第13話 勇者、謁見する
フランツ王国謁見の間にて。
宰相シモン=ルフランが、まず、挨拶し、王を紹介する。
シ「この御方がフランツ王国国王、ピエール7世であらせられます。」
ピ「皆さん、ご苦労様です。そんなに畏まらなくても良いですよ。貴族出身の方ばかりではないでしょうから、これからのあなた達のマナーについて、とやかくは言いませんのでね。その辺、シモン、周知徹底するように。」
シ「はい、心得ております。」
ピ「皆さんには、それより大切な大仕事があります。私には、それに関して、直接お手伝いをする力がありません。どうか、皆さんのお力をお貸しください。私とこの横にいる王妃は、出来るだけ、皆さんの心身のサポートをして、この大役だけに集中して頂ける様に、裏方の仕事をいたします。どうか、お気軽に何でもご相談くださいね。マリー、それで良いよね?」
マ「はい、特にわたくしは歳(23歳)が近いので、あなたたちの良き相談相手になれたらと思っています。是非、仲良くして下さいね。」
シ「ゴホン、国王?」
ピ「ああ、ごめんよ、シモン。まずは自己紹介だったね。でもその前に、僕も君たち(15歳)と歳(28歳)が近いから、何でも相談に乗るよ・・・えっと、そんなに怖い目で見ないでくれる?マリー・・・はい、改めまして、私の隣りは、第1王妃のマーガレットだ。」
マ「マーガレットです。マリーって呼んでくださいね。」
シ「お、王妃様?(マリーなんて呼ばせるとは打ち合わせにないぞ)」
ピ「あっ!じゃあ、僕はピエールで!」
マ「うふふ、そのまんまですわね、わたくしにツッコンで欲しいのかしら、ピエール?」
ピ「う〜ん、それって?」
マ「えっ?あら、イヤだわ」
シ「ゴホン!あのー、よろしいでしょうか?」
マ「ごめんなさいね、お父様。よろしくてよ。」
えっ?マーガレット様って、シモンさんの娘さんか~~。
オレ(トーヤ)は、国王と王妃のやり取りに、緊張が解れていった。
それは、オレだけではないだろう。
たぶん、良い人達なんだろうなと、ここの空気感が温かくなるのを感じた。
オレ達は、それから、それぞれ挨拶をしていった。
勇者トーヤ=デルサ、癒しの聖女ソフィア=ファーガソン、剣の聖女エリーナ=ルーチェ、魔導の聖女アヤカ=アーネット。
これが、今代の勇者パーティーだった。
シ「さて、詳細は担当の者が説明するが、勇者以外は下がって良い」
オレだけ?
なんか、嫌な予感が・・・。
ピ「緊張しなくても良いんだよ、勇者トーヤ、ちょっとキミとだけ話してみたくてね」
ト「トーヤでいいです、国王様」
ピ「だから、ピエールでいいよ」
オレは、宰相を見た。
宰相は、頷いてくれた。
ト「それではピエール様、お話とは何でしょうか?」
ピ「キミ、これから大変だけど、覚悟は出来てるのかい?」
ト「はい、勇者というのは常に死と向かい合わせとなって事に当たらなければならないのでしょう?でも、この国の、ひいては人間族の存亡をも担う大切なジョブです。オレ、あっ、僕は、そのジョブに選ばれたからには、全力で頑張ります!」
ピ「そうか!よくぞ言ってくれた!どうやら、良き勇者に、トーヤはなりそうだな!」
ト「ありがとうございます」
ピ「ところで、トーヤ!ダジャレは好きか?」
ト「はい?」
ピ「いや、ダジャレだよ、ダジャレ」
ト「えっと・・」
これ、どう答えたら正解だ?
