第27話 試練、試練、試練!①

 聖女たちと全員同室になりそうになったが、それぞれ個室にするように言う。


 部屋で着替えた後、お付きの女官がお風呂場へ案内してくれた。

 ゆっくりと湯船につかり、俺はゆっくりと自分の魔力を練る。


 そういうことをしていたら、湯船の反対の端の方から声が聞こえてきた。


 あれ?

 アイツらの声じゃね?


「ヤダー!そんなに触らないでよー」

「いや、これは、堪らん!」

「何してるの?もう、そんな事、しない!ダメよ!」

「ソフィーは、お堅いよね。だから、キスも出来ないんだよね!」

「べつに、キスとか、愛には関係ないし」

「「えっ??」」

「だから、処女なのよ!」

「だから、ビッチなのよ!」

「??なんでわたしがビッチって言われるの?」

「だって、愛のないキスなら、誰とでもできるってことでしょう?それに、いやしの聖女だしー」

「そうそう、いやらしい聖女だしー」


 ああ、うるさい!!


「おい!お前ら、うるさいぞ!」


「キャーーーーーー」

「イヤーーーーーー」

「アホーー!ーー!」


 なんか、ひとりだけ、アホって言った!

 まあ、だいたい、アイツだろうけどな!



 翌朝、勇者パーティーのメンバーで朝食を囲んだ。


 ソ「トーヤ、大丈夫? 試練だなんて!私が傷を負った場合は癒してあげるからね!」

 ト「ああ、嫌だけど頼むわ」

 ソ「お茶目な人、大丈夫そうね」


 ア「ホントに、ウチのか弱い勇者に、何をやらせるのかしら。死なないでね、トーヤくん」

 ト「死んだら、どうなるんだ?」

 ア「許さないわ!カタキを討つわ!」

 アヤカ、オレ、お前を誤解してたかも。


 ア「わたしの大切な・・・お・・も・・ちゃ・・なんだから!!!」

 ああ、知ってた、そういうオチつけてくるの。想い人とか、ちょっとだけ想像したけど。


 エ「わたしがこれまで、身を粉にして鍛えてやったが、惜しいヤツを今日亡くすのだと思うと、やるせないわ」


 ト「死なないから」

 ソ「死相が出てる?」

 ア「くるしそう?」

 いいから、そういうの!


 エ「あーあ!お葬式のミサ曲、まだ覚えてないよ」

 ソ「そうなの?」

 ア「わたしのとこ、神教だから、お数珠がいるわ」

 ソ「そうなの?」

 おい、そうなのばかり言うな!


 ト「葬式はオレの村でやってくれ!」

 ソ「村まで遠いみたいだから、そこまで氷漬けで運ぶのに、お金がかかるよ」

 ト「そうなの?」


 こうしてオレは、葬式の手配を整え・・な訳ねーだろ!

 コイツら、オレは弱いとホントに思ってるようだな。


 エ「食べたら、最後の訓練をつけてあげる。最後だから手加減はしないぞ!」

 いつも手加減なんかしてねーじゃん。


 ア「優しいね、エリーは。じゃあさあ、私は、特大魔法メガクラッシュをお見舞いするわ!」

 目がクラッシュ?眩しそう・・・とか、ボケねーからな!


 ソ「じゃあ、私は、トーヤにデバフをかけるわ!」

 コイツら、オレを殺す気か?


 ト「ありがとう、みんな!みんなの気持ちは嬉しいよ。でも、最後なら、身体を清めたいから、風呂に入ってくるよ」


 こうして俺は、俺のことを気遣ってくれるフリをする聖女たちに別れを告げて、風呂に入った。


 ここでまた魔力を練って、身体に纏わせたりしていた。


「いや~~~ん、もう、エッチなんだから~~~」

「エミリちゃ~~~ん、こっちの方も~~~」

「ああ~~~ん、そんなとこ、えいっ!!」

「ひひゃ~~~、そこそこそこ~~~」


「はい!おわり!」

「ええ~~~~、もっとしてよ~~~」

「ダメ!また今度ねっ!!良い子にしてたら、してあげる!」

「ぜっっっったい、良い子にしてるから~~~~」


 誰だ?

 湯煙で見えないが、オレと反対の場所で、ナニをしてる?


 オーラを見たら、あの聖王だった。

 コイツのオーラは、濃い紫色なので、すぐにわかる。

 しかし・・・・オレは、瞬時にエミリという女の所に移動すると、手刀を首筋の急所に当てた。

 エミリは崩れ落ちた。


 エミリという女の頭の両側に可愛いツノが現れた。


 ク「な、何者だ?エミリちゃんをどうした?」

 ト「このモノは、魔族です」

 魔族のオーラは、金色に輝いている事が多いが、コイツは、魔力で頭のツノを隠していたので、分かり易かった。


 ク「うん?お前は、勇者!」

 ト「前を隠してください」

 ク「ああ・・・見ちゃった?」

 ト「いえ、小さくてわかりませんでした」


 ク「くくくくく・・・見事だ、勇者よ!ワシの試練に、まずは合格だ」

 ト「えっ?試練だったのですか?」

 ク「くくくくく、当たり前ではないか!ワシを誰だと思っておるか?」

 ト「聖王様です」

 ク「うむ、で、つまり?」

 ト「つまり?」

 ク「ゲホゲホゲホ!ノドにました・・ってくらいは言ってほしかったぞ!」

 ト「そのダジャレ、ませんね、意味不明だし」

 ク「・・・・ほお~~・・・なかなか、お主、やりよるな!うむ!」


 ク「さてと、もう朝飯は食べたであろうな?」

 ト「はっ!」

 ク「うむ、では、これより着替えてから、案内の者に案内させるので、早く着替えよ」

 ト「はっ!」


 聖王・・・このジジイは、たぶん、バカだな。

 オレは、そう確信した。



 ク「うむ、ここが試練の間じゃ!勇者よ、ホントにいいんじゃな?」

 おいおい、やっぱ、さっきのは違うじゃねーかよ!


 ト「これが最後の試練なんですね?」

 ク「うむ、そうじゃ」

 ト「ほんとに最後ですね?」


 ク「勇者よ!まさか、怖じ気づいたか?」

 ト「オレは勇者だ!試練は望むところだ!」

 ク「では、入ろうか!」


 聖王と並んで入るときに一言。

 ト「ジジイ、貸しひとつな?」(小声)

 ク「うむ、土産を用意しておく」(小声)


 聖女達も一緒に入った。















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