第19話まあばあちゃんとお春ちゃん

「ねぇ、ジロ、お春ちゃんはそろそろ散歩に来るかしら?」


ジロがまあばあちゃんを見上げて小首をかしげました。


お春ちゃんは、まあばあちゃんのお散歩仲間です。まあばあちゃんは暑くても寒くても雨の日以外は、毎朝、ジロと一緒にシルバーカーを押して歩きます。


でも、お春ちゃんは冬の間はお休みです。日差しがほんのり暖かくなって来た季節からお散歩に出てきます。


どちらもちょっぴり足が悪くて体が少し不自由ですが、お春ちゃんの足はまだシルバーカーではなくて杖でお散歩しています。


「痛い、痛い」と言って足を撫でながら杖を突いてゆっくり歩きます。そんな二人がいつのまにか気があってお話するようになったのです。


「あら、お春ちゃんだわ」


お春ちゃんが家の前でまあばあちゃんを待っています。


「おはよう。お春ちゃん。お散歩行くの?」


「おはよう、まあちゃん。明日から私も歩こうと思うねん。頼むわな。これ、家で作ってん。帰ったら食べてな」


それはおいしそうな、ぼた餅でした。まだ、ほっこりと暖かさが残っていて手のひらに感じます。


「有難う。お春ちゃん」


まあばあちゃんは大事そうにシルバーカーの中に入れました。一緒にいるジロもクンクン嬉しそうです。


明日からお春ちゃんも一緒だね。よかったね、まあばあちゃん。

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