第83話 再会に乾杯!
「ぼくは、トカラ連合国の弱小国、イスタル国の王子クリスと言います。お久しぶりですね。ちょっと、向こうで話しませんか?同じくらいの歳でしょ、ぼくたち?」
だれ?この人?
お久しぶりって?
どうしようか?
ぼくは、どうしたら良いのか、わからなかった。
この人からは、蔑みでも、嘲りでも、憐みでもない、どちらかというと、楽しい感じ?がヒシヒシと伝わってくる。
すると、アーネが来て、私もお話ししてよろしいですかと訊いてきたので、渡りに船と、彼女を交えて話しを聞くことにした。
「貴女が婚約者のアーネ王女ですね。おウワサ以上のお美しい方ですね!」
「あら、お上手です事。いつも言われます」
ぬぬ、このパターンの挨拶、どこかでよくしてたような・・・?
前世の記憶?かもしれない。
最近、こんなことが昔あったようなって感じることが増えている。
カレンによると、それは前世とかからの体験があるから、みたいなことらしい。
前世は、勇者だったから、よく接していた女性と言えば、聖女たちか・・・。
まあ、誰かなんてわかっても、それがどうしたってことなんだけどね。
でも・・・ちょっと・・・まあ、いっか!
「いや~~、いいなあ、王子はこんな素敵な姫様とイチャイチャできて」
「何を言ってるんですか?あなたも王子でしょ?婚約者くらい、おられるでしょうに?」
「はははは、まあ、今は3人ばかりいるけど・・・3人だけど・・・でも、気の強いのばかりで、アーネ王女のようなお淑やかな方を是非、ご紹介してもらえればここまで来た甲斐があるというものです」
「えっと、ぼくには、そのような
「はははは、何をおっしゃいます。いいですか、女ってのは男のここ!いや、あそこかな?いや、う~~む、まあ、そういう所に惚れるのであって、顔が全てではありませんよ!」
「えっと、よくわかりませんが、そうなんですか?」
「うふふふふ、そうですよ、王子様。いつもお顔を気にされてますけど、そんなの関係ありません。女は、男の顔ばかりじゃなく、ココロを見てますってことですよね、クリス王子?」
「えっ!・・ええ、その通りですよ!あははははは!」
「随分と、話しが弾んでいるようじゃな」
「これは、皇帝陛下。私は、この大国家ガーランド帝国の王子様にご教授頂いているだけですよ。ホントに、お似合いのお二人ですね、閣下」
「ああ、そう言ってくれるか。ワシもうれしいぞ。クリス王子、トカラ連合国の産んだトカラの至宝であり大賢者である、
「いや、そんな大それたものではありませんよ、閣下」
「まあ、とにかく、そんな貴方と懇意にして頂けるとは、トーマ、よくやった、うんうん」
「はい、閣下、ありがとうございます」
「クリス王子は多忙であるので、なかなか話す機会などない。ここはごゆるりと、なさっていただきたい」
「はい、閣下、ありがとうございます」
こうして、ぼくは、アーネを交えて、彼と仲良く話した。
そして、その夜、彼は僕の部屋で寝ると言って、一緒のベッドに入って来た。
アーネはちょっと、すねていたが、そこはクリス王子がうまくおだてて、事を収めてくれた。
そして、ぼくの部屋にて。
「トーヤ・・・いや、今はトーマか・・・ワシじゃよ。ワシ・・わからんか。まあ、前世の記憶がないようだから仕方がない事だが、主とワシは、旧知の間柄じゃった。ワシの前の名前はクリスト13世じゃ。今は亡きサリュート聖教国の聖王じゃ。いいか、トーマよ。お主は前世で勇者じゃった。だが、あのピエールの策略にハマって可哀そうなことになってしまったがのう。お主、ホントにわからんか?」
そう言って、どこに隠し持っていたのか、酒瓶を取り出して、コップに注いだ。
「お主も飲むか?」
「いえ、その、まだ子供なんで・・・そのクリス王子はいいのですか?飲んじゃっても?」
「ははは、もちろんダメじゃよ。よし、お主も飲め!」
「えっ?・・でも」
「あはははは、誰も見とらんし、誰も咎める者などおらんじゃろ?まあ、飲んでみろ。昔は良く飲み合ったものだぞ!!」
それ、前世ですよね?
こうして、ぼくは生まれて初めて、お酒を飲んだ。
魔王になっているので、状態異常には耐性があり、毒に強いので、そんなに酔う事はなかったが・・いや、そんなに・・・ちょっとだけ飲み過ぎて、お昼まで寝ちゃいました。
もちろん、クリス王子も。
侍女たちじゃなく、わざわざアーネが来て、起こされました。
彼女は、ちょっと、ふくれっ面になってたけど。
こうして、また夜には、舞踏会があり、今度は、踊りまくった。
楽しかった。
ぼくは、主に、アーネと踊ったけど、時々、伯爵令嬢とか子爵家の令嬢が踊ってくれたのがうれしかった。
なかでも、セーラっていう伯爵令嬢は、アーネとも仲が良く、ぼくにステップを教えてくれたりして、珍しくアーネ以外の女子と話すことができた。
もちろん、クリス王子は、キレッキレに踊ってた。
彼は、プロ級の貴族令嬢達やプロの踊り子とかとも一緒に踊っているので、腕前はプロ並みだった。
自分でも得意だと言ってたのは、ホントだったので感心したが、ぼくと踊ると言い出して注目を浴びたのには参った。
なんで、男同士が、とも思ったが、それも楽しかった。
たぶん、ぼくの人生で一番楽しかったのかもしれない。
そして、その夜も、二人で酒を飲み明かした。
酒の肴も用意させた。
ぼくは、そういうことはずっと遠慮して、部屋に持ってこさせたりは、お菓子さえすることはなかったけど、こういう事も
アーネには内緒にしとこう。
ところで、聖王というのは、自我を保ったまま魂を転生させるスキルがあるらしく、自分の身体がどうしてもダメになると発動する仕組みになっているらしい。
なんて凄い話だと思ったが、彼が大賢者である理由がよくわかった。
彼の知識は、空学問ではなく、実体験から来るモノなのだから。
そして、彼がこの帝国を去る晩のこと、ぼくに指輪をくれた。
ひとつは、状態異常無効プラス癒し効果が付与されたもので、もうひとつは、この王子との念話が出来るモノだった。
ただ、念話については、魔力の程度やその操作の練度に左右されるため、ぼくにはすぐに使えるものではなかった。
また、状態異常無効のリングも、ぼくには必要なかったが、ここは有難く貰っておいた。
そして、彼は、ぼくの味方であり、いつでもピンチの時には駆け付けてくれると約束してくれた。
とはいっても、遠い国のため、すぐには来れないけどね。
また、今度、アーネと結婚するときか、彼が結婚するときにはお互いを招待する約束をした。
そして、彼とは、王国のピエール打倒を密かに誓い合い、リングのお礼を言って、別れた。
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