第14話 勇者の修行①

 国王との謁見後、騎士団長ルーカス=シフォンからじかに説明があった。


 まだオレは、勇者の称号を得ただけで、魔族と闘う事など出来ない。


 まずは勇者の聖剣を得ること、そして剣技を磨くこと、基礎体力を上げる事、勇者の聖剣の使い方を会得すること、使える魔法を増やす事、パーティーメンバーとの連携を模索することなどなどの課題の説明を受けた。


 次に、オレの相談役兼剣技の先生を紹介された。


 部屋に入ってきたのは、セミロングの、銀髪に近い金色の髪をした女性で、胸がデカかった。

目は切れ長だが二重が綺麗で、睫毛が長く、鼻はスラっとしていて、モデルのような引き締まった体形が特徴の、背の高い、とても美人なお姉さんふうな人だった。


「近衛騎士団3席、後宮護衛騎士筆頭ルーシー=シフォン、夢見る17才です、よろしく」

 声が、まるで鈴を鳴らすような感じで、可愛げに響いた。


ト「えっと、ルーカスさんとは?その・・」

「他人です、良く言われます」


ルーカス「いやいや、なぜ隠すの?トーヤ、オレの娘だ。まあ、こんなだけど、剣の腕前はオレより上だ。慣れない生活になるけど、生活面でのサポートもしてくれるはずだ。そうだったな、ルー?」


「知りません。初耳です。私、年下とか好みじゃないですし」


ルーカス「まあまあ、そう言わないで。お父様のお願いだ・か・ら」

「キモイです。すぐに消えてください」


ルーカス「トーヤ、いいだろ?まあ、後はよろしく」

ルーシー「どこに行くんですか?」

「いや、もう、説明終わったよね?だったら、オレ、行かなくちゃな。団長の仕事が溜まってるしさ。これからは、ルーが手取り足取り、鍛えてやれや。いいか、手取り足取りだぞ!期待してるからな!」


ルーシー「ちっ!!もう、しゃべるな!行け!」

 声が、鈴を鳴らしていた声が・・・ドラムを叩いている声に変った。

 

 今、ちっ!って言わなかった?ちっ!って?


 ルーカスは出て行った。


ルーシー「ふん、どうせ、街に出て、女のところか、酒場に繰り出したんだろ、クソ親父が!」


ト「あの~~、ルーシー?」

「ああ~ん!!ルーシーだと!!貴様、クズ勇者の分際で何を名前で呼んでる?」


 口調が変わってきてるんですけど、ってか、怖いんですけど。


ルーシー「いいか、騎士様と呼べ。それと、明日は5時起床!私は6時起床だから、ちゃんと私を起こしに来ること!」


ル「それから、面倒を起こすなよ!特に、女子に色目を使うな!わかったか?」

ト「はい」

ル「ああ~ん!!声が小さい!!」

ト「はい!!わかりました!!」


ル「ああ、それとな、お風呂は男女交代だから時間には気を付けるように。毎年、何人か死んでるからな!」

ト「ええ~~、それ、重要ですよね!もうちょっと、詳しくお願いします!」


ル「ああ~~ん!!バカか、貴様は!!一度聞いたことは絶対に忘れるな!!騎士の基本30か条のその3に書いてあるだろ!!よく読んどけ!!」

ト「えっと、まだもらったばかりだし・・・」


ル「ああ~~ん!!なんか言ったか?」

ト「いえっ!!なんでもありません!!」


ル「あと、明日、聖剣を抜くことになるが、それが抜けて初めて勇者と認められる。だから今の貴様は、勇者見習いだからな!そもそも、私と対等に口が利ける身分ではないのだから、そのことをよくわきまえよ!」


ト「は、はい!!」


ル「よし!解散!!」


 オレはこの広い城に置いてかれたのか?

 解散って、オレ、どこに行ったらいいの?


