第26話 サリュート聖教国の秘密

 ア「まあまあ、で、ソフィーも言うように、幼馴染あるあるってあるの知ってる、トーヤくん?」


 ト「知らねーよ、なに、それ?」

 ア「幼馴染を持つ女の子には、常識なんだけどね、ソフィー、エリー?」

 ソ「うふふふふ、でも、そうね・・・」

 言葉を濁すソフィーナ。

 エ「えっ?知らないよ」

 知らねーのかい!エリーは!なんか、はじめて、親近感が沸くぞ!


 ア「あのね、幼馴染の恋人って、結局、破局を迎えて一緒にはなれないのよ」

 それは、オレにとって、爆弾発言にも等しい衝撃を与えた。

 オレは、剣聖のことを忘れよう、忘れようとしていたが、実はまだ未練を残していた。

 そして、この言葉は、呪いの様に、オレの脳裏に深く刻まれた。


 ア「でもね、私たちみんな、婚約者が幼馴染なんだ。だからね、こんなの絶対当てにならないんだからね!」

 まるで、自分に言いきかせるように、アヤカは言った。

 コイツ、婚約者とうまくいってねーのかな?

 いや、お前、こっちにきて、貴族とヤリまくってるから、自分で言っといて墓穴を掘ったんじゃね?そういう顔してるよ、これ!


 なぜか、ソフィーナもエリーも、この時は、思案顔となっていた。

 つまり、お前らも同類か?同じ穴のムジナって、特殊能力がうまいこと言ってるぜ!同じ穴って・・・・いやいやいや、いかん、ここでそういう妄想をしてはこいつ等の思うツボだ!!(どう思うツボなのかは、わからんが、そういうことだ!!)


 エ「はははのは!もし、アイツが裏切ったら、私も婚約破棄なのじゃー!そして、トーヤの嫁にでもなるか?まあ、仕方ないよな・・ボーヤ?」

 おまえ、トーヤって言おうとして、ボーヤに切り替えただろう?

 ってか、なんで剣術バカのコイツがオレと結婚するんだよ!


 ア「えっ!ずる~~い!私も、トーヤをキープね♡」

 はあ?キープ?おれ、酒場の酒瓶?いやいや、ボケてる場合じゃねーぞ!


 ソ「うふふふふ、じゃあ、みんなでキープしましょうよ!」

 はあ?おもしろくねーぞ、ソフィーナのジョークは!いや、これ、みんな、ボケをかましてる?・・・・ああ、そういうノリか~~~!!こいつ等、次のセリフ・・・オレの次のセリフに期待してるな・・・こっちを見る目が期待に震えてやがるし・・・ここは、男トーヤ、きっちり、ボケます!!


 ト「はははのは!仕方がねーな!いいよ、オレ、みんなまとめて面倒見るから、安心しろ!」


 ア「うわ~~、さすが、勇者の称号は伊達じゃないよね~~、お姉さん、感動!」

 エ「なかなか、骨があるボーヤじゃない。キープくんだけど、ぷぷぷ」

 ソ「では、お願いね、トーヤ!キープだけど、よろぴく」

 ソフィーナ、おまえ、早く忘れろ、そのよろぴくは・・おまえ、使ってやろうと覚えてただろ?悪い顔してるよね、してるよね!

 エリー、お前には、やっぱりがっかりだわ、ボーヤっていうのを止めろ!

 アヤカ、意外と、良いヤツかもな。

 他2名は、キープくん扱いになっちまったし・・・勇者なのに・・・。


 ア「もう、トーヤは、キープくんとして、私たちを大事にするんだよ。荷物持ちとか、話し相手とか、肩をもむとか・・・役得じゃん!」


 はい、前言撤回!コイツもダメ聖女だったわ!

 えっ?聖女がこんなんばっかで、大丈夫・・・なわけねーだろ!!


 オレが頭を抱えていると

 ソ「ね?トーヤって、面白いでしょ!」

 ア「そうね、弄りやすい体質のヒトだわ!」

 エ「そうね、まだまだ面白い話が聞けそう!旅行が退屈にならなくてよかったよ」


 オレ、そういう体質なのか?

 オレ、まだまだ、こいつ等と話さなくちゃならねーのか?

 オレ、ふつうに訓練とかのほうがマシなんだけど。


 ここで、オレは、思った、いや、思いついてしまった!

 こいつ等と話すことは、実は、こころの鍛錬になると!

 そうか、そういうことなんだ、だから、女と一緒の馬車で移動するのか!

 これも、勇者の力を強化するプログラムの一環なんだな!



 サリュートは、首都まで五日かかる。

 もともとは、フランツ王国の領土だったから、比較的近いのだった。

 で、その間に、エリーからサリュートの話を聞く。


 聞くのだが、コイツ、剣術ばかりしてたようで、首都の情報が・・どこのお店がおいしいのかとか、土産は何がいいのかとか、観光スポットはどこかとか、何も知らなかった。

 ありえねーぞ!


 エリー・・・お前は、なんて残念なんだ・・ムネだけかと思ったぞ!


 昼休憩では、いつもエリーと剣技を競い合った・・・って言うと、カッコいいのだが、要するに、木刀で戦った。

 オレ、痛かった!


