第54話 ソフィア=ファーガソン

オレは、やっと、フランツ王国へ着いた。


時々、魔獣を倒したりして、その素材を商人が買い取ったりしてくれたこともあり、意外とお金は減らなかった、と言うより増えた。


俺はフランツ王国の王都に到着すると、真っ先にあの小料理屋へ行った。

そして、女将さんの紹介でその近くの安宿に泊まって、そこを活動拠点にした。

聖女たちが帰ってきてオレに会いたければ、まずはこの小料理屋に俺を探しに来るだろうし、聖女たちを探そうと思えば探せるので、とりあえずは、王国には帰国の報告をせずに、自己の能力を高めようとした。


のだが、シモンに直ぐに見つかり、呼び出しを受けた。


そこで俺は、2つの手紙を受け取る。


よかった!

サーヤ、怒ってなかった!

オレも愛してる!

魔王倒したらすぐに会いに行くよ!

そしたらすぐに結婚だ!


ルーシー、絶対幸せにしてやる!

魔王倒したら、ちゃんと結婚しよう!

サーヤのことも気にかけてくれていてよかった。

やはり、ルーシーは優しい。

大好きだ!


と、頬を緩めながら、オレは何度も手紙を読んだ。


シモンからは、資金的な援助の申し出もあったが断る。


なぜって、シモンやピエールが嫌いだからだ。


シモンからは、とにかく今は魔王を倒す事だけを考えろと、何度も言われた。

それから、聖女たちには絶対に手を出すなと言われた。

彼女たちは処女であるがために聖女の力を得ているからだと、これも何度も言われた。

もう知っているけどね。

サーヤにも、手紙で言われていたが、もちろん聖女たちには手は出さない、しかし、口は出すことにしている。


あいつら、帝国の奴らにいいように利用されているが、確かに聖女の務めもあるだろうが、まだまだ訓練しないといけないから、いい加減に切り上げて早く帰って来いと思っていた。


そうして、1ヵ月が経ち、やっと彼女たちも帰ってきた。


帝国へは長い遠征で結局、旅発ってから5ヶ月以上かかってしまった。


ト「おう、やっと帰ったか!」

ソフィー・エリー・アヤカ「・・・・・」

2人は久しぶりに見るトーヤの姿に、改めて絶句した。


ソ「もう大丈夫なの?痛くない?」

ト「えっ、ああ、何ともないよ」

エ「会いたかったよ」

そういうと、エリーは、抱きついてきた。

ア「な、なにを抜け駆けしてるのよ!」

そういうと、アヤカも抱きついてきた。

ア「トーヤが居ないと、わたし、ダメなんだからね」

そういうと、アヤカは泣いた。

これが伝染したのか、みんな泣き出した。

そう言えば、あの戦いの後、コイツらのとこに行った時も、泣かれたっけ?


ト「なんだよ、まだ、魔王との戦いはこれからだぞ」


ソフィー「遅くなりました。ごめんなさい」

エリー「訓練しないとね。トーヤ、また、教えてね」

アヤカ「あの帝国の人達、フランツ王国より待遇が良くて、気味が悪かったわ」


そういう3人は、とてもきれいになっていた。

着ているもの、匂ってくる香水の香り、化粧の仕方、髪の毛のセットの仕方などなど、帝国風になって、垢抜けていた。


そういえばコイツらまだまだ成人したばかりだもんな。

普通の女の子なら着飾って友達や恋人と仲良く遊んだりお茶をしたり、いちゃいちゃしたり、たまにはのんびり旅行したりと、遊びたい盛りなんだろうなぁ。


めっちゃオシャレになったけど、たまにはこんなのもいいんじゃないかな、とオレは思った。


まあ、眼福?とか、特殊能力が言っているが、何それ?知らねーよ。


それから1ヵ月間、訓練を重ねた頃、魔人と魔獣の討伐命令が下る。


場所は、ソフィーの故郷方面の為、皆んな心配だった。


国王とは謁見せずに、シモンから話しがあった。


王国魔導師部隊、王国騎士との混成部隊での討伐だ。

オレは、やる気を出していた。

もちろん、早く魔王を倒したいからだ。

王都から5日くらい行ったところで、仮の本部を置き、情報収集と作戦会議が開かれた。


オレは、そこで、王国魔導師筆頭に会う。

王国騎士団長のルーカスとは、今回も会わなかったが、魔導師部隊は、わざわざ、筆頭自らが任務に当たっていた。


ザ「王国魔導師筆頭ザピエルと申します。以後お見知りおきを」

ト「勇者トーヤです。こちらこそよろしく」


ザ「勇者様はこの前の戦いで負傷なさったけど大丈夫ですか?」

ト「問題ありません」

ザ「私思うんですけどね、勇者様はよくやっておられますよ。この前貴方と一緒にやって来たシオンがね、ああ、貴方のお母様ですね、私と同期なんですがね、彼女からよろしくと言われてましてね、貴方のことを注目して見ておりました」

