第90話 早退だって?そうたい!

 学園では3ヶ月に1回、筆記試験がある。

 実技試験は半年に1回ある。


 僕はどのみちA組なのでという甘えた考えがあったので、最初の筆記試験は真ん中くらいだった。

 それでもこのエリートの帝国学園で真ん中なんだから、普通は良いのだけれど僕はA組だ。

 なので、次からは 10番台くらいは狙わないといけないのだけど。

 バネッサ先生は、王子は皇帝になるんだからそこまで詳しい知識を必要としないから大丈夫と言われ、あまり教えられなかった。

 でも、一位をとるつもりで勉強しないと無理だし、これは・・・・・。


 ぼくは席を立ち、トイレに向かうと。


「いいよな、王子様は、何点取ってもA組だし。くそっ!オレなんか・・」

「おい、また今度があるさ。がんばろうぜ」

「ちくしょう、あんなんで、アーネ様とかセーラ様とかとイチャイチャしてて・・・」

「そうだよな、でも仕方ないよ。あの皇帝の息子だから、きっと良い女の子は選り取り見取りって感じだろ。でも、なんか男としてやるせないよな」

「ああ、それな!別に、凄いイケメンとか、凄く賢いとか、凄く強いとかだと流石に次期皇帝って感じだけど、全部ダメだろ、あれ」

「まったくだ、なんかイラついてきたぜ」


 オレ、行けねーじゃん。

 だから、嫌だったんだよな。

 別に、オレ、A組とかどうでもいいし。

 別に、オレ、アーネとセーラにイチャついてないし。

 別に、オレ・・・・そうだよな、イケメンでも何でもないんだよな、っていうか、化け物みたいで、暗がりだと怖がられるし・・・。

 なんで、こんなオレをアーネは?

 やっぱり、距離を置かないと・・・・。


 アーネだって、好き好んでオレと婚約なんてしたくなかったよな。

 そうだよ、それにセーラだって、あんな感じで話してくれるのは、オレが王子だし、親友がその婚約者だから仕方なく話してるだけで、もっとイケメンの、そう、ジェイとか、リッターとかリンツとか・・・・。

 アーネもセーラもジェイと話してる時の方が、頬を赤く染めて、楽し気だし、まあ、前から思ってたけど、ジェイとお似合いだよな、二人とも。

 ジェイは学年の女子では一番人気だって、カレンが無駄に能力を使って、クモと一緒になって情報収集してわかったんだけど・・・いや、情報収集は一番大切だよ、もちろんわかってるけど、その副産物とかって言って、自分の好きな情報集めてるし・・・。


『うふふふふ、あんた、思ってること、私に筒抜けってこと、いつも忘れてんじゃないの?』

『それをいつも思ってると、気が狂うから止めたんだよ。もう、自分に正直に生きることにしたんだ』

『うふふふふ、あんた、そんなこと言いながら、隠し事多いし、うふふふふ。だったら、もう隠さなくてもいいんじゃない、少なくとも、アーネとかセーラには』

「ダメだ!」

『あっ、声、出ちゃったじゃないか。カレンって、今の人間族の感情とか常識がわかってないこと、あるよね?今の人間族、特に貴族たちなんて、魔王すなわち悪の親玉っていうことが常識だよ。オレ、絶対、自分が魔王なんて言えないよ』

『ふう~~~、これだから人間は、進歩しないのよね』

『どうするんだ、オレ、トイレに行きたいんだけど』

『簡単な事よ。帰るのよ』

『えっ?いいの?』

『あんた、王子でしょ。しかも、身体の弱い王子ってことになってるじゃない。それを、これから使うのよ!ああ、わたしって、あったま良い!!』

『それ、使えるの?エライぞ、カレン!!よし、担当の先生に気分が優れないので寮に帰って寝るって言ってくるよ!』


 こうして、オレは(もう、オレになってるけどな)、時々、休んだり、早退したり、自由に時間を使う事にした。


 それで、何をしてるかって?

 もちろん、冒険者ユーマでクエストを受けに行くのさ。


 ああ、もちろん、寮で寝てるオレの代わり身(ドッペルゲンガー)とクモを部屋に用意してからね。

 因みに、オレの部屋は一人部屋だ。

 まあ、王子特権だね、これも。


 冒険者ギルドでは、オレはB級になっていた。

 ルナは、ユーマ様と言ってきて、それを隠すのが下手なので、もうずっとユーマと言わせ、お姉様キャラを復活させている。


「ユーマ!今日は、真昼間まっぴるまからお姉さんとデートだなんて、びっくりしちゃったよ。いいのよ、昼間からのエッチでも、準備OKだし」

「あのね、オレは、純粋に魔獣の討伐をしに来てるんだからね!」

 やっぱ、お姉様キャラ復活は失敗か?

 まあ、でもこれはこれでありかな?


『ありだとはっきり言いなさいよね!ああ、童貞卒業かあ~~』

『いや、まだ、オレのあそこの成長はそこまでいってないだろ?えっ、もう、できちゃったりするの?』

『うふふふふふ、やってみればいいじゃないの?うふふふふふ』

 訊いたオレがバカだったわ。

 カレンとか、どうせ妖精みたいなヤツだから、あんなこととか、そんなことなんてしたことねーだろうし。


『あんたねー、わたしをなめんじゃないわよ!』


『可憐なカレンさんは、いつも素敵ですよ』


『そんな本当の事言っても・・・そうね、おごりだよね、これは!』

 またかよ・・・まあ、いいか、オレもなんか久しぶりだし、あの居酒屋に行くの。


 オレ達は、討伐クエストを受けて、目的地を8匹のクモに探させた。

 その間、オレ達は、近くのカフェでお茶を飲む。

 カフェは、ギルドに近いこともあって、情報の宝庫だ。

 そう、オレ達は暇そうにお茶をしている訳ではない。

 とにかく、情報は世界を制するんだ・・・誰が言ってたっけ?

 たぶん、前世とかの情報かな・・・孫氏?

 ダレ、それ?


 もう、オレの能力を隠すこともないし、転移の能力向上もさせないといけないので、クモが目的地を見つけると、オレ達は転移した。

 オレは、今、12匹のクモの使役ができるようになっていた。


 早く、100以上使えるようにしないと、敵国の情報とか、取るのは難しいだろう。とくに、あのピエールのな!


 オレは、まだ、遠くの地であるフランツ王国の方に、魔眼を開いて見つめるのだった。


「ユーマ、早くしてよね、お姉さん、このあと、撮影が待ってるんだから!」


 ちぇっ!ちょっとカッコつけようと思ったのに。


 オレには、まだ味方は少ないが、やがては・・・待ってろよ、ピエール!!



 トーマは、よく前世以上前の事や言葉を喋ってしまうのに、あまり気がついていない。

 これは、もしや覚醒が近づいているのか・・それは作者もまだ、知らないのだった。

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