 とりあえず、部屋を出たら、すぐに親父(ゼイン)と出会った。

 親父は、ルーカスと親しげに会話をしている。


 ゼ「おう!トーヤ!もういいのか?」

 ト「はい」

 ゼ「それじゃあ、行こうか?」

 ト「えっ?どこに?」

 ゼ「ルーカスと街に出るんだよ。歓迎会さ!」


 オレは、訳が分からず、王都の街の居酒屋に連れていかれた。



 ル「おい、トーヤはもう飲んでいいんだよな!ガハハハハ!」

 ルーカスさんは、すでに酔っている。


 ル「でな、トーヤよ!お前、オレの娘を早いとこ、ヤッチまってくれよ!」

 ト「え、えっと?何をやるんですか?」


 ル「ああ、そうだ!ナニをやるんだ!頼んだぞ!!」

 ト「え、えっと・・・」

 ル「ああ~~ん!!男なら、ハイと言え!ハイと!!」

 ト「は、はい!!」


 ル「よし、男に二言はないからな!!なあ、ゼイン、娘を頼むぜ!」

 ゼ「ああ、だけど、トーヤは、婚約してるけど、構わないんだな?」

 ル「ああ、勇者だぞ!しかも、こんなイケメン!しかも、お前とシオンの子だろ?2番手でも3番手でも、かまわねーからよー!頼むわ!!あの娘には、なんとか幸せを掴んで貰いてーんだよ!!う・う・う・・」


 あれ、ルーカスさんは、泣き上戸なの?


 ゼ「ああ、お前の気持ちは受け取った!」

 ル「ありがとうよ!やっぱ、ゼインは、今も昔も頼りになるぜ!」

 ゼ「そんなことは、ねーよ」


 いやいやいや、勝手に、オレがルーシーを妻にすることになってるんですけど。

 オレは、サーヤの顔が浮かんだ。

 サーヤ、今、何してんだよ。

 会いたいよう!


 ル「トーヤ、アイツ(娘)は、オレが一人で育てたんだ。先の政変で妻を亡くしたオレは、途方に暮れてたんだがよ~、アイツの笑顔がオレを救ってくれたんだよ・・う・う・う・・」

 ト「そうなんですね、ルーカスさんも苦労したんですね」


 ル「ああ、わかってくれるか?アイツ、男勝りの口調だからよ~、全然、男が言い寄ってこねーんだよ。それに、アイツ、強いだろ。だから、自分より強いヤツしか認めねーんだよな。オレは、もう、アイツより弱いし、近衛の1席2席は、おじさんで、妻が怖くて、手を出しそうにないし。もう、トーヤ、オメーしか居ねーんだよ!頼んだぜ!」


 ト「だけど、ルーカスさん、彼女がオレに惚れるってのは、ないと思うけど・・」

 ル「大丈夫だ!ぜんぜん、大丈夫!だって、アイツは勇者がもともと好きなんだからよ~~。勇者が好きで、この騎士を目指したんだからな!絶対大丈夫だ!保証するぜ!」


 ト「あの~~、明日の朝、オレ、ルーシーを起こさないといけないんだけど、どうすれば・・?」

 ル「えっ!!それは・・トーヤ、おめでとう!!それは、アイツが好きだよって言ってるのと同じじゃねーかよ!!夜這いはヤバいから、朝ってか?」

 ゼ「相変わらず、下品だけど、面白いぜ!乾杯!」


 酔ってるよ、絶対酔ってるよ、この人たち。


 ト「えっと、話しが読めないんですけど・・」


 ル「バカか、トーヤ。ああ、お前、童貞だったか!じゃあ、それ、捨てに行こうぜ!」

 ゼ「おいおい、ルーカス!それは、ダメだ!」

 ル「なぜだ?」


 ゼ「お前な~~、明日、聖剣を抜くんだぞ!今晩、抜いちまったら、ダメだろうが!!」

 ル「相変わらず、うまいこと言うじゃねーか!!乾杯だ!乾杯だ!!」


 こうしてオレは、朝まで飲んでしまった。

 なんか、肝心なことを訊けずじまいだった気がした。


 そして、5時には起きられなかった。


 っていうか、寝なかった。

 徹夜して、一睡もしないで5時になり、6時になって、彼女の部屋へ行った。


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