第10話 転生(早弥香)

 私は、異世界へ転生した。

 なぜ異世界に転生とかわかるのかって?

 それは幼馴染のユーちゃんが良くラノベを読んでいたから。


 この異世界は、やはり、魔法と剣の世界であり、魔物を退治したりする。

 そして、私は前世の記憶がある。

 それはつまり、ラノベの異世界転生というものである。


 私も、たまに、異世界モノを読んだ。

 悪役令嬢や虐げられた王女様が実は!的な話しが好物だった。


 でも、ユーちゃんには内緒。


 私は、アジャ村という、フランツ王国の僻地に転生した。

 子供は、ほとんど居ない。

 過疎の集落だ。


 同年齢のトーヤと村長のいけすかない息子ダルジくらいだ。

 ダルジは、トーヤをよく虐める。


 トーヤは、虐められて、我慢している時、左拳を握り締め、右手は自分の股間あたりを意味もなくいじくる。


 その姿は前世の私の想い人、ユーちゃんにそっくりだ。

 姿は金髪碧眼のイケメンだけど。


「ユーちゃん、転生って知ってる?」

「なにそれ?美味しいの?」


 ダメだわ、これは。

 発想がまるで子供。

 まあ、子供なんだけどね。


「ユーちゃんって、面白いこと言うわね。」

 私は咄嗟に誤魔化した。


「サーヤは、面白い事を言って欲しいの?」

「ま、まあ、つまらない事より面白い事の方が好きかな。当たり前だけど」


「じゃあ、言うよ!」

「どうぞ」

 可愛い!


「あのね、コブラツイストって知っているでしょ?」

「うん、えっと、首が二つあるヘビでしょ?」


「正解!じゃあね、言うよ」

 うふ、早く言ってね。

 うふふ、可愛い!


「えっと、コブラツイストに咬まれたら、どんな体験ができるでしょうか?」


 うん?なぞなぞ?

 この世界になぞなぞってあるの?

 しかも、出題者は、子供だし。

 きっと、トーヤのご両親の教育に違いないわ。


「どう(胴)ですか?頭ですか?お手ですか?おあしですか?何にもないですか?」


 なに、この取って付けたような問い掛けは?

 可愛いわね、もちろん、ヒントよね。


「えっと、あっ、わかった!ヘビだからお足がない!つまり、お金がない。つまり、答えは、貧乏体験ができる!うふふん、オネーサンを舐めないでよね!」


「それで良いの?サーヤは賢いけど、あわてんぼうさんだから、よく考えてね!」


 可愛い!

 あわてんぼうさんって笑

 お母様のシオンさんが良く使う言葉よね。


「いいわよ!ファイナルアンサー!」

「えっ?」

「あっ、えっと、貧乏体験に決めたわよ!」


「でわでわ、じゃじゃじゃじゃーーん!」

 わっ、可愛い!


「ざーんねーんでしたーー!」

「えっ?なんで?」

 でも、可愛い!


「答えは、ヘビーな体験でした!どう?面白かった?」


「う、うん」

 何これ?

 ダジャレで落としたって?

 子供が考えるにしては、引っ掛けとかあるし。

 もしかして、トーヤって、天才?


 いやいや、これにはお父様のザインさんの良く言うダジャレとかが関係・・・ああ、それだわ!


 ザインさんの持ちネタだわ。

 トーヤは記憶力が良いから、何回か聞いて覚えたんじゃないかな。


「うふふ、トーヤは、天才だね!」


「えっ、そんな事ないから。天才はサーヤだよ。この問題は、酔っ払っている時に、親父がサーヤのお父様のおじさんに良くするやつだよ。いつも、ここで大爆笑になるから、これって、面白いのかなって。でも、これって、そもそも、答えなんて、あってないようなもんだからね。」


「へーー、そうなんだ。」


 何なの?

 師匠にお父さんって、記憶力がないの?

 なぞなぞだけに、なぞだわ!


