第104話 対抗試合②

「カーーーン!!」


 試合が始まった。


 オレは直ぐにシールドを張る。

 3重くらいでいいかな?


 マッケンナは、いきなり大火球を放つ。


「キターー!いきなりの大火球攻撃ーー!これは、汚い、いや、決まったかーー!!」


 コイツ、前もって魔力を練り込んでたな。

 格下が良くやる戦法だが、お前は王立トップじゃねーのか?


 しかし、さすがはトップ。

 威力は流石だった。

 3重シールドが消し飛ぶ。


 と、その瞬間にはオレの目の前に来て、オレの顔面に魔力を纏った正拳を振るってきた。


 これ、当たると、顔が陥没するぞ!


 思考加速(超速はムリだった)。

 軽く当たってもいいけど、ちょっと面白くないかも。

 だったら・・・・・。


 オレは、後ろへ跳ぶ。

 ヤツは、消えたと思ったことだろう。


 ヤツもバカではないので、バックステップで、オレと距離を取った。


「おお〜〜!煙りでわからなかったが、何やらやり合った様子。どちらも無傷かー?」


 マッケンナは、ニヤリと笑い、白い歯をキラリとさせて、前髪をかき上げた。


 気色が悪い、気色が悪い、気色が悪い!


「キャーー―ーー」

「ステキーーーー」

「うばってーーー」

 と、ここで、黄色い声が王立と帝国の選手や同行している生徒役員たちの女子から上がった。


 誰だよ、奪ってって?

 ちょっと、サヤカの方を見た。

 頬を赤く染めてマッケンナを見ている。


 ちぇっ・・・・なんか、こんなこと、前にもあったっけか?

 知らねーけど、腹たつわーー!


「いやー、余裕な感じですねー!イケメンの

 マッケンナくんはー!ステキーー!!」


 ヤツは、余裕の仕草をしているようだが、すでに魔力を込めたようだ、オレにはわかる。

 また、同じような攻撃か?


 ヤツは、今度は詠唱した。

 まあ、オレはそれをただ見ていた。

 周囲の生徒や先生の様子、救護班や魔道使いの人たちなどの観察を魔眼でしながら、もちろん、眼帯を外さずにだ。


「おっとー、詠唱をしてます、マッケンナくん。カッコイイーー!」


 ヤツの詠唱は終わった。

 そして、ヤツの攻撃も不発に終わった。

 ヤツの顔が歪んだ。

 ざまぁーみろ、だ!


 オレは、先程の後方へ跳ぶ動作をする前に、オレに対する魔法攻撃無効のアンチマジックの結界をヤツの周りに3重に張った。


 ヤツの顔が歪んだのは、自分の魔法とアンチ魔法の激突による衝撃波が自分の身体の周囲に起こったからだろう。


 しかし、ヤツはトップ。

 また、直ぐに魔力の高まりを、オレは感じ、シールドを2重に張る。

 もう、そろそろ、終わりにするか。

 あまり長くやると、疑われるしって言う意味の2重シールドだ。


 ヤツは、今度は小火球を10個放って来た。

 そして、火球の後ろに隠れるように、オレに目掛けてやって来る。


「出ました!火球がたくさん!さあ、もうこれで決まりでしょう!」


 はっ?

 言ってろ!


 しかし、また、コブシかな?

 適当にやられちゃおうっと。

 オレは、ちょっと緩んだ、気持ちが。


 その時だ!


 まだ火球の半分くらいしか当たってないのに、オレのシールドが壊れた。


 えっ?


 オレは、相変わらず、索敵とかが苦手だ。

 これは、誰か別のやつの仕業。


 コイツの火球には、そんな威力は、ねー!


 思考加速!

 魔眼!

 クソッ!

 わからん!

 眼帯を取ったら、はっきりしそうなんだが・・。

 でも、魔眼持ちってバレるし。


 とにかく、火球は避ける。

 オレは、皆んなにはただ何もせずに突っ立ってる様に見えるだろうけど、超速で火球を躱している。


「ああー、何と、当たりません。ってことは、このたくさんの火球はフェイントかーー!」


 この実況、素人すぎるだろ!

 美人だけど。


 そして、ヤツのコブシが来た。

 あれ、これも当たったら、ヤベーやつじゃん。


 ってことで、ひょいと避ける。


「ゲフッ!・・・・」

 なんだ?

 心臓を刺してるぞ・・・・・・。


「うううううううう・・・・・」

 オレは、その場に倒れた。


「マッケンナくんの勝ちーー!!・・あっ!!救護班、早く行ってください!!トーマくんが・・・・・」


「くくくくく、これぞオレの隠し玉だ!どうだ、魔剣の味は?お前はどちらに避けても、この魔剣の餌食だったんだよ。この魔剣は、ステルス性能が付与されててね~~、見えないんだよな~~。そしてだな~~」


「ちょっと、どいてください!!」


 サヤカが駆け寄って来た。


「パーフェクトヒール!!」

「えっ?効かないわ」


「みんなも、一緒に!」

「ヒール!!」

「パーフェクトヒール!!」


 サヤカ「えっ?どうして?」


「殿下をお救いしろ!救護班、しっかりしろー!!わしの・・わしの未来が・・・なんとかしろーー!!」


 救護班たちは、必死にヒールをかける。


 マ「えっ?オレ、こんなこと・・・いったい、どうして・・・トーマくん、死ぬなーー!!君は凄かったよ!オレは、ライバルと認める!頼む、生き返ってくれーー!!」


 サヤカ「トーマーーー!!目を開けてーーーー!!」

(えっ?この指輪?・・トーマ?)


 サヤカ「お願い!!私にチカラを!!女神様、お願いします!!」



 ~~~~サヤカ視点


 ダメだ。

 いや、わたしは諦めないわ。

 わたしは、あのモグちゃんみたいな事には、絶対にしないって心に誓ったんだからね!


 トーマ、あんた、もっとやりたいことがあるんでしょ!


 昨日、言ってたじゃない?

 わたし、酔ってたけど、あんたが夢を語ってたのだけは覚えてるんだから!


 あんた、サーヤって人に、もう一度会って、抱きしめるんでしょ!!

 死んじゃったらしいけど、どこかに前世がサーヤだった人が居るって言ってたじゃないの!


 ここで死ぬんじゃないわよ!!


 わたしが!

 わたしが、絶対に助けて見せる!!


 だから、あんたも、一国の王子なら、根性、見せなさい!!


 わたしは、あの時を思い出していた。

 モグちゃんに掛けたパーフェクトヒールを。

 あのとき、誰かが、それよって、言ってくれた、あのヒールを。







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