第1話 剣道では負けんどう!

 僕は、田中サルデア勇人。日本人とエストニア人とのハーフ。

 エストニアって国は、バルト三国のひとつで、いわゆる北欧美人で有名な国だ。

 父親が貿易関係の仕事で北欧に行った時に、エストニア人の彼女と付き合い結婚した。


 僕は母親似で、たぶんイケメンである。

 でも、小さい頃は、虐められていた。

 背も小さく、名前がサルデアだからって、サル、サルと言われた。


 そんな僕をよく庇ってくれたのが、幼馴染の白藤早弥香しらふじさやか

 彼女は、小さい頃は男勝りで、男のいじめっ子にも負けなかった。

 僕は、彼女ばかりに頼っているのは情けなかったので、何か武道をしようと、剣道を習うようになった。

 でも、その時も、彼女と一緒ではあったけど。


 そうして、いつしか僕は自信をつけていき、虐められることはなくなった。

 僕は、また、小さい頃から勉強をさせられて、中学受験をし、男子校に入った。だから、幼馴染の早弥香とは離れ離れとなった。


 しかし、早弥香とは〇インでずっとやり取りしていたし、家も近所なので、時々遊んだりしていた。また、剣道の道場へは二人で示し合わせて行ったりもしていた。


 そんな中学3年の頃はというと・・・・。


 ドンドン!

 早弥香「ユーちゃん、いる?」

 部屋に入ってきてから、こう訊くか?とか思いながら、カギは掛けてないけど、心の準備が・・・・。

 僕「あっ!ちょちょっと・・・」

 早弥香「なによ~~、なんかヤラシイことでもしてたのかな?」

 僕「なんで、そうなるんだ?」


 早弥香「だって、そういうお年頃でしょ、ユーちゃん」

 僕「それを言うなら、サヤちゃんもだろ?」

 早弥香「はい?あ、あたしは、おんにゃの子だぞ!こんなかわいい子がヤラシイことなんて・・・うん?ありなの?」


 僕「いやいや、何を勘違いしてるんだよ!サヤちゃんも同じ年齢だって言いたかったんだよ」

 早弥香「バッカじゃないの!そ、そんなこと、わかってるに決まってるでしょ!それより・・なに?・・また、ラノベ、増えてるよね?・・なになに・・幼馴染がクズ勇者に寝取られてから僕の無双が始まった?勇者パーティーをクビになってから始まる僕の復讐劇?転生したら底辺貴族になったけど伝説の大賢者になって僕を貶めた者たちをざまぁする?・・・ないわ~~・・こんなもの読んでて面白いの?バッカじゃないの!」


 僕「なんだよ~、別にいいじゃん!僕の趣味だし」


 早弥香「いーーえ!!いけません!未来の旦那様がこんな子供のような異世界モノにハマってるなんて、嫁が可哀そうだと思わないの?っていうか、アレでしょ?ハーレムがしたいんでしょ?不潔よ!エッチだわ!私だけで充分でしょ!・・も、もう、な、なにを言わせてるのよ!」


 僕「よしよし、いい子だな~、サヤちゃんは」

 その頃には背が高くなっていた僕は、早弥香の頭を撫でた。

 彼女は、顔を赤らめた。


 早弥香「な、なにを?わたし、もう、大人だもん」

 僕「じゃあ、やめとくか?」

 早弥香「えっ・・まあ、この際だから遠慮なく撫でられてもいいかなと・・仕方ないわね・・ホントにエッチなんだから」


 僕「・・エッチ、エッチって、エッチの次は何か知ってるか?」

 早弥香「えっ!!・・乙女の私に、そんなことを言わせるの??・・やだわ、もう」(妊娠じゃないよね?)


 僕「うん?・・えっと、エッチの次は愛だよ・・あ・い!」

 早弥香「えへへへ、そうよね・・もちろん、わかってたわ!愛があるからHするのね?」

 僕「・・うん?・・まあ、そうだね・・えっと・・Hの次はI・・アルファベットのアイなんだけど」

 早弥香「・・と、当然じゃない・・ちょっと、からかっただけなんだからね!」


 このようなホノボノとした感じがずっと続くと思っていた。

 そして、時々会って、ゲームをしたり、道場へ行ったり、遊んだりっていうのが何か新鮮で、いつしかお互いを意識し始めていた、と思っていた。


 高校は、二人で同じ学校に行こうと思い、親の了解を何とか取って、僕は男子校を辞めて、公立の普通科に彼女と一緒に入った。


 彼女は、成長して、スラっとした体形で背も女子としては高く、目鼻立ちも整っており、髪はストレートボブ、惜しむらくはムネが小さかった。ムネが小さかった。

 目はパッチリ二重系だが、笑うとえくぼが可愛く、たれ目っぽくなるのが魅力的だった。


 僕も成長し、高1で、すでに180cmはあった。

 二人とも、剣道部に入った。


 僕も彼女も、1年の夏には団体戦のレギュラー入りで、部の中でも強かった。

 僕も彼女も、たぶんモテてはいたが、みんなは僕たちが付き合ってると思っていたので、特に告白されることはなかった。

 ただ、僕は剣道部の女子マネと、彼女は男子剣道部のキャプテンと、ちょっと告白的なことはあったが。


 2年生になり、早弥香と僕は同じクラスになったが、イケメンの転校生、加山優斗とも同じクラスになった。


 加山「加山優斗と言います。優等生の優斗です!よろしく!」

 早弥香が吹き出し、ツボにハマった様に笑う。

 僕「ははははは」

 仕方なく、僕も笑う。

 遅れて、僕も笑ったので、一応、クラスメイト達は笑った、特に女子たちが。


 この時、早弥香をチラッと見たら、彼女は顔を赤らめて、加山を見ていた。

 ちょっと、嫉妬したが、彼女の笑いのツボは浅いので、特に気にしないことにした。

 加山は、早弥香の横に座り、当初、教科書等を彼女が見せたりしていた。

 彼らの位置は近かった。

 でも、早弥香はいつもと変わらず、僕に接していたので、そこまで気にしてはいなかった。


 加山は、剣道が得意ということで、僕たちと同じ剣道部に入った。

 2年の3学期ごろには、加山と僕が剣道部の竜虎と言われるようになった。

 加山は、おもての顔は良いヤツだった。

 さわやかな笑顔を絶やさず、暑苦しい防具で顔が熱くなるのにいつも涼しい顔をし、誰にでも優しい。女子にも後輩にも好かれていた。あの女子マネも、早弥香も、頬を赤らめてヤツと話すのだった。


 一方、僕は、後輩たちをいじったり、先輩とも友達のようにしゃべって、はたから見ると偉そうにしていたかもしれない。

 それに、この頃から練習をサボるようになった。

 それは、面白くないから。

 僕は自分が一番強いと思っているのに、加山、加山とみんなが頼り、早弥香も女子マネもヤツといつも楽しそうに部活だけでなく、教室でも話したり、じゃれ合っていたと、僕には見えた。


早弥香はもう、俺を好きではなくなったのか?


僕はその疑惑を裏付ける事件に出くわす。








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