第3話 大丈夫!
0:00になると目の前が真っ暗になった。真っ暗な間にも頭は動かずひたすら先輩らしき女性の言っていた事を繰り返す。生き残る事生き残る事逃げて隠れる静かにする隠れる何か変なことあったらもし近くに人人人居て言える状況なら伝える隠れる生きる相手かかから隠れる
真っ暗な景色からどこかの学校の体育館の景色が広がった。
「なるべく教わった先輩についていって、ここから出てもいい隠れて…!」
さっき説明していた女性がそう言うと先輩らしき人が手をとって走った。
手を繋いでるにもかかわらず必死に白いシャツの後ろ姿を見失わないように見つめる。
体育館の暗いところをあちこち走って。裏口のドアに耳を傾けていた。傾けて、その人は静かに扉を開けて引っ張っていく。
隠れる隠れる隠れる隠れる
建物の影に隠れて耳をすまして隠れて静かに外に出る。
静かに静かにしなきゃ静かに静かに
隠れて走って広い所についたらその人はゆっくり歩いてとまった。
「…ここ…ら…隠れる…たくさんあ…ある…のよ……」
広い部屋。宝石や服やエスカレータが静かにたくさんあって広い隠れるところ。
「…歩こう…ねぇ…あなた、名前は…私…秋田由美子。実はこう見えて、私すごいのよ…指輪とか宝石を新しくリメイクするの」
名前、名前 名前 静かに静かに
「…ぅ……ぇ…」
「大丈夫よ…もし心配なら耳に近づけてこしょこしょ喋って…」
なるべく耳に届くように顔を向ける。
「……す…みれ…」
「すみれちゃん、よろしくね。さぁ…隠れよう…昔…デパートで働いてて…大体わかるのよ…」
でぱーと。少しずつ頭が働いてきた。そうだ。あまり来たことなくテレビでしか見た事ないけど、高級そうな物がたくさん並んでいる。それらを見ながら、絶対買いに来る事なんて一生来ないだろうな…と思っていた。
元の住んでいた世界のコピー、と言っていたがどこにでも行けるようになのか鍵は開いていた。秋田さんはなるべく静かにスタッフとかその中でも一部の人しか入れなさそうな扉を開けてずんずんと入っていく。
窓もないところになってきたので段々暗くなってきた。だけど走ってた時のを思い出すと外は夜だったのであまり明るさに差がないから多分よかったのだと思う。
「…そうだ…皆してるんだけど…スマホかパソコン…ある?呟いちゃお!で私達…現実に戻って…集めて…グループしてるの…」
「…もってます…やってます…」
「…じゃ…呟いちゃお!…で…変な所に集められて冒険させられた同じ人たち…って呟いてる…から…」
「…わかりました…」
「…あと…これ毎週…今日月曜日寝ると必ず…始まるの…アクセサリーや帽子とか…落ちやすいものつけちゃ…だめよ…寝なくても…強制的に寝させられるの」
「…わかりました」
手を繋いだまま暗い廊下を歩いていく。行き止まりか曲がり角かが見えた頃、右側に大きさは普通なのに見た目重たそうな扉が出てきた。
「…ここなら…もっと隠れれて…逃げもできる…わ…」
意外とすんなり開けた。秋田さんが強いのか見掛け倒しの扉なのか…。
中に入って耳元に近づいて
「ここ歩くとき音がコツコツなりやすいから気をつけてね…」
と言って背を低くしてゆっくり音ださないよう鉄階段を降りていった。
ちょうど降りている時、遠くで聞きなれない銃声が聞こえた。思わず繋いでいる手をぎゅうっと力入れてしまう。
階段を降り鉄床なのか下を見ると、よく見るコンクリートの床だった。あそこよりかはマシだ…と少し、ほんの少し安堵した。
そのまま部屋の端っこに手をひかれて、何が入ってるかよく分からない灰色っぽそうな四角い箱とパイプの入り組んだところに隠れた。
「ここ…もし誰かが入ってきて私が他のとこに動くような事になったら…進んで…大丈夫…私前にそれでやりすごしたの…」
そう言って壁についてた何に使うのか全く分からない、多分通気口か何か、を開け入るよう促した。
「…あ…秋田さん…」
「私は生き残れる場所…たくさん知ってるから…」
バリバリバリ、という音が聞こえる。
「…ヘリ…申請でもして…もってこれたのね…」
あちこちで爆発音が聞こえる。建物が崩れる大きな物音。もう、耳を塞ぎたくなるくらい大きな音。何発か打ったあとヘリコプターの音は遠ざかっていった。
「…次から…時計…必要よ…始まって…1時間で終わるわ…今だと…あと30分ね」
さっきとは違ってまた静かになった。自分の音が聞こえるんじゃないか。この息する音、このドクドクうるさい音。あとどれくらい隠れたらいいのだろうか。とても辛い。
30分、早く経ってくれないだろうか。もう10分経ったかな。段々体も落ち着いてきた頃、かすかに音が聞こえた。
気のせいかもしれない、だけど念の為口を押さえて小声で
「………ひと…きた…人……人…」
もう一度人、と言おうとしたら、小さく壁をひっかくような音が二回聞こえた。通じたと信じて、もっと耳をすませる。
まだ何も聞こえない。気のせいだったのか。気を抜かず終わるまで聞いていく。
ずっと緊張した時間がすぎていく。
またかすかに何か音が聞こえた。が、そのまま遠ざかるのがわかった。
「………ふぅ………後数秒…数分…誤差…」
いつの間にそんなに経ってたのだろうか。一体これは夢なのか、考えてると目の前がまた真っ暗になった。
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