第30話 聖女の処女性と勇者の責任②

 オレは、明日、エリーと聖騎士の人たちに会うことになった。

 今回は、予め、勇者として、聖騎士の代表とか、エリーの婚約者とかに会うためのアポをとったのだ。

 まあ、を取らないとな・・・でも、何の責任かはわからんが。


 そういうゴタゴタが、目覚めてすぐに起こったので、オレは今までのことを整理しようと、風呂につかりながら考えた。


 まずは、エリーが何かの剣を手に入れ、オレに感謝したこと。

 次に、聖女たちは、まだ処女であるらしいこと。

 ソフィーなんか、キスに拒絶反応しているみたいだし。その理由はまた聞かせてくれるらしいが。

 そして、サーヤは、ひょっとして、寝取られていないかもしれないという可能性・・・あくまでも可能性があること。

 でも、他のヤツと違って、あの男とキスをしていた・・・それをエリーに訊かねばならないこと。

 エリーの婚約者イカクサイだっけ?ソイツが体臭が酷い・・じゃなくて、どうやらエリーの他にも婚約か、ハダカの付き合いをしているらしいこと。

 エリーは、それにショックを受けた?ようで、泣き出したこと。


 えっ?なんか、いろいろあるな・・・。

 でも、もし、サーヤがオレを裏切っていないのなら、オレは、あの婚約破棄の手紙・・・・あっ!!そうか!!もしかして、オレの勘違いで婚約破棄を一方的に言われたので、ショックを受けてオレには手紙を書けなかった?


 それは・・・まずい・・・でも、あのキスとか、あそこで笑い合うとか・・・ないだろ!有り得ないよ!他にも婚約指輪も外してたし・・・・・。


 オレは疑心暗鬼になって、思考の迷路に・・・・・。


「いや~~~~ん、だめよ~~~~」

 またかよ!!あのじじい(聖王)!!

 わかってんだからな、こっちは!

 オーラが赤紫になってるし、このスケベじじい!!


 オレはじじいの所へ行った。


「おう、また会ったな、勇者よ」

「じじい、なにが、おうだよ。いいかげんにしろよな!」

「お主、先代の勇者よりもエラそうじゃな、ふふふふ、まあよい。ちょっと、勇者に言っておかねばならんことがある」

「えっ?なに?」


「それは、聖女たちのことじゃ。お主、あのらに手を出してはおらんじゃろうな?うん?」

「そんなことしねーよ」

 なにが言いたい、まさか、じじいが聖女を欲しがってるとか?


「よいか、よく聞くのじゃ!あの娘らは、まだ処女であろう?なぜなら、処女でないと聖女にはなれんからの~」

「えっ?そうなんだ!」

「そしてじゃ!処女でなければ、聖なる力を発揮できんのじゃ!だから、勇者よ、お主はあの者達の純潔を守らなければならんのじゃ、わかるな?」


「・・・・でも、彼女たちが勝手に処女を捨てたら?」

「その時はその時じゃが、メンドクサイことにならんように努めるのが勇者であろう、だから、聖女たちをうまくコントロールせよ!それなくしては、魔王は倒せぬ!」


「わかった、じじいの言うとおりにする。だけど、聖武具は渡してほしい」

「エリーは手に入れたようじゃな、あとは我に任せよ!では、風呂から上がって、酒を飲もうか、勇者よ!」

「じじい、話しがわかるじゃねーか!」



 ということで、オレは今、じじいと酒盛りを始めていた。


 ジ「勇者よ、名前は何と言ったかのう?」

 ト「トーヤです」

 酒を奢られ、丁寧語になるオレ。


 ジ「トーヤか・・良い名じゃな。昔の勇者にタケルという者がおっての、良いヤツじゃった」

 ト「はい、それで?」

 ジ「うむ、それだけじゃが」

 ト「いやいや、そのタケルってひと、どのくらい前の人です?」

 ジ「先々代の勇者じゃよ」

 ト「えっ??じじい、あんた、何歳だ?」

 ジ「25歳」

 ト「そういうのはいいから」

 ジ「うむ・・・わからん」

 ト「急にモウロクするなよ」

 ジ「だから、ホントに知らんのじゃ」

 もう面倒くさいので、で喋ってしまった。


 ト「まあいいけど、今までの勇者の話を聞かせてほしいな」

 ジ「まずは、先々代からかのう?何と言っても、先々代の勇者が最強じゃったからな。そして、ワシと同じでイケメン。モテまくってたな。ワシは、嫉妬したぞ。ワシの婚約者もアイツに寝取られていたし、ワシの娘も寝取られていた」

 ワシになってるし、でも、同じイケメンなら、寝取られねーよな!

 えっ?婚約者と娘?このじじい、何人の妻がいる?


