第3.5話(※2021/02/24追記)

 酒場へ戻ろうとしたアルドの目に、見慣れた一団の姿が目に入る。


「みんな! 無事だったか!」


 無傷とはいかないものの、誰一人欠けることなく街へと帰還した仲間たちに、アルドはつい満面の笑みになる。仲間たちの腕前を信じてはいるものの、先に戦況を離脱した身としてはどうしても無事な姿を見るまでは心配をぬぐうことは出来なかった。


「ああ、しっかり斬り倒した」

「斬って斬って散々に斬り倒したな。本当に」

「きちんと矢も撃ったとも」

「魔法も撃ちました!」

「まあ、このメンバーならば、余程の相手でなければ負ける気はしないね」

「はは、そうだな」


 本当に頼もしい仲間たちだった。

 その戦いの能力はもちろん、こうしたちょっとした会話で、心の内側が癒されていくようなやりとりも、アルドにとって欠かせないものだった。


「アルド、先ほどのご婦人は?」

「ああ、酒場で食あたりの患者が出て、お姉さんと一緒に看病してるところだよ。オレはこの薬を届けに」

「なるほど。では私たちは宿に先に戻っていた方がよさそうだな」


 シオンの言葉に、それぞれ異論はないと同意して、アルドに労いの言葉を残して、連れだって宿へと向かっていく。その中で、クレルヴォが一人、足を止めた。


「アルド」

「……うん? クレルヴォ?」

「君は、僕たちの腕前を信じてくれていると思う。それを疑ったことはない」

「うん」


 生徒を諭すような言い回しに、ついついアルドは幼い子どものような頷き方をする。


「だが、君は会うまで心配をしていたのだろう。それが、彼女への、返答とはなり得ないか?」

「……ああ、そっか」


 そういうことだ、とアルドは腑に落ちた。

 心配は、不信の表れではない。信頼しているからこそ、その信頼の先を失うことへの恐れ。愛着ゆえの、恐れの深さ。


「ありがとう。さすがだな。オレはそういうの、言葉にするの苦手で……」

「礼には及ばない。アルドがいなければ、僕がこういうことを考えることもなかったかもしれない」

「じゃあ、お互いありがとうってことで。それじゃ、オレ、届けてくるな」


 晴れ晴れとした気持ちで、アルドは駆けだした。

 これできっと、大丈夫だ。

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