に染めた髪の毛を頭のてっぺんでくくってキリッとした女性でも惚れてしまうくらいかっこいい女性。昨日説明をしていた女性だ。
次のページは…秋田さん。暗めの茶色に染めて日本のザ・マダムみたいな髪型をしている40代くらいの淑女。隣に誰か男性らしき人がいるから夫婦なのだろうか。
キム ドユン。黒い髪の色で刈り上げて綺麗に角を揃えてる。趣味がボクシングやランニングらしくとても健康的な肌色をしてガタイがいい。
鈴木隆史。仕事で少し忙しいのと奥さんと子供に時間をかけたいのであまりテルトーク来れません…と。スーツを着て髪の毛も短く整えられていてとても爽やかな印象の中年男性。
ジェシカ・シェパード。内面から魅力的なオーラが出ているのか、金髪も笑顔もとても輝いている素敵な大人の女性。凄く勉強になるワンピースを着ていてオシャレだ。
木村龍太郎。おれ、まだ中学生やけど空手やってんねん、空手も一応身を守る為に教えるから安心して!と見て分かる元気な言葉どおり、写真に映る彼もこっちが元気になるくらいの笑顔で髪の毛も短く切られて肌色も健康的な色だ。
グループなので通知で読めなくなるのを危惧してオフにしていて気づかなかったが随分とチャットが溜まっていた。もうすぐ降りるのでチラ見してみると新しく入った人達が挨拶していた。
行きのバスは家や職場に近いからいいけど帰りは夜で電車しかないんキツイわ、と思いながらスマホをなおした。
ただいま、を言う気力もない。ひとり暮らしだから意味もないけど小さい頃からの習慣は意味がなくても続いている。
スマホを開くと随分とチャットが落ち着いていた。服を脱ぎながらサッと目を通す。
『はぁい!あたしオリヴィア!次送る写真の左にいるスタイル抜群な方があたしよ!チアリーダーなの!隣にいる天使のように可愛い子がアシュリーよ!読書が好きで誰よりも詳しく知ってるわ!何か役に立てるかも!』
その後に送られた写真を見ると、たしかにとてもスタイルがよかった。薄い金髪を低い位置でポニーテールにしている。日焼けして元気な人なんだろうなと思える。その右に居るのが赤毛の髪の毛を眉毛の上まで切っている色白の女の子。少し自信なさげにうつむき加減なのが、とても可愛いのにもったいないと少し思ってしまった。
『あ…そ…そんなに詳しく…ない…よ』
『そんなことないわ!わか?っていうの今読んでるそうよ!』
『本…だからあまり役にたてない…の…』
『何言ってんのよ、あなた色々な事詳しいじゃない!こういう時は何か可能性とかあるなら言って!』
ここまで言うなら相当色々昔のものも読んでるのかもしれない、好きな事続けてるのは凄いと思う。
『ネットは少々怖いのでわたくしは写真はご遠慮させていただきます。わたくしの名前は
文章からして物凄く丁寧な方なのがよくわかる。そういう言葉遣いに自然となる仕事をしているのかな。
『俺ぁ構わないぜ!』
名前はないから誰だか分からないが写真が送られてるので見てみる。
背景に色々人などがたくさん写っているが真ん中のオレンジのシャツに迷彩柄の半ズボンの髪がツーブロックの男性が、片足あげて両手をバンザイしている何とも不思議なポーズをしているから分かりやすかった。
『これが俺さ!』
名前はまだない。けれど、おかしな写真ではあったがバイクの多さや服装と髪型等他の人々も見るにベトナムっぽいイメージではある。
『いやあんた誰よ!名前は?それがないとなんて呼べばいいかわからないじゃない!』
『あ?あぁ、そうだったそうだった!俺ぁロンだ!もしベトナムにきたら俺の働いてる店に食べに来てくれよな!めっちゃうめぇんだから!』
『ふぅん、そんなに言うなら大人になったら行ってみたいわね:-)』
『あら、わたしも行ってみたいわ。わたしはジャネッサよ。写真じゃなくまた向こうで会ったときもう一度自己紹介するわ』
少し覚えきれなくなってきてるからお茶取りに行きがてら高校の頃の余ったノートを取りに行った。
暑い日には冷蔵庫でキンキンに冷えたお茶を冷たさで頭痛くならないよう気をつけながらクイクイと順調に飲んでいく。
「……んあうっま。あかんわ、罪」
お茶休憩をやめペンを片手に続きを見る。
『わっす。僕は亮です』
わっす。わっす…多分チャットとかで、こんばんはをばんわって略したりするからそういう系なのかな………。
そういって送られた写真はバイト仲間と撮ったのかバイトで着る制服姿だった。ハーフなのか、白い肌に薄いピンクみがかった赤色の唇が印象的。体格からして男性だとは思うがとても綺麗だ。
「えっと…髪の毛は…片方だけ伸ばして…これはパーマか?片方は刈り上げ?そり上げ?と」
『おお、いい髪型だなとてもよく似合っている』
『っす』
多分これには、ありがとうという言葉が隠れているのだろう。
誰だか知らないましてや海外の人かもしれないのにいつものように行くとは随分と明るいんだろうなぁとあまり人と関わるのが苦手な自分の中で要注意人物としてメモをする。
『俺はウィリアム。ウィリアム・ブラウンだ。この機会だ、もしオーストラリアに来たら美味しい店やお土産に適した店とか紹介するよ』
出されてる写真を見ると白色のシャツにコアラの絵が描かれているのを着ている。髭が逆にかっこよさを引き立てているダンディーな男性がコアラを抱っこしていた。
ベトナムとオーストラリア。この二人からそんなに美味しい店があるというのなら行ってみたい。お金が常にないから夢物語だけれども。
『昨日の続きなのですが、昨日隠れている時に赤ちゃんが猫に変身しました。これは今までになかった事です、私達の超能力ではなくあの戦いのみでの事と思います。前にアニメに出てる様な魔法を使うことができる人が1人だけいました』
『その時様々な事から考えられた事は、それまでずっとあっさり負け続けててほぼ毎週補充だったのでこんな目に合わせた何者かがあまりにも何かを思ったのだろう、という事でした。今までに突然アニメの様に覚醒する事はありませんのでそれを期待して死んでしまうような事はしないように』
その後のチャットはあの時の質問はなんだったのか、ナンパや雑談になっていた。
「若い子は元気だなぁ」
なんて独り言を言ってしまうくらいに。
雑談で終わってるとこに水を差して申し訳ないけど
「日頃写真は撮っていないのでありません。名前は竹中 董です」
そろそろ限界だからそれだけ送って今日はもう寝よう。
また次もその次も会えるといいな。
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