第42話

 それから3日後。私達はここを離れ、精霊の森へと飛ぶ準備を終わらせた。水の精霊と風の精霊を迎えに行くためだ。

 その後、私達は世界を巡る旅に出る。貴族という立場上、色々な国の人に会ったことはあるが、実際に足を運んだ国はわずかだ。どんな文化が世界に溢れているのか、どんな人がいるのか。エラの言い出した旅とはいえ、私も楽しみで仕方ない。

 冬菜、火の五大精霊がエラに魔力を注ぎ続ける必要がなくなったため、精霊王の力は多少戻っただろう。だが、まだ会える状態ではないだろうとのことで、お会いできるのはまだ先になりそうだ。

 少し残念ではあるが、仕方がない。どんな精霊なのか気になるし、精霊たちの安心のためにもあっておきたいけれど、今無理に会おうとしては不安を煽るだけだろう。

 またいつか帰って来れるように、冬菜とエラの思い出の詰まったこの家は残しておくらしい。この家には冬菜のかけた高等魔法、状態保存という、汚れたり、木材でできたこの家が腐ったりしないようになる魔法がかけられているらしいので、数百年だろうと数千年だろうと放置して問題ないそうだ。

 流石に、故意に壊されたり、燃やされたりすれば無事では済まないのだろうが、すごい魔法だ。

 エラはその話を聞いて、すごいと言って笑っていた。何百年経っても、ここに戻って来れるんだね、と。きっと、10歳で若く、今までずっと家にいたエラにはわからないのだろう。寿命の違いというものが。種族の違いというものが。

 怪我、魔法や、神様になったり、神様に仕えることにしたり。精霊の死とは、一般的にそういうものだ。つまり精霊は、何かない限り半永久的に生き続ける。エラが死ぬまで一緒にいることはできても、冬菜が死ぬまで一緒にいることはできないのだ。

 私は最近、そんなことばかり考えてしまう。考えても仕方がないことは分かっているのに、また親友を置いて死んでしまうという事実を、どうしても受け止めきれないのだ。

「雪菜ー。いくわよー」

 まあ、今はどうしようもないことだ。なるべく考えないようにしよう。

 私は笑顔で応えると、みんなの方へ駆け寄った。

「おまたせっ」

 私が笑うとみんなも笑う。みんなが笑えば、私も笑う。それだけで十分なのだと、思えたらいいのに。

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