第5話 〜"学校のカイダン"編②〜

茜の方へ歩いてきたのは、山沢 沙也加,百里 乃愛のあ内村うちむら 夢葉ゆめは銀鏡しろみ ゆいの4人。偉そうに堂々としている。

 山沢が腕を組んで言った。「ねぇ、あなた先生のこと好きなの?」

 「えっ?あ、はい、まあ。好きですよ」

 山沢の右後ろに、子分のように立っている百里が山沢の真似をして言った。「私達、恋愛的な話してるんだけど」

 「あー、恋愛的にはちょっと…年も離れてますしね」

 茜がそういう間、SAKEは山沢を中心としてアイドルグループのように格好つけて腕を組んでいる4人全員の顔を再度観察した。 

 山沢は、栗色の髪をコテでクルンクルンにして背中まで垂らし、目にはアイプチ、日焼け止めを塗ることによって肌をトーンアップさせている。限られた校則の中で最大限にできるおしゃれだ。百里は天然パーマを隠すため高くお団子結びをしていて、内村は、肌が浅黒く、肩につかないくらいの黒髪の先をコテで巻いて整えている。1番背の低い銀鏡は、もともと肌が白い体質なのか、そばかすがある。黒髪は高いポニーテールにしていた。4人とも、早朝に頑張ってアイプチで作り上げた二重の目で、精一杯茜を見下ろしている。

 「それならいいのよ。静司先生は私のものって決まってるもの」山沢はそういうと、子分たちを引き連れて自席へ戻っていった。

 

 いつの間にか、茜の前の席の生徒が振り返って茜を見ていた。「私、近藤こんどう 亜希あき。よろしくね」

 「亜希ちゃん。よろしく」

 「さっきの4人、あんまり関わらない方がいいかも。」

 「話してみてそう思ったよ。」

 「茜ちゃんから話しかける事はないと思うけど、極力関わらないように意識した方がいいよ」

 「結構強めに言うんだね。どうして?」

 「"学校のカイダン"って知ってる?」

 「学校の階段?怪談?」

 「カイダン。生徒の格付けがあるの。一段が1番下。二段、三段、四段まである。入学してすぐ、先輩に階級が決められて、その後も先輩とか、階級が上の人たちの評価とかによって上がったり下がったりできるんだけどね。このクラスの四段は、さっきの四人とあそこらへんの男子。茜ちゃんに、先生のこと何て呼んでるか聞いた三芳とか。もう気付いたかもしれないけど、席が前の人程段が高くなってくんだ。ちなみに、私は二段で、一段の人は少ないからこんなに後ろにいるの。そろそろ茜ちゃんも格付けされるよ。頑張ってね」近藤は声をひそめてそう言い、小さくウインクした。

 「格付けって、具体的にどうするの?」

 「格付けとかは何も知らされずに、話すだけ。敬語が使えてるか、ナメた態度じゃないか、話を合わせられるかとかを見られるらしいけど、私もよく分かんないんだ。ごめん」  

 「このこと、先生たちは?」

 「長年いる先生は薄々気付いてると思うけど、格付けだけじゃ何とも言えないんじゃないかな」

 「格付けで下になるのは嫌?」

 「私はそこまででもないよ。今は目をつけられてないから。でも、目をつけられると大変なことになる」 

 「例えば?」

 近藤は教室の前の方に視線を移した。

 そこでは、黒板に書かれた文字を消している生徒がいる横で、先程の女子4人が黒板に落書きをしている。  

 「小学生の時仲良かった晴子はるこ。一段になっちゃって。ね、分かるでしょ?違う段の人とはあんまり話さない方がいいよ」

 茜はゆっくりと3回瞬きをした後、「うん…」と頷いた。

 


 


 

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