ト「もちろん、す・・好きです」
ピ「そうか!よしよし、それでは、また話そう!疲れたろうから、もう退出して良いぞ」
良かった。
「す」と言って、顔色を伺い、素早く判断。
困った質問の時の高度なテクだ。
こういうテクは、言わずと知れた親父の直伝。
でも、オレは、ピエールの目がいつも笑っていないのに気が付いていた。
それに、得体のしれないオーラにも。
オレには、勇者のジョブを得て以来、オーラ・・魔力が色となって見れるようになった。
良い人たち?
たしかに、オレはそう感じ、そう思ってしまった。
あのオーラは・・あの魔力の色は、ナンダ?
あんな色のオーラは見たことがない。
マリー様も、あのオーラに染まっている、シモン様も。
ふつう、オーラというものは、個人個人違う、固有のもののはず。
いったい、彼らは・・・とくに、ピエール、あの人は、ナンダ?
でも、オレには、王族たちの詮索などより、勇者としての責務とこれからの試練に想いが多くを占めており、その辺りで考えを中断した。
ただ、母さんに似ているマリー様があのピエールという、なんか胡散臭い人間を溺愛している感じがやるせなかった。
オレは退出した。
ピ「どう思う、シモン?」
シ「さすがに、ダジャレはないでしょう?」
ピ「えっ?そう?」
マ「いえ、お父様、ピエールにはピエールの考えがあってのことですわよ、ねえ、ピエール?」
ピ「えっ?そう?」
シ「とにかく、さすがに、シオンの息子だわい。顔もイケメンで、あの志しや、良し!」
マ「そうですわね、さすがに、お姉さまのお子だわ。ねえ、ピエール?早く子供が欲しいわね?」
ピ「おいおい、話しが逸れてるぞ。でも、愛してるよマリー。今晩は寝かせないぞ・・・って、えっと、なんだっけ?・・ああ・・君たちは、まあ、身内だからな。で、ホントのところは、どうだ?」
シ「あの様な模範的な返答は、想定問答集でも暗記してるような感じで、かえって、疑惑が深まりましたな。でも、我が孫でもありますれば、あのような事までにはならぬかと・・・」
ピ「だから、僕は、ダジャレは好きかと訊いたのだ。そのようなものは、想定問答集にはないだろう?」
マ「ああ、そういうことなのね、さすがはピエール。もっと、早く言ってよね。」
ピ「ああ、マリー。もっと褒めて!」
シ「オホン!で、どうですかな、国王?」
ピ「ああ、ダジャレね。好きとか嫌いですと即答するヤツは、組みやすく、
シ・マ「さすがは我が君!」
二人はピエールの信奉者である。
ピエール7世、彼にはスキルがある。
しかも、先天的スキルだ。
貴族や王族に、時々現れる。
だから、血統は重要なのだ。
またそれ故に、彼のスキルは一般に知られていない、そして、知る者は先の政変で生きてはいない。
彼は、成人の儀の時、英雄のジョブを得ている。しかし、それは隠蔽された。
つまり、彼は王位継承では不利となりうる無能力者となった。
しかし、彼は無能力者の烙印を押されたにもかかわらず、国王となった。
その一つの理由には、この先天的スキルの効果があった。
彼は、この世界を統べることのできるスキルの保有者である。
しかし、彼はまだ、そのスキルをあまりよく認識していないようだった。
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〇鑑定について
彼(ピエール)を鑑定しようにも鑑定不能となるモノであり、また、この世界では生物の能力を鑑定するスキルは存在しない。
ただ、品物の鑑定というのは、別の意味で存在する。
また、
所有者は門外不出としており、やがて忘れられたり、消失したりして、誰が持っているかもわかっていないのがこの世界の現状である。
鑑定というのは、ある意味、万能となりうるし、謎解き要素も減るので、その点でも面白くないというのが筆者の見解。
また、その意味でも、ゲームのようにステータスとか、レベルとかいうものの設定はないし、それが数値化されることもない。地道な努力と研鑽がスキルや能力を高めるので、魔獣とかを倒して得るものはその純粋な戦闘経験だけであり、ポイントが得られるという類いのものではない。
ってことを念頭に入れて読んでいただけたらと思います。
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