第11話 〜"学校のカイダン"編⑧〜

 慣れてきてしまった、この腐ったような匂い。A中学校の校長室は、食べ物や飲み物が腐ったような匂いが、ほんの少しだけする。重時は調査のため、真夜中の校長室へ忍び込んだのだ。

 「さっき確認した通り、監視カメラはないよな…。よし、片っ端から証拠を探して奴を追い詰めてやる」重時は腕まくりをして、部屋の探索を始めた。


 「こ、これって…」重時と同期の磯辺が、丸く大きな目をさらに大きくした。

 「うん、香取は薬物を使用してる」重時はコクンと頷いて言った。


 「俺、大きな成果をあげたよね?これで香取を追い込めるよね?」そう言う重時の目はキラキラと輝いていた。「会員になれる?」

 そんな重時を、夏は「残念ながら、それは無理ですね。」とバッサリ切り捨てる。「薬物使用については元々関係のないことですし、大きく貢献したとは言えないでしょう」

岡田に情報を整理してもらっている途中のため、口以外を全く動かすことなく会話している。

 「お疲れ様、重時君。まだ仕事は残ってるんだろ?涼太にサボってるってチクるぞ」岡田が作業をしながらそう言う。

 「か、帰りますよー…」と渋々立ち上がる重時だった。


 「何で調査がこんなに息詰まるんだ!?」そう言って吉野は机をバンっと叩いた。

 同じ部屋にいた杉浦はびくんっとした。心の中では「怖い怖い、俺何かしたっけ?俺に怒ってるんじゃないよね?涼太が怒るとすっげぇ怖いんだよなぁ…」と泣きそうになっている。

 「裏切者がいるかもしれない」

 「えっ?なんて?村人?」  

 「裏切者!誰かが俺たちの情報を香取に流している。それじゃ証拠がなかなか出てこないのも納得だ」

 「最近は生徒に対する暴力や、窃盗が全くないんだっけ?」

 「絶対に誤りのないうちの調べによると、な。でも誰がそんなことを…」

 「担当してる人ってことは間違いないだろうね」

 「ああ。となると、俺と夏以外の重時、磯辺、絵石の3人か?いや、ハッキング部の村木にも情報はバッチリ伝わってるはずか」

 「全員お前が信頼してるやつだな。本等は心苦しいんじゃないか?」

 「いや、こういう仕事をしてれば心は冷酷になっていくもんだからな、仕方ない。お前も出来れば調べておいてくれ」そう言うと吉野は部屋を出ていった。

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