 ト「えっと・・・最強って話は、そっちの方面の?」

 ジ「そっちもだが、まあ、でも、まずはそういう話からせんと、この勇者を語ることはできん」


 こうして、オレは、勇者の話しを聞いた。

 先代も、先先代も、魔王討伐後が哀れだった。

 このジジイの覚え間違いとかあるかもしれないが、勇者になってから、誰もオレに先代の勇者の話を聞かせてはくれなかった。

 だから、話はとても興味深いものだった。


 先代の勇者は天才で天災と言われたらしい。じじいによると、口と態度が悪いから誤解されたらしい。

 先先代の勇者は努力と天才の人で、誰もが認め、惚れてしまう人柄と顔だったらしいけど、なぜ死んだ?殺されたのか?

 でも、最強が殺されるとか、あり得ねー。

 昔すぎて知る由も無いが、何か事情があるとしか思えないし、じじいもそう言ってる。


 ジ「トーヤ、お主は何も教えてもらってないようじゃな。何故かはわからんが、どうも、その辺のところ、意図的に教えてなさそうじゃな。フランツ王国のピエールには注意した方が良いぞ。これはな、飲み友達のお前との仲だから忠告しといてやるぞ。あやつは怪しい。何せこういうカンだけはワシは鋭いからのー」


 多分カンだけで生きてきただろう聖王が言うからには本当なのだろう。


 そして、どうやら、オレは飲み友になったらしい。

 じじいは、もちろん権力とか金を持っているから、良い酒とか美味いモノが食べれてオレとしては大歓迎だ。

 ただ、ダジャレをそれなりにヨイショしてやらないとスネるけどな。


 ト「俺もピエールが怪しいと思っていたんだ。アイツを見る聖女たちの顔はいつも赤いから、不思議だったんだが、どうやら何か裏があるような気がする」


 ジ「・・・・・ピエールは、ジョブ無しじゃったはずじゃが・・・」


 そこへ、酒と肴を、可愛い女の子が持ってきてくれた。


 ジ「おお、来たか!エミリ!」

 ト「!・・彼女は、あの時の魔族では?」

 エ「エミリと申します」


 彼女は、暗い表情で、酒を注ぐ。

 ジ「この子をお主に託す、トーヤ」

 ト「えっ、なんで?」

 ジ「だから、土産じゃ!このには奴隷紋が刻まれておる。安心せい!」


 ト「だから、なんで?」

 ジ「お主、聖女には手を出せないじゃろ。魔王倒すまでこれからずっとな。それはちとかわいそうだと思ったのじゃよ。遠慮せずとも良い、お前の顔に書いてあるぞ。幼そうなのに、いい身体をしているとな、くくくく」


 ト「いえ、あのう、オレ・・・」

 ジ「なんじゃ、お主、まさか童貞か?」

 ト「いえ、もう卒業しました」

 ジ「だったら」

 エ「だったら、私を勇者様の奴隷にしてください!」

 ト「えっ?」

 エ「全力で奉仕しますので、よろしくお願いします」

 顔を真っ赤にして、ちょこんと頭を下げる。

 そして、オレを見る目は決意を秘めた目だった。


 えっ?

 何が、だったらなんだ?

 いやそういうことじゃなくて、全力で奉仕って!

 この娘を奴隷に・・・・。


 いやいやいや、それはないだろ?


 ジ「トーヤ、オレのカンがこの娘をお前に仕えさせろと言ってる。ワシを信じろ」

 ト「じじい、オレはあんたを、信用はちょっとだけはしてるけど、こればっかりはまずいんじゃね?」


 ジ「トーヤ、勇者とは、何ぞや!そして、真の勇者とは、何ぞや?」

 ト「えっ?・・勇者とは・・・勇者とは・・」

 ここで、オレは勇者でなかった場合を考えてしまった。

 いや、ふつう、そうじゃない場合、つまり反対のことを考えて比較し正答を導くってのは、基本でしょ。そして、現状認識を鑑みて正答により近づく、基本でしょ。


 ト「愛する人と結婚し幸せに暮らせるという自分の幸福を犠牲にして、人間族のために、例え、死ぬほどの修練という名のイジメにあっても、勇者パーティーとか言われながらパーティーに出席したら誰も勇者と分かってくれなくても、他のパーティーメンバーに弱いし田舎者と侮蔑の眼差しを向けられようとも、オレが血反吐を吐く修練をしている毎日なのに聖女たちは着飾ってイケメン貴族とイチャつく毎日であろうとも、自分の恋人が寝取られようとも、歴史上最弱だと罵られようとも、食事は聖女たちは毎日宮廷料理人が作る豪勢なものだがオレは騎士宿舎の食堂のおばちゃんが作ったものであろうとも、などなど・・・魔王を倒すという崇高な目的を心に刻み、自らの命を投げ出す覚悟がある者のこと・・・かな?」


 ジ「・・・お主・・・それは・・・わしが知っている勇者の中で、最悪・・・トーヤよ、ワシはお主のことを見誤っていた!」

 ト「えっ?」


 エ「なんという・・・勇者様・・・わたし・・・私も見誤っていました・・・」

 二人とも、目に涙をためて、憐みの籠った?目線を向けてくる。


 ト「えっ??」


 オレ、やっちまった?

 いや、オレ、また、バカにされてる?

 つまり、あの回答では、ダメってことか?


 だが、ウソ偽りは言ってねー!


 えっ?そうか・・・正解は・・・・・・




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