第7話 〜"学校のカイダン"編④〜

 会議で引き続き調査を続行することが決定した次の日の放課後。雨が降っていた。

 「接近中。クラスメイトの三芳 陽菜太ひなたが分速78mで駆けてきています。」と夏の脳内でSAKEが警告音と共に言った。

 夏は茜モードになった。

 三芳は「傘いーれーてっ!」と言って茜がさしていた傘に入ってきた。「ごめん、俺今日傘忘れちゃってさ。他に誰もいないし、一緒に入ってもいい?」

 「私、三芳君のこと家まで送るの?」

 「うーん、どっちの家の方が近いかな?俺んちは、学校から15分位だけど。茜んちは?」

 「私はすぐそこだよ。5分位」茜は三芳のことを見ずに言った。

 「じゃあ、茜んちまで行かせてもらって、そこから俺一人で帰るよ。どっち方面?」

 「坂じゃない方」

 「じゃあちょっと同じ方だ。良かった」

 

 それから茜の家までの5分間、三好はよく茜に質問したが、茜はそれに短く答えるだけで、全く三芳に関心を示さなかった。


 次の日の朝。

 「ねえねえ茜ちゃん」いつものように近藤が茜に話しかけてきた。「昨日、三芳と一緒に帰ったんだって?」いつもよりコソコソと話している。

 「そうだけど。何で知ってるの?」

 「噂になってるよ、昨日見た人がいるんだだって。三芳はモテるからなぁ」

 「ふーん」

 「全然興味なさそうだね」

 「だって三芳君より先生の方がかっこいいもん」

 「それあんまり大きい声で言わない方がいいよ。三芳、A中生徒で1番かっこいいっていわれてるんだから。…静司先生は、先生で1番」

 「じゃあ、学校で1番は?」

 「…静司先生だと思う」

 「ほら」

 「でも先生は年離れすぎて恋愛対象にならないって、茜ちゃんも言ってたじゃん」

 「でも、私また前の学校に戻るし、Aここで恋愛する気ないしなぁ」

 近藤が「ちぇっ、つまんないの」と言った直後、三芳が数人の男子を連れて茜の方へ歩いて来た。「何話してたの?」

 近藤は、自分より階級が上の人たちに話しかけられた事に驚いた。

 「三芳君の話」茜は平然として言った。

 「どんなこと言ってたか気になるなぁー」三好は夏の近くの空いている椅子を取ってきて座った。他の男子たちは彼を囲むように立っている。

 「昨日、茜ちゃんと一緒に帰ったって噂が立ってるよ」近藤が落ち着きを取り戻して言った。「その話」

 「あー、昨日はありがとね」

 「別にいいよ」茜は絶対に三芳たちのことを見なかった。

 その会話を見ていた吉野は、「トイレ行こうぜ」と言って近くに歩いて来た三芳の襟に小型録音器をくっつけておいた。

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