第91話 試験
今日は、筆記試験。
オレ?
もちろん、ふつうに半分くらい勉強して、後は奥の手を使う事にした。
『カレンさん、頼みます。クモ、ちゃっちゃと配置につけ!』
そして、オレは、アーネとその他のA組のメンバーの様子を観察しつつ、試験を受けた。
様子?
そう、答案内容の様子をだ!
カンニング?
そんな異界の言葉は知らない。
これは、実力だ。
オレの能力を使っているからできる芸当で、余人には出来る訳がない。
ということは、オレは、オレの実力で試験を受けているということになる。
屁理屈?
そんな異界の言葉は、この世界には存在しないのでスルーだ。
スルーって異界の・・・いや、もうそんなことどうでもいいじゃん。
こうして、オレは、アーネ(いつも一位の人)よりも少しだけ悪い点を、その少しだけの調整を他のA組の子の答案を見ながら考えて、10位から20位程度になる答案を作成するのだった。
結構、難しいし、クモの能力をめっちゃ使うので、良い練習にはなる。
ここまで使えるようになるには、オレも結構訓練したんだよな、冒険者をやってね。
クモを複数使い、尚且つ、それぞれの映像を脳内で複数同時に処理をし、それぞれに指令を出す。
すべて、心の中で命じることができるので、イメージを即座に送るってやり方で対応し、そうすることで並列思考の真似事ができるみたいだ。
それと、やはり魔眼のチカラを使っているみたいだね。
別に眼帯を外さなくても、そこは魔眼のイメージ力と見た物に対する処理能力のスピードが通常では有り得ない鮮明さと速さで行われるという事で何気にわかるのだが。
並列思考というのは、厳密には、イメージだけでなく、ちゃんとした思考をしなくてはいけないんだけど、そこまでは、まだできない。
こうしたことを何度もすることによって、並列思考は出来るようになる気がする。
このイメージ作戦は、まあ、前から使ってたんだけど、今は5個同時だからね。
カレンには、それらの統括補助を頼んでいる。
って言っても、いつもカレンはクモとやってることなんで、それにオレが介在してるだけなんだけどね。
そして、翌日は実技試験だ。
これは、実はシンプルなものだ。
単に戦って、勝てばいい。
変則トーナメントで、それは行われる。
説明が難しいのだが、80人の内、シードが上位8人。
まずは72人でそれぞれ1回戦が行われ、勝った36人にシードの下位2人が混ざり、38人が2回戦。
19人が勝ち上がり、残りのシード下位1人を加えて20人で3回戦。
10人が勝ち上がり、そのまま4回戦。
勝った5人と残ったシードから下位3人を加えた8人で5回戦。
勝った4人で6回戦。
勝った2人と最後のシード2人を加えた4人で準決勝。
そして、勝った2人で決勝戦だ。
~~~~~作者より
一応、説明したけど、わかるかな?
まあ、スルーしてもかまいませんのでw
つまり、これは上位2人が有利なんだよね。
で、このツートップは、ジェイとアーネだ。
オレ?
一回戦からです。
そこまで、王子特権はない。
そして、1回戦が始まる。
オレは、魔法発動が遅れ、初撃の剣撃をもろに受け、吹き飛ばされ撃沈。
まあ、予定通りだ。
「王子、大丈夫ですか?」
救護班のヒーラーが大げさに癒しの魔法を施す。
シールドを張ってるから、全然大丈夫なんだけどね。
そもそも、1回戦に出てくる程度の剣士が魔王のオレに傷を負わす事など不可能なんだ。
シールドも自動で生じる優れものだからね。
「ううう、だ、大丈夫です・・・」
そう演技しながら、ヒーラーの治療を受ける。
たぶん、皇帝が、オレを絶対に傷を負わせるような事があってはならんとかなんとか過保護的なアレコレを言ってるのだろう。
そうして、オレは、また寮に帰って寝ることにした。
で、今、ギルド近くのいつものカフェでお茶を飲んでいる。
不良?
なにそれ、知らない。
そこで、クモを操作し(半分はカレンが担当)、試験会場の映像を見る。
6回戦を見ていた。
リッツ対リッター戦。
どちらもイケメン。
女子たちの黄色い声が響く。
リッツの瞬歩?かなって速さの剣撃がリッターの目の前に迫る。
そして、リッターはあっさりと消し飛んだ。
そして、リッツはその場に倒れた。
「勝者、リッター!」
リッツの後ろにはリッターが立っていた。
オレには、見えていた。
たぶん、セーラにも見えていただろう。
オレは、ゆっくりとコヒーを飲む。
うん、ちょっとおしっこしたくなって来たな・・・。
トイレに立って、彼らの映像を反芻してみる。
うん、まあ、あいつら、なかなかの者たちだな。
でも、ジェイはその上を行くぞ。
ふぅーーー、やっぱ、コヒーって、利尿作用がよく効くね。
『あの試合を見た感想がそれ(利尿作用)ですか?流石です、魔王トーマ』
『おまえ、やっとオレを認める発言をするんだな?』
『えっ、アホですね、トーマは。認めてるから、私は真名を教えてるのよ。前の魔王はクモになるまで、私のことを認めなかったからね』
『おまえ、何となくディスってないか?』
『もちろん、褒めてますよ、おほほほ』
(この魔王は、私の仕えた魔王の中でもやはり・・・・大好きよ、トーマ!)
次の対戦は、セーラ対フローラ。
セーラの魔法対フローラの剣技と魔法。
オレは、この対戦のどちらかが順位3位以上だと思っている。
セーラはまず防御を完全に施す。
魔導師の戦い方の基本だ。
対してフローラは、一瞬の内にセーラの背後を取り、剣の刀身をそのまま当てるのではなく、すぐに届くその剣から伸びる魔力で出来た刀身をセーラに当てる。
だが、その魔力の刀身は掻き消え、フローラの剣は空高く弾かれた。
すぐにフローラは魔法で10個の刀身をセーラの周りに顕現させて、全方位からの攻撃を行う。
そして、フローラは飛んで剣を握ると衝撃波をセーラに向けて剣から発する。
セーラに向かった10個の刀身、その直後を襲う衝撃波、それらをセーラは無視して、フローラを魔眼で睨み、両眼が金色に光った時、全てが終わっていた。
10個の刀身、衝撃波はすべて消え去り、フローラは着地もできずに倒れ込んでいた。
何が起こったのかを理解できたのは、何人いただろうか?
うむむ、ここまで魔眼が使えるようになってたか。
最近は、一緒にクエストをしたことがなかったが・・・まあ、でも想定内かな。
あの魔眼、さらに進歩したら、行動を操れるとこまで行きそうだな。
ふん、まあ、人間の限界はせいぜいそこまでだ・・・うん?今、オレ、何て思った?
何て言った?
『カレン、オレ・・・』
『そうね・・・あんたの場合は魂の存在が複雑なのよね。あんた、早く前世の記憶を取り戻さないと、ダメなのかも・・・あまりにもあんたの存在がイレギュラーすぎて、私の記憶からも前例がないのよね』
『そうなの?でも・・・・』
前魔王の呪いは強力だった。
だが、オレの自我も、オレの生命力も強力なのだ。
そこで、どうやら、魂が・・・こころが、分裂しようとしている?
どうするんだよ、オレ。
オレは、新たな問題を抱えようとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。