第12話 〜"学校のカイダン"編⑨〜
「茜、やっと君の階級が決まったよ」にこにこしながら三芳が、茜の座っている席の方へ近付いてきた。「4段」と指を4本立ててみせる。
「えっ!?」「なんで?」クラスがざわめき始めた。
「ちょっと三芳、聞いてないんだけど」山沢がせかせかと歩いてきた。
「いいじゃん、別に。茜は4段で決まり」
「あんた、何様のつもりなの?」と山沢は腕を組む。
「そうよそうよ」と彼女の周りにいる女子たちも相槌を打った。
「何様って…」そう言うと三芳は山沢に近付き、「お前の彼氏だろ」と耳打ちをした。
山沢は「はぁっ!?」と言いつつ顔を赤くし、取り巻きたちと歩き去っていった。
「茜、決まりね」三芳は茜を見てにこっとする。
「三芳君、山沢さんに何て言ったの?」茜が三芳の目を見たのはこれで2度目だ。とても無垢な目をしていた。
三芳はフフッと笑うと何も言わずに自席へ戻ってしまった。
「クラスメイトの三芳 陽菜太が接近中」と夏の脳内でSAKEが警告音と共に言った。
「茜!」三芳は茜の肩をポンッと叩く。
「何?今日は雨降ってないから、傘いらないよね」茜は進行方向を見続けて言う。
「今日はそういうことじゃなくてさ。言いたいことがあるんだよ」
「何?」
「あのさ…」三芳は茜の前へ出て、少し震えた手で茜の肩を優しく掴む。
茜は足を止め、三芳の目を見た。「だから何?」
「俺、茜のこと好きになっちゃった。付き合って下さい!」そう言うと三芳は右手を差し出し、頭を下げた。
「それは最終手段ですか?」
「何が?ってか、何で敬語?」三芳が頭を上げた。
「自分のことを好きにさせて、どんどん病ませるのが好きなんですよね。それってすごぬ悪趣味なのでは?」
「どうしてそれを?」三芳は今までに見せたこともないような真顔になった。
「さあ、私は秘密主義なので言えませんね。あと、学校のカイダンも廃止した方が宜しいかと」
「さっきお前に4段だって言った時、それは何なのか聞き返さなかったよな。誰かから聞いたのか」
「ええ、誰かから」
「チッ、近藤か。お前、何者なんだ?もしかして多重人格者とか?」
「多重人格者、ですか。なかなか面白い発想ですね。ですが、ここは何も答えずに失礼させていただきますね」そう言うと、夏は三芳を払いのけた。
「ちょっと待って、返事は?」三芳はポカンとしている。
「NOです」茜はそそくさと立ち去っていった。
「それって、やれるもんならやってみろって捉えていいってこと?燃えてきたぁぁ…」勝手に一人で燃えている三芳のことを、見ている者は誰一人としていなかった。
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