第105話 トーマ、またね!


 オレ・・・・不意を喰らったな。

 しかも、心臓を貫かれるとは・・・。


 心臓、動いてないし・・・・。


 オレ・・・・サヤカか?・・・・このヒール・・・懐かしい・・・。




 ~~~~~~サヤカ視点


 あの時、わたしは、モグちゃんに・・・。


 わたしの気持ちを・・あなたにシンクロさせる・・・わたしはあなた・・・あなたへわたしのチカラを・・・いえ・・そう・・愛を・・・あなたをわたしの愛で包んであげる・・・そして・・・・笑って・・・目を開けて・・・みんなも、あなたに治ってほしいのよ・・・ほら・・・・ねえ・・・!!


 わたしとトーマの身体は光り輝き、癒しの波動で満たされていく。


「トクンッ!トクン、トクン・・・」


 トーマの心臓は動き出した。


 治った・・・・でも・・・・トーマ・・あなたはいったい・・・。


 このあと、また、お話を聞かせてもらうわね。


 あなたの、・・・・。


 ~~~~~サヤカ視点終わり



『おい、カレンかアノン、何かわかったか?』

『相当な使い手よ』

『我は、トーマからのチカラの供給不足でわからぬ』


『それは、仕方がないだろ。勇者のチカラは絶対禁止だよ、ここでは。でも、ワザと喰らったにしては、場所が悪かったな。どうすんだよ?サヤカって、意外と凄かったぜ。アレは、ソフィーのパーフェクトと変わらねーぞ。バレたかな?』


『その時は、その時じゃない。あなた、いつもそうして何とかやって来てるんだから。うふふふふ』

『カレン、後で、オレの魔核とその使い手の情報を教えろよな。ちょっと、寝るわ。直ぐに目を開けにくいからな、この状況だと』


 オレは魔族なんだ、魔王なんだ。

 心臓を止められようが、復活させて生きることができる。

 なぜなら、魔族の急所は、魔核なのだから。


 こうして、オレは担架に乗せられ、とある部屋に寝かされた。


 そして、なぜか、サヤカが傍について、オレを看ている。


 コイツ、責任感が強いのか?

 そういうところは、ソフィーに似てるのかな?


 ほっとけよな、こんなうだつの上がらない王子なんて。


「はあ~~~(し、しまった!)・・・うううんん・・・」


「あっ?トーマ、気がついた?」


「うう・・・あれ・・・ここは?」


「大丈夫?具合はどう?ここは、病室。あんた、心臓を突かれてたんだからね」


「それは大変だったな」


「なに、それ?他人事みたいに・・・あんた、私に何か隠してない?」


「はあ?何のこと?」


「そう・・・いいわ、まだ、あんたと話す時間はたっぷりあるんだし。わたし、これから後夜祭の準備に行かなくちゃいけないから、またその時話そうね。それまで、良く休んでいるのよ・・・うふふふふ、でも、あんたの身体には必要ないのよね、わかっちゃったから(ちょっと、カマをかけてみたけど、どう出る?)」


「何だよ、知ってたのか・・あはははは。そう、オレは心臓を止められても、復活できるのさ。そういうアイテムを持ってるからね。ほら!」


「そうなの(えっ、そんな事なの?)?それ、どこかで見たことがあるけど・・それ、ラピスラズリ?」


「へえーー、知ってるんだ(あれ、迂闊な事は言えないぞ)」


「うん、でも、よくわからないけど、なぜか大切な、懐かしい感じがする」


「ふぅ~~ん(良かった、よく知らないみたいだ。なんとかごまかせたかな)。あのさあ、後夜祭とかの準備って、時間かかりそうなの?」


「そうね、いろいろあるからね。今年は、私たちの番だから」

「じゃあ、その後夜祭の時に、また、飲もうぜ!」


「そうね、でも、あんた、瀕死だった人が飲んでもいいのかな?」

「いいんだよ、オレは・・・うん?いいのかな?」


「まっ、監督に了解をもらいなさいよね。じゃあ、またね」


 こうして、オレは、後夜祭には出られなかった。

 あのクソの監督!

 あいつ、また、ええ、ええ、とか言いながら、結局、自分が大事なんだからな!


 何かあったら、私の首が飛びます~~とか、そんな大げさな事にはならねーよな?

 なるのかな?

 もう、知らねーよ!


 ああ~~~、もっと、お酒とか、ダンスとか、したかったな~~。

 それに、サヤカと、もっとしゃべりたかったな~~。


 オレに、あんな感じに、打ち解けて話してくれる人って、少ないからな~~。


 えっ?

 ああ、アイツ(サヤカ)を通じて、王国の情報を掴むことが一番の理由なんだけどな、もちろん。


 こうして、翌日には、帰国となった。

 オレは、もちろん、シンジとサヤカをクモに見張らせた。


 二人とも、結界内にいることが多いだろうから、オレには直ぐに情報がもたらされることはないだろうけど、でも、念のためだ。


 サヤカは、お手紙を書きますとか言ったが、オレは断った。

 それは、手紙なんか信用できないからだ。


 その理由は、テレるからとか、ラブレターとか良く貰うから破って捨てるとか、婚約者に勘違いされるとか、いろいろ言って、ごまかした。


 それで、トーマって面白いとか、そっちで勘違いされたけどね。

 ホントの事は、まだ、サヤカが何者かわからないのに、言うべきでないと思ったからだ。


 オレは、王国の事は、これからは神経質に成らざるを得ないと覚悟していた。

 あの襲撃者も、がわからない状況ではね。



 そうして、帰ってからオレは、フランツ王国の王都への潜入を試みる。

 王国にいるクモとか、もう少し数を使えるようにすることと、結界をこの目で見て、対策を考えることとかで行かなきゃいけない。


まずは、王都近くに転移する。


 王都自体も、多重結界とか・・さらに、何だろう?ちょっと、異質な結界?が張られている。

 とにかく、これはやっかいなけっかいだ。



 そうして、オレは、王都へ入った。

 久しぶりだ。

 もちろん、仮面をつけている。


 歩いていると、なぜか、例の教会へ来た。

 懐かしいな。

 あの時の事を、ふと、思い浮かべてしまった。


 そして、オレは、自然と教会内へと入って行った。


 教会では、ミサが終わったところのようだった。

 結構な数の人が居る。

 そして、列が出来ていた。


 オレは、別に並んでいる訳ではなかったが、オレの後ろにも列が出来てしまっていた。

 なので、その列から離れられず、まあ、いいかと思ったので、そのまま並んだ。


 それは、ミサの後で行われる祝福をもらうための列だった。

 良く見ると、祝福を行っているのは、ソフィーだった。


 あれっ?

 ちょっと、まずいかも?

 どうする?


 っと、考えてたら、ソフィーと目が合った。

 ああ、この仮面をつけてるのがアダとなったようだ。

 面倒なことにならないといいけど・・・。




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