第11話 成人の儀
ついに、この時が来た!
成人の儀!
隣町まで、小一時間、そこの教会で洗礼を受ける。
その日の前日、サーヤと、この村を一望できる小さな丘の上で、愛を誓い合った。
サーヤは、時々吹きつける、心地よい風に綺麗な黒髪を靡かせて、その髪を片手で押さえながら、オレとキスをした。
サーヤは、もう、大人の女性に成長していた。
ムネだけは発育途上だが、スラっと背を伸ばし、整った目鼻を上目遣いにオレに向ける彼女は、おじさんの崇拝する女神様と言ってもいいほどに、抱きしめて、もっとキスをしたくなる美人さんに成長した。
形のいい、上向きのヒップに、両手を鷲掴みにしたい衝動に駆られる。
そう、オレも思春期の発情期になった。
もう、キスだけでは我慢できないって年齢になった。
オレは、もう、背はサーヤを追い越し、金髪碧眼のイケメン君に成長していた。
身体の成長は、性欲の成長も伴うので、女性のムネとか、お尻とかに興味が行き、つい、目で追ってしまう。
オレって、変態になったのかと思ったが、よく考えてみると、親父も似たり寄ったりの視線を向けたりするので、遺伝だと思った。それに、子供の頃は、親父のことをスケベだと思ってたけど、親父の気持ちがわかるようになり、仲間意識を持つようになった。
例えばこんなことが・・・。
「親父、母さんのようにサーヤもムネがでかくなるかな?」
「お前、オレと同じでムネのデカいのが好みか?」
「ま、まあ、大きいに越したことはないからね」
「はは、よくぞ言った。それでこそ、オレの息子だ!大きいとあんなことや、こんなこととかもできるし・・・むにゃむにゃむにゃ」
「そのむにゃむにゃのところを、ご教授ください」
「うむ、大切なことだからな」
母「あらあら、最近、仲がいいわね!何の話をしてるのかしら?」
サーヤ「そうよ、トーヤって、最近、師匠とこそこそ話してるのよね。それに、近頃、師匠のいらないところまで似てきてる感じで、そこのところどうかなって思うのよね」
母「あら、良く見てるわね、サーヤは。さすが、私の可愛い娘。」
サ「あら、やだ、お母様。可愛いだなんて、ホントのことを」
オレは、ちょっと、既視感を覚えた。
前にも、サーヤがこんなことを言ってたような・・・。
まあ、ホントに可愛いからいいやと思った。
オレ「サーヤも母さんも、とても綺麗だなって話をしてたんだよ」
母「あらあら」
サーヤ「トーヤがそういうことを言う時って、何かヤマシイことがある時よ、お母様」
母「あらあら、トーヤもお父さんと同じように成長してしまったのね。ちょっと、躾が甘かったかしら?」
オレ「えっ?褒めたのに、怒られるなんて・・・親父、どう思う?」
親父「母さんの言うことが正しい!家では、母さんが法律だからな!」
オレ「えっ?・・おやじ~~・・うらぎりもの・・」
と、こんなホノボノとした感じで成人まで来ました。
さて、丘の上で、どう愛を誓ったかって?
キスだけなのかって?
はい、キスだけです。
優しいキスです。
大人キスではありません。
オレたちは、純情でした。
もちろん、性欲はあります。
でも、我慢です。
だって、明日には成人になるのだから。
成人の儀が終わったら、結婚するんだから。
結婚したら、まあ、初夜とか・・初夜とか、あるから・・。
で、サーヤと、いよいよ結婚すること、新婚旅行に王都へ行くこと、結婚したらやりたいことなどなど、丘のの上では、話は尽きなかった。
その晩は、サーヤは父親のおじさんとゆっくり、親子水入らずで過ごした。
オレは、親父と、初めての酒を交わし、普段あまり飲まない母さんも一緒に飲みながら、昔話に花を咲かせた。
ジョブのことは、もうおおよそ、サーヤと一緒に、母さんから聞いた。
なんだ、簡単じゃんって、その時は思った。
まあ、そういう感じで、前日を過ごしたのだった。
そして、翌日。
冒頭に戻るのだが、小一時間、馬車に揺れながら、隣町の教会へ行った。
村の教会では、儀式用の水晶玉がないし、そもそも、儀式をする人間が毎年いる訳ではないからだ。
因みに、村の神父さんも同行した。
親たちも一緒だ。
神父さんも、親たちも、お酒を飲みながら、談笑し、まるで自分たちは旅行気分ののどかさだった。
対照的に、町に近づくに従って、オレとサーヤは、緊張してきた。
サーヤは、昔からお姉さん風をふかしているため、オレに大丈夫だよ、私が居るからとか、安心してこのサーヤお姉さんのマネをしたらいいからとか、言ってくるが手が震えている。
逆に、緊張するんですけど・・とは言えない。
だって、そう言うサーヤは、とても健気で可愛いから。
村の教会とは違い、大きな建物で、威厳があり、なにかわからないけど神様とか女神様とかを象った像や絵や装飾が煌びやかにされており、緊張感をこれでもかと高める厳かな空気が漂っていた。
会場では多くの同年齢の若者がすでに集まっていた。
それと、多くの関係者がその周りに居た。
一人一人、名前を呼ばれて、台上へ上がり、水晶玉に手をかざす。
それだけだが、多くの人たちが見守る中で行われるので、さらに緊張する。
みんな、この日をずっと夢見て、この場所にいるんだなあと、オレは思っていた。
そして、残りは、たぶん、オレ達だけになった。
「アジャ村のサーヤ!ここへ!」
さあ、いよいよだ。
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