第28話 試練、試練、試練!②
ク「勇者よ!まさか、怖じ気づいたか?」
ト「オレは勇者だ!試練は望むところだ!」
ク「では、入ろうか!」
聖王と並んで入るときに一言。
ト「ジジイ、貸しひとつな?」(小声)
ク「うむ、土産を用意しておく」(小声)
聖女達も一緒に入った。
そしてオレだけが、部屋の中央の赤いサークルの中に立たされた。
そのサークルは、魔方陣となっていて、聖王が何かを唱えると、光り輝いた。
その瞬間、オレの目の前が、暗転した。
真っ暗闇となり、自分は床の上に立っていることさえ、あやふやになり、空間把握や皮膚感覚、さらにすべての知覚が麻痺したようになり、オレは剣を掴むこともままならなかった。
そう思っていたのもほんの数瞬に過ぎず、どこから攻撃されたのかもわからず、オレの右腕が切り飛ばされた。
それでも痛いという痛覚も麻痺しているようで、痛くなかった。
オレは目を瞑り、グラディウスと呟く。
次なる斬撃がオレを襲う。
利き腕の右手がやられているので、いきなりのピンチだ!
が、左手のグラディウスがそれを
オレは、聖剣グラディウスに自我の意識を委ねたのだ。
これは、ルーシーではなく、グラディウスを抱きながら寝ている時に思いついた方法だが、このようなオート機能が働くのがわかったのは最近の事で、まだ他にもありそうな気がしている。
オレは、さらに、敵の剣を弾くのではなく、敵の剣に沿わせるように、剣先を滑らせてその向こうにいるであろう敵へ魔力を込めた衝撃波を浴びせた。
手ごたえは・・・・なかった。
???
オレは、グラディウスに問いかける。
敵はどこだ?
グラディウスは応えない。
敵の場所が分からなければ、攻撃出来ず、防戦一方のジリ貧状態だ。
何か、打開策は?
そうしてる間にも、敵の攻撃は続く。
このままでは・・・・・。
やはり、この聖剣の力を引き出すしかない。
オレの魔力はとっくに捧げた・・・オレの意識もお前に・・なら、最後は・・・・・。
オレは、意識とかじゃなく、自分の心を聖剣と一体化するように、聖剣と自分の気持ちを同化させようとした。
どうか、お前の声を聞かせてくれ!
しかし、足らない。
まだ、足りない!
まだ・・・・・よし・・・ならば・・・・。
意識とか心を集中して一体化とか、そんな事ではダメだ!
オレは、あの日・・・サーヤがアイツと大人キスしたのを見た日、あの教会で、あの女神像の前で、無心に祈った。
それを思い出せ!
集中とか作為的な気持ちではダメだ!
無心・・・何も考えずに・・・ただ聖剣に、オレを・・・オレの全てを・・・・。
そうだ、全てをだ・・・・・何も・・利用しようとか、操ろうとか、オレのモノにするとか、そんな邪念を捨てて、無心に・・・・・・・。
オレは、もっと、もっとだ、と呟く。
そうだ、もっと・・・もっと・・・心が・・・魂が・・・すべてが・・・。
オレのこころは、波打たなくなり、静かな水面の様に・・・何も映さず、何も動かず・・・静謐に・・・・それらの心象風景もやがて消え・・・何も考えない・・・何も想わない・・・・・・ただ、聖剣とここにいるだけ・・・・それすらも意識しない、心にも浮かばない・・・・・・・・。
オレは、自分の意識だけではなく、自分の心だけでもなく、自分の存在そのものを聖剣に委ねたのだった!
