第2話 現実の現実

 せっかく夜眠れても不定期的に目がさめる癖がある。

 徐々に覚醒していくと徐々に音が聞こえてくる。いつも聞こえるのは車の音や風、たまに大声で歌ってるのが聞こえるときも。

 だけど今日、徐々に聞こえて来たのは誰かの小さな喋り声。ある程度頭も動いてきたら心臓が痛い程にドクンっとなった。

 その声は自分の部屋から聞こえるのだ。不審者にバレないように薄く目を開ける。それもまた恐怖心をあおる行為だった。目を開けると全く知らない場所。鉄で出来た床に壁。自分の寝てる所は知らない布団と枕がある。見る限り壁が遠く大きそうなので広そうな部屋だ。

 鍵を閉め忘れ誘拐されたのか…なるべく耳をたてる。

「今日ほ…された……ずうか」

「ど…よう、いつ……く…」

「なぁ、まだ寝てるあの1人起こして説明した方がええんちゃうん。説明する時間なくなんで」

「…そうだね…」

 全身がゾワゾワする、血が逆流するような感覚。手足が冷えてきた。何されるのだろうか、何されるのだろうか、説明とは何か、臓器売買なのか。来ないで、と願いながらも足音が近づいてくる。

「…起きて、大丈夫だから、私達も同じ目にあってるの、大丈夫だから起きて…私達もいつの間にかここに居たのよ」

 同じ同じ同じ大丈夫大丈夫…?。寒い。何を言ってるのかよく理解しにくい。

「…殺されますか」

 話したのか、ただの音なのか分からないけどやっと声が出た。

「…死なない…!死なないわ…知りたいことある

のでしょう?私達も被害者なのよ…今から説明するわ…こんな目にあったけど生き残ってる古参がいるのよ」

 頭を撫でられたり大丈夫、と言われて段々落ち着いてきたので彼女を手を借りて人が輪になって固まってるところへ連れて行ってもらう。

「これで皆起きましたね…私は、いえ、今までの人達も皆未来へ託すのに、説明するのに頑張って生き残ってきました」


「ここに集められたのはこの星に住んでいる全人類から無差別に選ばれて集められている、と予想しています。集められて他の星の人達と戦争をしあうのです。最初は侵略と防衛交代で…その後優勢か劣勢で決まります。優勢だと侵略に…」

 周りをパッと見るとたしかに、金髪の学生ぽい女の人や、おじいちゃんとお孫さんみたいな人、アジアっぽい30代の男性や他にも色々いた。赤ちゃんも…。

「戦争で相手を全滅させるか一人になるまで殺せれば相手の星がなくなって私達の勝ちです…が、また次他の星と戦う事になります。私達が負ければ星は消滅…」

 一度その女性は深呼吸をした。

「誰が勝手にこうしたかは分かりませんが1度、前に人が補充された時に運良く軍の人が来て相手の1人を捕虜にして聞いた事があります。誰かが遊びで星同士無差別に選ばれた人同士で戦争をさせていると…自分達は勝ったけどいっこうに終わらない…と」

 勝っても負けても地獄

「悲しい事に私達は戦いのプロではないので劣勢です。戦う場所は私達の星をコピーしたものなので誰か1人でも自分だけでも生き残って軍の人が来て戦い方を学び次へ繋ぐギリギリを生きています。なので戦いの時間になるまで前に軍の人から教わった全てを教えていきたいと思います」

 彼女が立って、ああ、そうだ、と呟いた。

「この待ち時間と戦いの時間と終わって元に戻れるまでは国問わず全て言葉が通じるそうです。言葉については安心してください。今日は補充の日であまり時間がなく満足行くまで教えれないので、細かいことは次話します。ギリギリまで覚えて、なるべく生き残る事だけ考えて…」

 そう終えたら先輩らしき人達は立ち上がって、考えが追いついていない私達を立たせようとした。

「ええから今回は生き残るため、考えんのはあとにしい」

「今考える時間ないの、早く」

 などがあちこちから聞こえる。とりあえず、死ぬかもしれないならこの人達の言うとおり立ち上がる。何も考えれない、考えれないなら、死にたくないから必死に動きを真似る。

 真似ながら必死に死なないようにさっき聞いた話を切り離そうとする。けど、もちろん上手くできない。ひたすら動きを体に覚え込ましていく。

 どれくらいかしたあと、4方向の壁に大きく5:00と出て、数字が減り始めた。

「いい?今回は特に、特にどこかに隠れて逃げて生き残るのよ。何をしてでも生き残るの。場所はわたしたちの星のコピーなんだから、壊れても現実に支障はないわ。劣勢だから防衛だけど、敵から分かりにくい所に飛ばされるから、いい?自分が生き残る事を考えて」


 どっちも地獄なのに戦う意味があるのか。でも死にたくない。思考が停止してでも先輩らしき人の教えられる事を必死に覚えようとする不思議な感覚のまま戦う時間になった。

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