第66話

 本題に入ろうとしたのはいいものの、何をどう発言すればいいのかわからない。頑張っても大きな問題に対する答えはいつも見えてこないのだ。だからこその、作戦会議なのだが。

「エラちゃんのことは、とにかく警戒するしかないと思う。呪いをはじけるマジックアイテムや魔法はあまり研究されていないからわからないし、ユキナのそばにいるのが一番いいと思うな」

 スィーにさらっと流されてしまったような気もするが、確かにその通りだ。呪いを跳ね返すような魔法があるなら、私達は苦労しなかった。呪いをかけたり、かけられたりする人の数はそこまで多くないとは思うが、今後は私の力をもとに新たな魔法を開発していってもいいかもしれない。

「そういえば、今まで王様に海の汚染について話したことはあるの」

 エラと手を繋いでいる冬菜は、スィーに向かって尋ねた。スィーは目を泳がせながら小さな声で、笑っている。

「えーとね、あるにはあるんだけど、それで困ってて……」

 王様が協力的でないかもしれないと前から思ってはいたが、そこまでこの国の王様は非協力的なのだろうか。

「好きにしろと言われたんだ。だが、国に対して法律を作るように頼むなら、父上の協力が必要不可欠だろう」

 どうやらイーサン様のお父様は否定的ではないらしい。けれど、肯定的でもないようだ。

「スノー、この国の王様の政治を覗いたことがあるけれど、しっかりした人に見えたわよ」

 フィーは不思議そうにそういう。どうやら王様は、何も考えずにそう言ったわけではなさそうだ。

 ここは、各国に掛け合うという方法を変えるより、王様を説得した方がいいのかもしれない。とは言っても、どう説得すればいいのか全くわからないのだが。

「もう少し王様について調べたほうがいいかしら」

 私に向かって首を傾げるフィーは、やったほうがいいわよねと言うように私の顔の正面で羽ばたいている。

 確かにいい案だとは思うのだが、そこまで王様のプライベートに鑑賞するのは気が引ける。人間達の前に姿を表さない精霊達は、人々の生活をこっそり覗くのは慣れたものなのかもしれないが、私は人だ。そういうものには抵抗がある。

「うん、いいんじゃない」

 冬菜は精霊歴が長いためか、あまり抵抗はなさそうにフィーに笑いかけた。むしろ、私がすぐに頷かないのを不思議そうに見ている。

「……お前たち、何か見えているのか」

 え、あ、あー。イーサン様には見た目が精霊すぎるフィー達の姿は見えていなかったわね。

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