第26話まあばあちゃんと大泉緑地と田園風景 2
「わあぁぁ!」
それはまあばあちゃんのびっくりした声。その先にあるのは不思議なピンクの世界。
そう、さくら、さくら……さくらそこは桜だけの世界。
まるで天から降りそそぐようにまあばあちゃんを包んでいく桜の花びら。まあばあちゃんは、花びらを手に取ろうと思い切り体を伸ばしています。
「こんなに美しい桜を見たのは、生まれてはじめてよ。ここの桜は日本一。日本一よ!」
まあばあちゃんは、魔法にかかったように降り注ぐ花びらを呆然と見ていました。優しい風に誘われてひらひら、ひらひら……
まあばあちゃんの行く道を案内するように……。まあばあちゃんの白い髪にも、ジロの背中にも、そして、トモちゃんの服の上にも桜の花びらは降りそそぎます。
「おばあちゃん、本当に信じられない美しさね」
「なんという、贅沢なんだろうね。こんな美しい桜を見られるなんて。長生きして良かったわ。私って本当に幸せね。有難うトモちゃん」
まあばあちゃんは涙をうるませていました。美しくピンクに染まった桜の絨毯の上を、トモちゃんの押すまあばあちゃんの車椅子はゆっくり進みます。
「おばあちゃん、ここ、桜広場っていうみたいよ」
「桜広場、いい名前だね」
「おばあちゃん、ここで、休憩しょう」
「そうね」
まあばあちゃんとトモちゃんとジロは、日当たりの良い場所を選んで休憩することにしました。
桜の花に興奮して疲れたのか、初めての車椅子での長旅で疲れたのか、まあばあちゃんは、うとうとし始めました。幸せそうな顔をして……
「おばあちゃん。大好き」
トモちゃんは、まあばあちゃんの耳元でそっと言いました。
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