第28話まあばあちゃんの朝

まあばあちゃんがお散歩に出かけようとしたときです。ポストに白いはがきのような紙が入っているのが見えました。まあばあちゃんはその紙を見ると、


「まあ、ありがたいこと」


白い紙にペコペコ頭を下げてお礼を言っています。


「どうしたの、おばあちゃん」


トモちゃんは不思議そうに聞きました。


「まあ!トモちゃん。早いねえ。もう、行くの?」


今日からトモちゃんは高校一年生。新しい制服が眩しく見えます。キョトンと見とれているまあばあちゃんにトモちゃんが言いました。


「今日から高校にいくんだもん。電車で行くから家を出るのが早くなったのよ」


「そうね。今日から高校に通うんだもんね。トモちゃん、ちょっと回って見せてちょうだい」


トモちゃんが照れたように笑って、まあばあちゃんの前でくるくる回ります。そして、お姫様みたいなお辞儀をしました。


「トモちゃん、立派になったねぇ」


まあばあちゃんは、もう目に涙をためています。まあばあちゃんはとても感動派なのです。今までにも、トモちゃんは新しい制服を着て、何度も何度もまあばあちゃんに見せてくれたのに。やっぱり、目に涙をためています。


それもそのはず、トモちゃんはまあばあちゃんが憧れていた高校に入る事が出来たのです。だから、まあばあちゃんにとってトモちゃんの制服姿はとても感慨深いものがあるのです。



「ねっ、おばあちゃん。その白いハガキみたいのは、なあに?」


トモちゃんがまあばあちゃんの大事そうに持っている白い紙を覗き込むように見て言いました。


「ほらっ」


まあばあちゃんはトモちゃんに白い紙を渡しました。


「へぇ!」


トモちゃんは目を丸くしました。それは警察の人からのものでした。


―――昨夜この辺りをパトロールしました―――


と書いています。走り書きだけどとても優しい文字です。


「ありがたいね。本当に」


「すごいね。おばあちゃん。この町を守ってもらってるんよね。私たち安心やね」


「本当に、有難いね」


まあばあちゃんは、また白い紙に頭を下げました。


トモちゃんは、新しい自転車の前かごに高校の鞄を乗せて言いました。


「おばあちゃん。行ってきます」


「気を付けて行くのよ」


「うん、じゃあね」


トモちゃんは、買ってもらったばかりの自転車に乗ると、駅の方に向かって走って行きました。何度も振り返って、まあばあちゃんに手を振るトモちゃん。


まあばあちゃんも、トモちゃんが振り返る度に何度も手を振り返してこたえました。まあばあちゃんはトモちゃんの成長していく姿がとても嬉しいのです。


嬉しくて、嬉しくて、まあばあちゃんは、元気に走っていくトモちゃんの姿が見えなくなるまで、ずっと見送っていました。


まあばあちゃん、嬉しい事が一杯で幸せね。

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