ト「そうですか、母さんと同期ですか」

ザ「もともと彼女の方が才能がありましてね、私なんか、彼女の宝石のような輝かしい才能に比べたら、その辺の石ころか雑草でしたよ。今では彼女と同じ位に頭のてっぺんが輝いてますけどね、あはははは?ここ、笑うとこですよ」

ト「・・ははは、面白い人ですね」


ザ「ええ、魔導なんか極めようと思ったらね、心がどうしても暗くなるんですよ。だからですね、いつも明るく、これが私のモットーなんですよ。国王ピエール様も、私と同様、国のことをいつも考えていたら頭がおかしくなりますよね。だから、私と同様いつもジョークを飛ばしていたんですけどね、この前変な剣を手に入れちゃいましてね、それからピエール様は人が変わりましたよ。シオンの子の貴方だから、ぶっちゃけて言うのですから、ここだけの話ですよ。国王には気をつけてくださいね。私は、魔導師筆頭をやめようと思ってます、もちろんここだけの話ですよ」


ト「私は勇者だから聖剣を持っています。この前、この聖剣が反応したんですよ。その変な剣、魔剣でしょうか邪剣でしょうか?に反応して、聖剣が光り輝いてガタガタと動いたと思います。こういう剣は、互いに共鳴しあったり、引き合ったりするんでしょうか?」


ザ「そうですね。魔王が使う魔剣、勇者が使う聖剣は、それぞれ引き合うと言う話を読んだか聞いたかした覚えがあります。ですから国王が手に入れた剣は、それらに匹敵しているものかもしれませんね。いずれにしても、要注意ですよ、勇者様」


オレ達は、真面目な話から馬鹿な話まで色々と話した。

ザピエル、名前からして面白いけど、話をしてもやたら面白い。

オレはこの遠征が退屈なモノにならなくて良かったと思った。


それからわれわれは魔獣と魔人の討伐を行った。


魔人達は、魔獣を魔法で操り攻撃を仕掛けて来たが、我々勇者パーティーのレベルが上がったから、広範囲魔法でも魔獣の魔核に的確に魔法を当てることができるようになった。


魔核の在り処が、それぞれの聖武具と会話が出来る様になって、みんなわかるように訓練したからだ。


それに、光の聖剣を100以上出現させることができるようになったアヤカとオレは、魔獣や魔人を瞬殺していった。

エリーは、ソーラービームをこれも100以上、一度に出せるようになった。


ソフィーは、結界の範囲を広くしたり、更に何層も重ね掛けが多く出来るようになり、天羽も100くらい出せるようになった。

それで、天羽は防御にも使えるようになった。


皆んなが成長していた。


そして、我々勇者パーティーは、討伐後、ソフィーの故郷へ向かった。


なんだ、やっぱ、田舎じゃん!

そうして、我々は、ある孤児院へ行った。

彼女は、孤児院出身だからだ。

因みに、婚約者もそうだ。

生憎、婚約者はいなかった。

しかし、教会のシスターでもある院長先生が居て、ソフィーは、彼女と抱き合った。

我々は、王国や帝国のお土産を渡した。

オレは王国の小料理屋の女将が焼いた焼き菓子を、彼女達は帝国で売り出し中の色々なお菓子や服、それと金貨の入った袋を渡していた。


コイツらは、リッチになっていたのだった。

特に、アヤカは商売人の娘だから、商才があるらしい。


それから、オレ達は、施術院へ行った。

ソ「ただい・・・・」

そこで、ソフィーは固まっていた。


オレは、不審に思い、中を覗いた。


そこで見たのは・・・。



そこで見たのは、隅の広いベッドで裸の若い男と、ムネをはだけた教会のシスターらしい女性とオレと同年齢くらいの若い裸の女性3人とが、激しく抱き合い、キスをし、足や手を絡ませ、ムネを揉みしだき、腰を振っている姿だった。


オレ達の存在に気づくことなく、彼等は行為に耽っていた。


ソフィーは、「イヤ」と小さく叫ぶと、目に涙を一杯溜めて、外へ出て行く。

オレの手を引き、「見ちゃダメ」と言って、走り出した。


アヤカもエリーも、訳がわからず走って付いて来た。


ソフィーは、いい加減走り終わると、うずくまり、ワアワアと泣いた。


えっ、この、こんな泣き方するのって思ったら、なにやら可哀想に思えた。


あー、コイツらの婚約者って、ろくなのがいねーなって思い、溜め息が出る。


どーすんだよ、これ!

オレは、勇者として、どうしたものかと、難しい難題を背負った気がして、泣き止んだソフィーに言う・・言おうとした。


ソ「トーヤ、勇者だよね!」

ト「ふへっ?」

変な声が出たじゃねーか!

何をこの娘は、言っている?


ト「も、もちろん、えっと、多分、勇者だよね?」

ソ「だったら、責任、取ってくれるよね?」

ト「はい?」

オレは、またしても、責任をとらなければならなかった。

コイツらは、誰から教わったか知らないが、聖女の困った出来事は、勇者が責任を持って対処しないといけないという、オレにとっては非常に厄介な条文があるのを知っている。

そのかわり、勇者には勇者特権が存在するという事も。



そして、オレは、またもや、溜め息をつくのだった。


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