第61話
ゼラは小さな目を見開き、フィーとランは驚きのあまり開き切ったままの口を押さえている。私も驚いていたのは確かなのだが、それよりも焦りの方が大きかった。こういうとき、誰を頼ればいいのかわからないからだ。あの王子様に連絡しても私達の事情はわからないだろうし、協力してくれるかもわからない。とりあえず、スィーに念話で伝えた方がいいのだろうか。
スィー。スィー。聞こえる。
私は戸惑いながらも、スィーに向かって頭の中で話しかける。
どうしたの。何があった。
スィーは思ったよりも早く反応してくれた。スィーもこちらの状況が気になっていたのだろう。
エラが何者かに呪いをかけられて倒れていたの。犯人はこの城の中にいるかもしれないわ。
スィーもエラが今までどんな状況だったかは知らないはずだが、とにかく、と今何があったのかだけ伝える。エラが過去にも呪いをかけられていたことも伝えた方がいいのかもしれないが、焦りでうまく言葉がまとまらない。
わかった。それはこっちに任せて。エラの状態は。
スィーが任せてと言ってくれた途端、私は何故か安心で満たされた。心のどこかでわかっていたのだろう。スィーのことは信頼できる、と。まだ会ったばかりのスィー。それなのに、私はまるで何年も一緒に過ごした友達のように、スィーのことを信用していた。
大丈夫よ。呪いは解いたわ。
エラの様子を確認しながらスィーに返事をする。エラは不安そうな顔をしている。エラも犯人が近くにいると気が付いたのだろうか。……もしかして。
「ねえ、エラ。もしかして、誰かに会ってから急に苦しくならなかった」
エラがここまで不安そうにするとは、もしかしたら誰か心当たりがあるのかもしれない。エラは私の予想通りに頷いた。
「トイレに行ったとき、人間のお姉さんに会ったの。その人が私に笑いかけた途端、苦しくなって。部屋に戻ったところで限界が来て、倒れちゃったの」
やっぱりか。それにしてもお姉さん、か。私と同じくらいの歳だろうか。早くスィーに伝えない、と……。んん、なんか変な感じが。
「どこのどいつだ。よくも私の娘にっ」
と、闘気みたいなものが見える気がするわ……。エラが怯えてるわよ、冬菜……。
あー、スィー。犯人は人間の若い女よ。
了解。……どうかした。
い、いえ。何でもないわ……。
冬菜って、たまにこういうところがあるのよね。それだけ仲間思いということだし、いいことなのだろうけれど、子供には少し怖いでしょうね。顔が般若のようになっているもの。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます