第6話 〜"学校のカイダン"編③〜

 「このこと、先生に言わないでね。私が言ったってバレたら、一段に下がるどころじゃ済まないから。約束ね」

 「うん、約束」

 夏と近藤は指切りげんまんをし、密かに微笑んだ。

 

 その日の19時、夏はUNTOの本社の実験室に来ていた。  

 夏を作った岡田 翔が、今日SAKEが記録したことを整理している。「なんだ、1日目から豊作だなぁ」

 「よう、メカブ」いつの間にか吉野がドアに寄りかかっていた。

 「メ↑カ↓ブ↓ではなくメ↓カ↑部↓だ。お前そのボケ好きだな」

 「TTは?」

 「泰生たいせいなら、初めてのおつかいに行かせた」

 TTとは、岡田の弟子の多田ただ 泰生のことだ。1年前、孤児だったのを岡田が拾って弟子にしたが、今では雑用係のようなものになってしまった。

 「可哀想に。そんなんじゃパワハラで訴えられるぞ」

 「TTなんて呼んでるやつが言うな。それより、データがまとまったぞ」岡田はそう言ってUSBを吉野に手渡した。

 「ありがとう。今から会議してくるから、みんなを呼んどいてもらえる?」

 「はいはい。それより夏、お前先生には言わないって約束したんじゃなかったか」どうせ答えは分かってるくせに、試すように岡田が言った。

 「約束したのは茜ですし、私はただ自分で録画・録音したものをUSBにされて晒されてるだけです。先生にも言ってません」

 「前は、仕事ですみたいな感じだったのに、もうそんな言い方ができるのか」

 「成長型人造人間だからな。色んな人の話し方を学んでる。ったく、誰がそんな話し方をするんだろうな」

 夏と吉野は同時に岡田を睨んだ。

 

 その頃、本部の一室には、社長の神田,副社長の杉浦すぎうら,人事部長兼作戦プランナーの櫻田さくらだがいた。  

 コンコンコン、とノックの音がして、吉野が部屋に入ってきた。「今日のデータ、まとまったよ」

 吉野,神田,岡田,杉浦の4人は全員26歳の同い年なので、役職は関係なくタメ語で話すことにしている。ちなみに、神田と吉野は同じ大学の演劇サークル、岡田は同じ大学のまた別のサークル、杉浦は違う大学にいた。吉野と岡田は幼馴染で、親友。神田に誘われた吉野が、岡田と、従兄弟の杉浦を誘い、櫻田は神田に誘われた彼の叔父だ。

 「今日はすーたんもいるのか」吉野が言うすーたんとは、杉浦のことだ。

 「いい加減、すーたんはやめてくれよ」普段静かで唯一早生まれの杉浦はいじられキャラだ。

 「すーたん、げんきげんきー!」

 このボケで、いつも杉浦以外は大爆笑に包まれる。

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