 でも、なんかこの時、私は軽いカルチャーショックを受けました。


 この世界、あなどりがたしと。


 でも、トーヤは相変わらず子供なのでほっとした。



 さて、私の日常は、私の父親のヨハンの朝食を作るところから始まる。

 ヨハンと朝食を食べた後、トーヤのお母様のシオンさんに魔法とかを習う。


 それから、トーヤのお父様のザインさんに剣術を習う。ザイン師匠は、時々、長期間居ない事があったりするけど、毎日の課題を出されるので、修練は続けている。


 それから、近くの池で水浴び又は生活魔法でシャワーとか、さっぱりしてから、シオンさんが軽いお昼ご飯を出してくれる。


 その後は、遊ぶ。

 身体と脳は、まだ子供なので、遊ぶのが楽しい。

 っていうか、自然いっぱいの田舎で遊ぶって体験はいつも新鮮だ。

 そして、ここは異世界。

 変な植物や生き物がいるので、飽きない。

 時々、シオンさんやザインさんと山に入る。

 薬草取りとかがメインだが、これは常に需要があるので、いい稼ぎになる。

 そして、魔物の居る山への入り方や魔物の対処法も自然と学んでいく。



 ところで、私には魔法は難しい。

 反対にトーヤは、難しい課題もすぐにこなしてみせる。


 でも、剣術は得意である。

 それは前世の記憶があるからだ。

 だが、この世界の剣術のレベルは、前世の剣道のレベルをはるかに超えた高みにあった。


 師匠のザインさんて、消えるのよ。

 だから、どんなに私が素早く打ち込もうとも、当たらない。

 だって、消えるんだもん。


 見えないのよ、速過ぎて。


 その境地に至るには、スキルの習得が欠かせないらしい。


 出ました、スキル。

 それに、ジョブというのもあるけど、ほとんどの人は、そのギフトを得られないらしい。


 ラノベで言うレアジョブに当たるのが、この世界のジョブらしい。

 勇者とか、聖女とか、剣聖とか、剣皇とか、賢者とか、大錬金術師とか、特大召喚師とかなどなどが、そのジョブに当たる。


 大錬金術師とか、特大召喚師とかは、超レアで、今までにこの世界に出現した記録は、神話の世界の話とからしい。

 それって、記録?って感じなんだけど。


 ところで、そのギフトを得るには、15才を待たないともらえないらしい。

 はい、出ました、成人の儀。


 あまり、このことについては、まだ話してくれない。


 シオンさんもザインさんも、この話は基本的な事しか教えてくれないし、質問も受け付けないような雰囲気がある。

 特にひどく反応するのは、お父さんのヨハンだ。


 ジョブについては、主にシオンさんからしか聞けない。


 その時期が来れば、詳しく話すのでってことにはなっている。

 トーヤは、ジョブの話には良く食いつくので、何度もしつこく質問するのだが、いつも、うまくかわされている感じだ。



 そして、12才になった。

 私は、トーヤと婚約した。


 婚約の話が出たときにはびっくりした。

 えっ、12才なんですけどって、言いました、私は。

 そしたら、ヨハンが「普通だろっ!それより、嬉しいだろっ!大好きなトーヤだぞっ!」って言われちゃいました。


 まあ、大好きなんだけどね、えへへへ。


 婚約は、この世界でもやっぱり指輪の交換だ。


 指輪は、既製品ではなく注文生産だ。

 指輪の依頼に、1時間かけて隣町に行った。


 その時、トーヤは、ラピスラズリの石を注文した。


 この時、私は確信に近いものを持った。

 やはりトーヤは、ユーちゃんだ!

 ユーちゃんが転生した姿だ!


 私は、天にも昇る気持ちがした・・・ええ、これがいわゆる天にも昇るってことなのね!

 私は、転生して、ついにユーちゃんと婚約できた!!


 これからは、結婚して、家庭の主婦としてユーちゃんを支える優しくて賢い妻になる?いや、ユーちゃんと一緒に冒険者になって、世界を股に掛ける大冒険をする?

 いや、ユーちゃんと・・・その、いい感じになって・・あの・・かわいい子供を授かって・・・その・・たくさん授かって・・・・えへへへへ。


「サーヤ、何をヨダレ流してるの?」

「えっ?・・なに?・・あれ?・・・えへへへへ」

 ここは、照れ笑いという、可愛い子がするとイチコロの技を使った。



「ねえ、トーヤ?転生って知ってる?」

「うん?えっと、なぜか知ってるよ。」


「えっ!!うそ!なんで?」

「だから、なぜかわかるんだよ。」


「それって・・・・あのね、よく聞いて!私、サヤカよ!ねえ、ユーちゃん!思い出して!」


「えっ??う~んと、何言ってるの?」


 ダメだったか。


「ねえ、何でラピスラズリにしたの?」


「なぜって・・・声が聞こえたんだ。ラピスラズリって・・・」


「えっ?・・そうなの?」


 どうも、前世の記憶までは思い出していないようだ。


 でも、まだわからないわ。


 私は、次のイベントとなる成人の儀で、何か起こるのではないかと期待した。














  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る