 コイツに手加減の文字はなかった。

 でも、勇者の強化魔法で、何本打たれようが、木刀なら大丈夫だ・・・だった。

 青あざだらけになりながら、オレは純粋に剣技を求めた。

 ソフィーナにヒールで癒してもらいながら、エリーはこっちを侮蔑の眼差しで見る。

 

 なんて、弱いのかと・・・。


 こいつ等、みんな、知ってるんだ。

 あの歴代勇者中、オレは最弱だという説を。


 けっ!

 言わせたい奴には、言わせてやれ、だ!


 こいつ等に、どう思われようが関係ねー!

 こんなビッチたち、何とも思わねー!


 オレには、ルーシーがいるから。

 以前のオレなら、心を痛めたが、オレに対する悪意とか、侮辱とか、もう余裕だね。キープ君扱いも、どうってことねーよ。勝手に言ってろ。


 オレは聖剣を使えば、エリーなんか楽勝なのだが、こいつ等に、今、聖剣を見せる必要は無いからな。


 アヤカには、魔法のレクチャーをイチから教わった。

 こんなんも知らないのとか、こいつもオレを侮蔑の眼差しで見てくるが、ここは知ってることでも、基礎から学ぶに限る。

 オレは、フランツ仕込みだが、アヤカはジャポニカ仕込みで珍しい神教の巫女の魔道使い。なので、魔法の解釈から発動方法、術式、魔力の練り方、魔力の扱い方など、違うところを知ることは、自分の魔法の向上に、絶対に役立つ。


 ソフィーナについては、彼女が扱う魔法の種類とか、その威力とかを教えてもらうにとどめた。

 なんせ、コイツは、要注意人物だからな。

 その、癒しのオーラには、騙されねーからよーー!!

 でも、コイツの魔法は、コイツだけの固有魔法だから、マネできねーんだけどね。


 このように、オレは時間を有意義に使って、後は寝ときたいのだけど、こいつ等のつまらん話に無理やり付き合わされながら、サリュート聖教国の首都に到着した。



 首都に着くと、すぐに聖教国の聖王であるクリスト13世に会った。


 ク「よく来た、勇者と聖女たちよ」


 ト「・・・・・・・・」


 エリーがオレをつつくが、無視。

 だって、なんで聖教国に来たのか、ちゃんと聞いてねーもん。


 ク「疲れておるだろうが、まずは、そちらの話を聞かせよ」


 ト「・・・・・・・・・・・」

 エリーが目にもとまらぬスピードで、どつく。

 が、無視だ。


 エ「聖王閣下に置かれましては、ご健康でなりよりです。私たちも無事、健康にここまでやってこれました」

 おまえ、やっちまったよ、これ!健康とか、関係ねーだろ、剣術バカが!


 ク「ははははは!エリーナは、優しいのう!健康は大切じゃ、いや、それこそが一番だと言える、うむ!」

 えっ?いいの?えっ?聖王の健康を訊きに来たの?


 ソ「聖王様に申し上げます。私は癒しの聖女、ソフィア=ファーガソンと申します。我々が伺ったところによりますと、聖教国には、勇者パーティー専用の聖武具が保管されているとのことですが、ご存じでしょうか?」


 ク「えっ?そんなものがあったかの~~~」

 このジジイ、知ってるの、丸分かりだよね。

 ってか、早く言えよ、ソフィーナ!


 ア「聖王様♡わたし、アヤカ=アーネットと言います。聖王様は、とてもお若く見えてびっくりしました。ぜひ、りたいですわ♡」

 おまえ、やっちまったぞ、これ!いきなりのダジャレ!どうするんだよ!

 空気が張り詰めてるじゃねーかよ!


 ク「・・・・・ははははは!アヤカは、ジャポネーゼだったな。その機転の利くシャレは、洒落しゃれとるの~~~」

 ア「まあ、聖王様もお上手だこと、おほほほほほ」

おいおい、オレはこんなショボいシャレでは、笑えねーぞ!


 ソ「うふふふふふふ」

 エ「エへへへへへへ」

 ト「・・・ぷぷぷ」

 エリーが、えへへとか言って、素が出たので、笑えた・・・けど、あれ?オレを見てるぜ・・・ぷぷぷは、ヤバかったかな?


 ク「・・勇者よ!お前に、試練を与える。それに勇者が勝てたなら、その武具を貸してやらんでもないぞ!どうだ?やるか?それとも、逃げるか?」


 ソ「それは、ずるいです、聖王様。前回の勇者たちにはすぐに武具をお貸しくださいましたよね?なぜ、今回は、条件をつけるのですか?」


 ク「その理由は、そこの勇者自身が知っておろう?そうじゃろ、勇者?」

 えっ?なんのこと?つーか、何でオレに振るの?

 このジジイ、単にオレが嫌いなだけだろ?


 ト「はい、もちろんです。そして、聖王様、その試練、受けさしてもらいます」

 ク「うむ、よくぞ言った!では、明朝、また会おうぞ。それまでは、ゆっくりと寛ぐがよい、うむ!」


 というわけで、ジジイの嫌がらせで、オレは試練を受けることになった。

 理由?だから、知らねーよ!

 あっ?もしかして、ぷぷぷって笑ったからか、あの、だせーダジャレを?

 いや、アレでも聖王だからね、こんなことを私情で判断するなんて・・ありなの?








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