第12話 勇者、立つ・・いや、発つ

「アジャ村の、サーヤ!ここへ!」


 まずは、サーヤが呼ばれた。


 サーヤが手をかざす。


「う・・こ、これは!!おめでとう!!」


「皆さん、今、ここに、剣聖が誕生しました!!どうか、祝福を!!」


 会場は、歓声と拍手で、盛り上がった。


 スゲー、さすが、天才サーヤだ。

 オレも一緒になって手を叩いた。


 あっ、次、オレじゃね?

 めっちゃ、やりにくいんですけどー。


「次、同じくアジャ村の、トーヤ!これへ!」


 あーあ、なんか、まだ騒ついてるよ。

 って、めっちゃ、注目されてるし。

 今までのお祭りの、ちょっと浮かれたノリでいいのに。


 なんか、アジャ村、注目されちゃったよ!


 サーヤは壇の後ろで待機している。

 登壇する時、サーヤと目が合った。


 サーヤは、両拳をグッと握って、頑張ってと言った。


 オレは、この時、場違いな想いに捕らわれた。


 あれ、この格好、何処かで見たことが・・・。

 確かに、何処かで・・しかし、ここで立ち止まるわけにはいかず、気を引き締め直し、登壇した。


 オレは、周りの期待が高まる中、手をかざした。


「・・・!!!(神父の心の中でピンポーンと鳴った)ゆ、ゆうしゃでしゅー!」

 神父は、思いっきり噛んだ。


 一瞬、場内は、シーンとなる。

 が、突然、大歓声が沸き起こり、拍手喝采となった。


 神父生活50年、この神父の報われた瞬間だった。


 オレは、サーヤのところに飛んでいった。

 サーヤと抱き締めあった。


「願いが叶ったのね。おめでとう!」

「ありがとう、サーヤ」


 そして、キスをした。


 神父「お取り込みのところ申し訳ありません。 2人とも再び壇上へお上がりください。」


 神父「では、改めて、アジャ村のサーヤは、剣聖のジョブを、そして、同じく、アジャ村のトーヤ、勇者のジョブを、賢くも尊い女神様より授かりました。 2人はこれからいろいろと困難が待ち受けているかもしれませんが、この地を代表した者として、必ずやこの国に福音をもたらす者たちとなるでありましょう。今一度この者たちに祝福を!」


 再び会場は拍手の嵐に包まれた。


 オレ達は、両親の元へ行った。


 そこで待っていたのは、渋い顔をした親父とおじさん(サーヤのお父様)、悲しい顔をした母さんだった。


 えっ?と思ったのもつかの間、オレ達は、王国の兵士に囲まれた。


 これからすぐ、王都へ旅立つということらしい。



 で、みんなで王都に行くことになった。

 本当は、ジョブが与えられた者だけなのだが、親父たちは別の馬車でいいからついていくと言ったのだった。


 えっ?と思ったが、それはそれで楽しいかも知れないと思い直した。


 本音は、結婚式を飛ばしての新婚旅行だと思ったのだが。


 でも、ほとんど馬車に乗って過ごすその馬車の中には、オレとサーヤだけだから、実際は新婚旅行気分なのだが、夜の宿泊では、まだ結婚していないので、サーヤは母さんと一緒の部屋に。


 俺は、親父達と、夜な夜な、飲み明かすのだった。

 おかげで、昼間は、二日酔いが続いた。

 おかげで、サーヤの機嫌が悪い。

 これって、嫌がらせか?


 特に、おじさんがいつも酒を注いでくる。

「おい、酒に弱い奴には、サーヤをやらねーからな!」

 いつもは、優しく紳士なおじさんは、酒が入ると怖い。

 でも、偶にサーヤが部屋に来て、酒を注ぐ時だけは、優しくなる。


 そんな感じで王都へ向かっていた。


 王都へは、 1週間かかるのだった。



 ーーーーー


 ここも、フランツ王国の辺境の町。

 ここでも成人の儀が執り行われていた。


「ソフィア=ファーガソン、癒しの聖女です!!」


 銀髪の髪を腰まで伸ばし、小柄だが、ムネは良く発達しており、少し丸顔だが整った顔立ちで、優し気な眼差しをしている少女が、クリっとした二重の薄緑色の目を見張って、小さくガッツポーズをしていた。



