第25話まあばあちゃんと田園風景と大泉緑地 1
まあばあちゃんの住んでいる町並みを抜けると、そこには田圃や畑が広がっていました。車椅子のまあばあちゃんはとっても嬉しそうです。
まるで子供のようにはしゃいでいます。あっちの景色、こっちの景色と心地よく座ったまあばあちゃんは、キョロキョロと見ています。こんなに遠くまで来ても少しも疲れません。
「車椅子っていいねぇ」
まあばあちゃんが車椅子の手すりを撫ぜながら、しみじみいいました。
「いいでしょう。おばあちゃん」
「でも、わたしはまだまだしっかり歩けるのに、もったいないわ」
「うん、だからね、遠い所へ行くときは車椅子で、近所のお散歩の時はおばあちゃんの愛用車でっていうのはどう? 用途によって分けるのよ。かっこいいでしょう?」
トモちゃんはまあばあちゃんを車椅子に乗せてゆっくり歩きます。ジロも二人の歩調に合わせて歩いています。春の優しい風がまあばあちゃんのきらきら光る白い髪を揺らします。
「おばあちゃん、ほら、大泉緑地が見えて来たよ」
信号のむこうに、こんもりした森が見えています。
「トモちゃん、あれが大泉緑地なの」
「そうよ。おばあちゃん」
大泉緑地の入口は車椅子に乗ったまま入ることができます。
「便利になってるんだね。不思議だね」
まあばあちゃんは円形のくるくる回る車椅子専用の入口が気に入ったみたいです。公園の中は、美しい芝生が敷き詰められ大きな木がいっぱいあって、まるで別世界です。
家から少し足を伸ばしただけでこんな所があるなんて、まあばあちゃんは木に取り付けられた名前入りの札を見ては、「くぬぎ」「かえで」と大きな声で読み上げていきます。
よく見ると「くぬぎ」の真ん中の字が抜けています。「く○ぎ」となってます。まあばあちゃんは、それを見て自分で字を入れて読んでいたのです。
「おばあちゃんっていっぱい木の名前を知ってるんだ」
「そりゃあ、小さいときは山奥で育ったんだから」
まあばあちゃんは、それからも嬉しそうに木の札を読み上げていきます。
大泉緑地の中では、マラソンをする人、散歩する人、それぞれが自分なりの楽しみ方をしています。ここは、とっても良いところです。
ジロも広々とした大泉緑地が気持ち良いのか足取りが軽やかです。トモちゃんは、まあばあちゃんと大泉緑地へ来て良かったと思いました。
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