その時、聖剣が輝いて、力強い波動が伝わった。
その時、オレにあの声が
『ついに辿り着いたか、今代の勇者よ』
『お前は、あの時の』
『そうだ、我が名はアノン、この聖剣グラディウスを統べるモノ』
『グラディウスを統べるだと?』
『そうだ、これからは、我が名を呼べ』(我が名にたどり着いたのは、これで5名か?この勇者、この先、先々代の最強勇者の境地に至ることができるか、見届けてやろう)
「アノン!」
その名を叫んだ時、オレに敵の姿が見えた。
『魔王の姿だ』
そうか、あれが・・・・。
「いくぞ、アノン!」
オレはそう言った瞬間、同時に剣を振っていた。
そして、オレの目の前には、大上段から切り裂かれた魔王がいた。
まるで瞬間移動したように、行くぞと言い終わった、まさにその時に魔王の眼前に移動し、剣を振り下ろしていたのだった。
これが、剣帝や剣聖?、剣の聖女が使うであろう瞬歩か?いや、もっと速い?
魔王は、光の粒となって、かき消えた。
そして、オレは、意識を失った。
オレは、ベッドの上に寝ていた。
エ「あっ!目を開けた!!」
ソ「えっ!トーヤ!!」
ア「ほえ?あっ!トーヤくん!!」
アヤカも寝ていたようだな。
アヤカは眠たそうに、ソフィーナは安堵の表情で、エリーは・・・・なぜか・・・大事そうに剣を抱えていた。
ト「その剣は、どうしたんだ?」
エ「トーヤがくれた」
ト「えっ?オレが?」
エ「えへへへへへ」
ト「どういうこと?」
エ「そういうことだよ♡」
ソ「そういうことよ、トーヤ」
ト「・・・・・・・・」
ソ「だまらないの!」
ア「トーヤは突っ込み専門にならないと・・・キャハ!」
なにが、キャハ、だ!!つまらね。
エ「ありがとう、トーヤ、私のために戦ってくれて、大切にする。それと・・・・」
エリーがオレのほっぺたにチューをした。
えっ?なに?どうした、エリー??
ソ「やっちゃった・・・・」
ア「・・ズルイ・・・」
ソ「どんな気持ち?ねえ、どんな気持ち?」
えっ?何だ?ソフィーナが顔を赤らめて、問い詰める。
なぜか、目覚めたら、新たな試練が発生した。
ああ、この流れは・・・ボケるしかねーか?
ト「えっと・・幸せな気持ち、とか?」
しまった!!ボケてなかった!つい、本音が!!
ソ「そうなんだ・・・そうなんだね・・・そうなんだよ・・・そうだ、今度は・・・・今度こそは・・・・」
なぜか、ソフィーナはブツブツと言ってる。
ア「ソフィーが壊れちゃったじゃない?トーヤくん、ダメだよ。ソフィーはキスしたことないんだから、そこは経験者として、うまいボケが欲しかったよ!」
ト「・・そうだったんだけど・・・なんかごめん」
ソ「いいのよ。でも、エリー、あんた、婚約者がいるんでしょ!」
エ「いるけど、それが?」
ソ「あんた、婚約者に悪いとか思わないの?」
エ「ううん、なんで?」
ア「ソフィーは、キスに神経質すぎるって!」
ソ「えっ?私の方が常識知らずなの?ねえ、トーヤ、どうなのよ!」
はあ?知らねーよっていうか、ソフィーナ改めソフィー、実は処女なのか?なんか、ビッチとか心の中で言いまくってたけど、キスとかホントにしてないのか?風呂場で聞こえてたけど、アレは冗談だと思ってたよ。
ト「そうか、ソフィー、悪かった(ビッチとか思ってて)!お前ら、ソフィーのいう事が正しいぞ!いくら経験者でも、処女のソフィーをからかうのは、もう、止めてやれよな!」
ちょっと、カマを掛けて言ってみた。
ア・エ「わたしも、処女なんだけど!!」
ト「えっ?えーーーーーーー!!!!」
またしても、衝撃の事実にオレは、ベッドに倒れこんだ・・・もともと寝てたけどね。
右腕が無事だったことを後ほど気付いたオレだった。
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