世間様3

「おねえさん、出身大学どこなんですか?」


 正直に答えたら、モデル系のキレイな女子大生達に憐れむように笑われた。一流国立大学ラグビー部の部員にはこういう得体の知れないキレイ系女子が群がるものなので、とりあえずキャンパス内に入って目に付いたキレイ系女子に「ラグビー部の部室ってどっちですか」と訊いたら、「失礼ですがどちらの方?」と冷ややかに睨まれ「探偵です」と答えたら名刺を出す間もなく「こっちきてもらえますか」と隅っこに連れて行かれ、キレイ系五人にあっというまに囲まれた。正直恐いが、こちらも社会人、大学生なんぞに負けてられないと気合を入れた。


「実はアタシ探偵で、大川ツヨシ君を探しに来たんですけど」

「ツヨシ君?ああ彼ね。で、おねえさん彼の何が知りたいんですか?」キレイ系その2がアタシを見下ろした。165㎝のアタシより背が高く、ほっそりしている性格の悪そうな女だが、男の子の前では可愛いキャラ全開なのが丸わかり。だってこういう女、前にも何人も見たことあるもの。


「居場所を知りたいです」余計なことは言わず、素直に返事をした。

「だったら本人に訊けばいいじゃん、なにこの胡散臭い女」五人の中で一番ガキっぽいキレイ系その3がアニメ声で言った。


「実は御両親から捜索の依頼がありまして」名刺を差し出すとキレイ系その2がそれをひったくるように受け取り、しげしげと眺めてから、

「野宮サキさん、これあたしが預かっていいですか」と案外普通な様子で訊いてきた。

「ええ、いいですけど」とアタシが返事をするとキレイ系その2は名刺をポケットにしまってから、

「実はあたし、ラグビー部のマネージャーなんですけど、探偵さんだからってはいそうですかとは個人情報は教えられません、それは分かりますよね?」と高飛車な口を利いた。


「分かりますけど、こちらも御両親の依頼があって調査してるんです」なにこの高学歴高身長女こええと思いつつ、アタシも毅然とした態度で臨んだ。


「彼の女性問題とか、絡んでるんですか?絡んでるんですね?」キレイ系その2がまなじりを吊り上げてアタシに顔を近づけると、その他のキレイ系も聞き耳を立てた。だがアタシには彼女達の期待に応える義務は全くない。それにはお答えできません、とはっきり彼女達にくぎを刺してから、最後の質問をした。


「この中でツヨシ君の彼女に会ったことがある方はいますか?」

 するとキレイ系五人衆はお互い顔を見合わせ、

「いるっていう噂も聞かないわよね」

「居たら居たで、その女潰すだけだけどね」

「ライバルは極力減らさないと、ねえ?」


 などと不穏なことを言い出した。だがとにかく、この五人はツヨシ君とそれほど親しくないことは確かだ。いい男がいたら優良物件と見なしてアンテナ張りまくり、情報集めてライバルを排除しつつお嫁さんの座をゲットするタイプのこのコ達が何の情報も持っていないというところが気にかかったが、

「ではなにかあったら御連絡下さい」と全く期待せずに決まり文句を彼女達に告げてからキャンパスの外に出た。

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