第125話
思わず私も涙ぐんでしまう。知らないうちに、私も結構こたえていたということだろう。互いの気持ちを知れて安心し切った私達は、溢れてくる雫を止められずに、滴り落ちていく。
「ずっと一緒に居ましょうね……」
冬菜とエラは頷きあい、互いの存在を確かめ合うように、抱きしめあっている。絶対に私をおいてどこにもいかないで。冬菜は誰かが自分の手の届くところからいなくなるのは、もう、トラウマになっているのかも知れない。私が前世であなたをおいていってしまったから……。
時間は私たちを慰めようと、ゆったり過ぎていく。私達は生まれたての赤子のように泣いていた。新しい外の世界へと、一歩、踏み出したように。
おやつ頃になると、私達はやっと落ち着き、押し寄せていた涙の海も引いてきた。私達はこの国に来た目的と、やるべきことを思い出し、魔法を使って赤い目を元に戻す。あまり長時間こうしているわけにはいかない。フレンは今も、魔力を大量に消費し続け、結界を維持してくれているのだから。
「さて、これからなんだけれど、お城に戻ろうと思うわ」
エラの目に手を当てて魔法を使いながら、冬菜は私にすでに決められた予定を告げた。
「私達2人だけなら、何かあってもどうとでもなるでしょう」
冬菜はかなり楽観的だ。確かに、私たちだけなら何かあっても逃げ帰ることはできるかも知れないが、少しは警戒しないと。
けれど、そのほかに方法がないというのも事実だ。城下町にいる人から情報を聞き出そうとしても、大した情報は得られないだろう。それならもういっそのこと、魔法でも使って城に潜入してしまった方が早いだろう。私たちには、あまり時間がないのだから。焦りすぎてはいけないが、多少急ぐことは必要だ。フレンがいつまで持つかもわからないし、エラに呪いをかけた犯人も早く捕まえないと、いつまで経っても不安なままだ。
「ゼラ、フィー、ラン。エラをよろしくね」
重大な任務を託された3人は、任せてと言わんばかりに頷いている。小さな体なのに、その様子はとても心強く見えて、私は微笑んだ。
「絶対に帰ってきてね。待ってるから」
エラの心配そうな声に応えるように、冬菜はエラの頭を撫でた。
「絶対に帰ってくるわ。その代わり、ここにも念のため、魔法をかけておくから、絶対外には出ないこと。約束よ」
冬菜はエラをしっかり抱きしめた。自分の目の届かないところに狙われているかも知れない娘を置いていくのは心配だろうが、どうにもならない。今できるのは、少しでも情報を得ることだ。
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