第92話 結果

 実技試験の続きは、もう内容を言うほどのものではなかった。


 セーラ対アーネ。

 セーラが何も出来ずに敗退。

 セーラ、お前、さっきの魔眼は、ひょっとして一回使うと次までの発動に時間がかかるとか?

 それか、アーネに遠慮したのか?


 いずれにしろ、見るべきものは無かった。



 リッター対ジェイ。

 リッターにジェイが瞬歩と同時に身体が分身した?

 ジェイの前後のリッターは消し飛び、同時にジェイの身体も消えた!


 すると、上空に本体は居て、ジェイの剣がリッターを突き飛ばしていた。

 もちろん、リッターはシールドを張っていたのだが、ジェイの打突の衝撃が身体にダメージを与えた。


 リッターの魔分身二つに対して、ジェイは身体の超速移動による攻撃で分身したように見えたのだった。

 しかし、本体の存在を見切っての行動は、幻獣の攻撃や幻視を得意とする者の攻撃を躱し、本体を的確に攻撃できるスキルが既にあるということを証明している。

 つまり、全学年でもトップの実力があるということだろう。


 この年齢なら、リッターぐらいの実力でトップになってもおかしくないのだが、この学年はレベルが例年より高かったようだ。


 そして、決勝戦。

 序列1位と2位のツートップの戦いとなる。

 序列1位は、ジェイなのだが、僅差だ。

 だが、ここで、アーネはこの戦いを辞退した。

 オレの看護に向かいたいと言って。


 ヤバい、ってことで、オレはお金を払うとすぐに寮へ転移した。


 アーネ「起こしちゃいましたか?」

「うん?いや、目は半分醒めてたから大丈夫。で、試験はどうだった?」

「うふふふふ、また2位でしたよ。でも、セーラは本調子じゃなかったので、私は運が良かっただけです。それより、痛くありませんか?」

「えっ?ああ、もう大丈夫」


「寮生活になったし、学校でもあまり話す時がないので、なにか久しぶりですね。最近はお身体の具合が悪いようで心配です」

「いつも、君には看病ばかりしてもらってる感じだね。あはははは」

「うふふふふ、そう言えばそうですね、うふふふふふ」

 ああ、ホントに良い子だな、そして可愛いし。

 でも、たぶん、君は無理してるんだろうな。

 オレは、顔もだけど、心まで人間じゃなくなりそうだ。

 もうすでに、身体は魔人だから・・・・・。


 オレ、彼女を愛する資格は・・・ないのかな?



 試験結果が発表され、各組で成績に応じた移動が行われる。

 オレは、筆記は予定通り、16位の成績でもちろんA組なのだが、実技は最低だった。

 オレは、そのため、他の組へ移っても良い旨を伝えていたのだが、却下された。


 あ~~あ、また恨みの籠った目でみんなが見るんだよな。

『カレン、聞かせろ』

『これ、わたしは編集とかしてないからね、念のため』

 クモからの音声情報を聞く。


『あのクソ王子、1回戦で敗退のクセして、なんでアーネ様が決勝を辞退してまで看病する価値があるんだ?』

『ああ、無能王子だな。あの皇帝にして、この子ありってね』

『おい、誰が聞いてるかわからねーぞ』

『しかし、事実は事実だからな。ジェイがいっそ皇帝につけば良いのにね』

『ああ、それだと皆、納得するだろうけどな。現実は残酷だよ。ジェイって、いろんな子から告白されてるけど、首を縦に振らないんだって』

『そうらしいな。うわさだと、アーネ様かセーラ様に恋してるらしいぜ』

『ああ、そいつは可愛そうに』

『そうだよな。二人は、あのクソ王子のモノになっちゃうみたいだぞ』

『えっ?セーラ様もか?』

『ああ、ほぼ間違いねーよ。そのスジからの情報だからさあ』

『くぅ~~~、ホント、王子に生まれたってだけでそれか~~~~』

『ああ、もうなんかね・・・。でも、ジェイはそれを目の前で見てるんだから、可愛そうだよな』

『ああ、あいつ、良いヤツだしな』

『おい、これも確からしいスジからだけどな、アーネ様もセーラ様も実のところは、ジェイのことが好きらしいぞ』

『えっ?それ、ホントか?』

『ああ、最近、あのクソ王子、クソな上に身体弱いだろ。だからよく休むじゃん。王子が居ない時は、ジェイとアーネ様やセーラ様、それにフローラ様まで一緒に食事して笑いが絶えないってさ。それに、仲良く笑いながら話してるのを良く見かけるのは、みんなご承知の通りだし。あの恋人たちの花園でさ、まるで恋人通しみたいに良くアーネ様やセーラ様達とジェイとは、仲良く午後の散歩をしてるって話だぜ。そして、あの王子がいるときは、アーネ様たちは、あまり笑ったりしないようだし』

『ああ、それなら、この前、アーネ様とジェイが抱き合ってたって情報が飛び交ってたよな。あれは、ホントのことか?』

『それよ、それ。どうも火の無い所に煙はたたないってね。そうらしいぜ』

『くぅ~~~~、ジェイの恋が叶う事はないのかよ~~』

『まあ、あのクソが病気で早く死ぬかもよ。今までの王子たちのように』

『おいおい、それは禁句だぜ』

『ああ、やば

 ぷっちん!!


 オレは音声をそこで切った。

 ぷっちんって音は、効果音で入れただけだから、ホントはそんな音はしない。

 って、冷静に説明・・・なにを言ってる、オレ・・ううう・・アーネ・・・やっぱり君は・・・オレ・・・・。


 そうだよな・・・そんなことだろうよ・・わかってたよ・・・もう・・・。

 オレが思ってたことは、やっぱりみんなが思ってたんだな。


 アーネ・・・君は、でもオレのために来てくれたよな、笑ってくれたよな。

 それは、素敵な笑顔だったよ・・・・・・でも、ウソなのか?





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