第60話
もしそうなのであれば、魔力が減っている原因は呪いしかないだろう。エラがもし魔法を使って魔力不足を起こしているのなら、冬菜は気がついただろうし、そうなる前に止めたはずだ。
冬菜は突然倒れたと言っていた。つまりは、エラが魔力を自ら消費した以外の方法で、魔力が奪われたと言うこと。どうして、また……。
考えていても仕方がない。本当にそうなのか確かめなければ。冬菜やゼラ達の魔力に押されて少しわかりにくいが、エラの魔力は明らかに減っている。魔力不足なのは間違い無いだろう。
次は、本当にその原因が呪いなのかを確かめなければ。焦って失敗してしまわないように、エラの手を握り、目を閉じて集中する。エラの魔力は、また黒いものに取り憑かれていた。やっぱり、呪いのせいだったんだ。
前のように優しく微笑みかけても、呪いは微動だにしない。前と違って、かなり強固なものになっているようだ。
かなり大きく感じるそれを自身の魔力で包み込み、ゆっくり溶かしていく。よかった、溶けてくれた。けれど、呪いはしつこく残っている。全てを溶かし切るには、少し時間がかかりそうだ。
「雪菜、エラは……」
冬菜が泣きそうな顔でエラの顔を覗き込んでいる。エラはまだ苦しそうだ。
「大丈夫、絶対に何とかするから」
なぜだか、絶対に大丈夫だと思える。私の中には絶大な自信があった。
その呪いは前よりもかなりずっしりと重く、私たちに攻撃してくる。まるで、焦りや憎しみが込められたような、呪いらしいそれに、私は少し動揺を覚えた。
じわじわと消えていくその呪い。今回のものに比べれば、前回の呪いなんてまるで子供の作ったおもちゃのようだ。けれど、どんなに大変でも、私が何とかしなければ。
どのくらい時間が経ったか分からない。そこまで長い時間では無いはずだ。気がつけば、私は呪いを溶かし切っていた。エラの頬も赤みを増し、パッと起き上がる。
エラも冬菜も笑っていた。よかった。よかったのだけれど、今回のことはかなり大きな問題だ。
呪いは解けた。けれど、今回のように何度も呪いをかけられてはたまったものじゃ無い。何か対策を考えないと。
「ねえ、雪菜。呪いってどうやってかけるの」
エラをしっかり抱きしめて喜ぶ冬菜に話しかける。邪魔をして悪いが、重要なことだ。呪いは危険なものだから、普通誰からも教えられず、私はどうやって呪いがかけられているのかを知らない。それを知らなければ、対処法も考えられないだろう。
「ああ、呪いね。あれは、前の世界みたいに呪うんじゃなくて、魔法をかけるのよ。体に触れるまでしなくてもいいけれど、近くにはい、ない、と……」
……それってつまり、この城にエラに呪いをかけた人物がいるっていること。
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