「ソフィー!聖女だって!良かったね!」

「うん、ロール(ローレンツ)。」


 私(ソフィー)は、聖女に憧れていた。

 幼い時に、魔法で病気を治してもらった教会の施術院の聖職者の方が、とても綺麗で心優しいお姉さんだったからだ。


 私も、彼女のようになれたらいいなとずっと思っていたのだった。

 別に彼女は聖女ではないけど、物語に出てくる癒しの聖女とは、彼女のような人を言うのだろうと想像を膨らませてきたのだった。


 私は、婚約者のロールとハグした。

 とある理由で、まだ、キスはしていない。


「全てが終わったら、戻ってくるから!その時は・・・」

「ああ、待ってるさ!君が帰って来たら結婚しよう!」

「うん!」


 そして、それからすぐに王都へ向かった。



 ーーーーー


 ここは、フランツ王国の隣国、サリュート聖教国。


 その首都にある聖教会中央本部の聖王の間。


「其方が剣の聖女エリーナ=ルーチェか?」


 キリっとした表情で、長い睫毛を伏せたようにしている、あごの線がシャープな、小顔で整った顔をした少女が、片膝を立て、臣下の礼をとっている。


「御意」


「わかっているであろうな!」


「御意」


「さすれば、行くが良い!」


「御意」


 彼女は立ち上がると、スラっと背を伸ばした。その姿は、とても凛々しく、長い薄青色の髪が後ろに揺れて、目は薄空色をしており、口元は微かに微笑を湛えている。ムネは小さかった・・いや、発達途上でこれからが期待される・・うん?


 私(エリーナ)は、聖騎士団で研鑽を積んだ剣士だ。

 剣の才能を認められ、同期では首席剣士に最も近いとまで言われたのだが、事もあろうに、聖女などと、やっかいな。


 まだ処女なので、聖女になったのだとホゾを噛む思いだ。

 こんな事なら、同期のイカロスに奪ってもらったら良かった。

 イカロスは、私の幼馴染で許嫁だ。

 剣技はダメダメだが、イケメンだ。

 イケメンで無ければ、さすがに許嫁にはならない。


 まあ、告白とかはなく、親が勝手に決めたのだが、婚姻とはそんなものだろう。


 私は、王命ですぐにフランツ王国の王都に向かった。


 ーーーーー


 ここは、島国ジャポニカ王国。

 この国の女子は、基本、黒髪黒目が有名でジャポネーゼと呼ばれる。


 その首都トーヨーにある王宮の玉座の間では、ジョブを授かった聖女が呼ばれていた。


 彼女は、黒目黒髪の小柄な美少女。顔立ちは整っており、卵型の顔で、髪の毛はショートボブで黒檀色の艶を帯び、二重の目は少し垂れ目で、笑うと八重歯が可愛く覗き、その目と相まって、とても愛くるしく、ムネは巨大であった!おおむね、巨乳であった!


「貴女が魔導の聖女アヤカ=アーネットですか?」


「はい」


「詳細はご存知ですね?」


「はい」


「我が国の代表として、恥ずかしくない活躍を期待していますよ」


「はい」



 私(アヤカ)は、この国の国教である神教の巫女。

 巫女は、魔導を使う。

 他国では魔導師とか言うのだが、ここは島国ジャポニカ王国。

 独特の文化を持っている。


 私は、同期の巫女の中で首席であり、10年に1人の逸材と言われ、当然、王国一の魔導使いになるものだと思っていた。

 ところがだ。

 聖女のジョブを得てしまった。

 私が処女だったからだ。

 早く、あの人にあげたら良かった。


 宗派が違うので、勇者パーティーに選ばれる事は珍しいとの事だが、選ばれた時には、この国ごと、大変な出来事に巻き込まれるという。


 それが何なのかは知る由も無いが、十分注意することと、何度も言われた。

 特に、勇者には注意せよと。


 すぐにフランツ王国へ行かねばならないが、私には、幼馴染の婚約者がいる。

 で、無理を言って挨拶に来た。


「ユウト!会いたかった!」

「あっ、アヤカ!僕もだよ!」

 2人は、抱き合い、キスをした。


「ごめんね、もう行かなきゃ」

「絶対、無事に戻って来て!」

「うん、そして、全部終わったらね?ね?・・・」

 私は、彼を上目遣いで見た。


「ああ、も、もちろん、け、結婚しよう!してくれるね?」

「ああ、ユウト!絶対よ!その時まで、待っていてね!ね!お・ね・が・い!」

「ああ、も、もちろんだよ」


 2人は、また、キスを交わして、ずっと見つめ合うのだった。


 兵士「さんませーん!終わりましたよね〜、もう、ハグもキスも終わりましたよね〜、早くしてくださいよね〜」


 こうして、私は、フランツ王国へ向かった。

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