第17話 学園防衛戦 その1

 校舎の中庭に出ると、すでに生徒たちの避難が始まっていた。

 その陣頭指揮を執っていたのはメルセだ。


「地下通路の扉を解放した! 皆急いで避難するんだ!」


「メルセ先輩!」


 ぼくは急いで彼女に事情を説明した。

 メルセはあくまで冷静にそれを聞いていた。


「……なるほど、それで魔術師たちの部隊が」


「部隊?」


「ああ。学園の広域探知網が、未確認の魔術師たちの飛行編隊を確認した。警告を発したが、奴らはそれを無視し、この学園の上空に迫ってきている」


 空からの襲撃は、魔術師にとっては常套手段だ。

 箒による飛行魔術に長け、さらに破壊力の高い対地攻撃魔術を持った魔術師によって構成される部隊は、空爆に等しい強襲能力を有する。


「とにかく、今は全生徒を避難させることが最優先だ。君たちも早く――」


「ぼくが迎え撃ちます」


「なに……?」


 ぼくのなかで、すでに腹は決まっていた。

 怖くなかったわけではない。けれど、みんなと一緒に逃げることはできなかった。

 

 なぜなら、ここはぼくの大好きな場所だからだ。

 

  空中戦となれば、なによりまず箒が必要だ。

 ぼくはショップから【装備】を選択。さらに【箒】の項目に飛んだ。

 数多くの箒の中でも、桁数が飛び抜けた代物を購入する。


 【ハイマット・ブルーム(第五世代ステルス戦闘箒)】×1

  合計:5,500,000,000ゴルド


  ▼以上の商品を購入しました。またのご利用をお待ちしております。


 ぼくの手元に、大型の美しい流線型をした箒が出現した。

 

「その箒は、一体……」


 ハイマット・ブルーム。

 ウィザアカ世界における最高峰の魔術工房で開発されたばかりの、最新鋭の戦闘機動用の箒だ。

 これなら気づかれずに近づける。


 けど、ぼく一人では数が足りない。

 それなら――

 ショップから【特殊品】を選択する。


 【自律型魔導人形 レ二型)】×50

  合計:74,450,000,000,000ゴルド


  ▼以上の商品を購入しました。またのご利用をお待ちしております。


 ぼくの周囲を取り囲むように、計50体の魔導人形が出現した。

 こちらも箒と同様に、都の魔術工房で開発された最新鋭のからくり人形。

 さらに全員分の箒を購入。


 即席の飛行部隊の出来上がりだ。


「なんという……」


 メルセをはじめ、その場にいた生徒たちの誰もが唖然と口を開いていた。 


「ルッカ、シリンを頼める?」


「え、そ、それはいいけど……オネス君は?」


「ぼくなら大丈夫」


 困惑するルッカに、ぼくはそう言い聞かせた。


「それじゃあ、いってきます」


 ぼくは箒に跨ると、飛行魔術を詠唱。


 それに続き、50体の魔導人形がわずかな遅延もなく一斉に浮遊を開始。

 雑草の葉を飛び散らせ、周囲に旋風が巻き起こる。



 魔導人形の編隊とともに、ぼくは空へと離陸した。

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