第12話 素直に・・・

それから数か月が過ぎ、私はある男(ひと)に恋心が芽生えていた。




喧嘩して


バカしあって


いつからだろう?


アイツが


彼女と別れた事が分かり


別の女子生徒を


後ろに乗せて帰る姿


二人で仲良く並んで


親しそうにして帰る姿


その姿を見る度に


複雑で


見ているのが辛い日々




ねえ勇史


私達は結ばれない


運命なの?



ただ励まし合ったり


慰め合ったりするだけの関係以外


私達は恋愛に


進展しないのかな…?



私は……


あなたが…好き……




ある日の事、亜衣に呼び出され屋上に行く。




「ねえ、成美、1つ言いたい事があるんだ」

「何?」



バシッ

私の頬を打つ亜衣。



「ったぁ~、つーか、いきなり何!?来て早々、ビンタとか有り得ないんだけど!」

「今の成美見ていると腹が立つんだけど!」

「はあぁぁぁっ!?」

「好きだったら好きってハッキリと勇史に言いなよ!」



「………………」



「そ、そんな事、言えたらとっくに告ってるよ!つーか、私の事じゃん!放っておいてよ!」


「無理だよ!」


「えっ!?」


「私と敏基…成美が心配で……敏基は、いっつも成美の心配ばっかで……私達、今、距離おいてんだよ……」


「…えっ…?」


「いつも4人でつるんでだし、私達ばっかり幸せになれないし。…私…正直…成美の性格が羨ましかった…」


「亜衣…」


「意地張って…平気なふりして…我慢して…笑顔で大丈夫だよって……」



「…………」



「逆に放っておけなくて…世話焼きたくなるんだから!」



スッと私の両頬に触れる亜衣。



「成美…最近辛そう…笑顔もなくなってるよ…勇史に頑張って想い伝えなよ…」


「…無理だよ…勇史…彼女いるし…」


「チャンスはあるよ!勇史…今の子とは友達から付き合ってるらしいし。成美の隣は勇史なんだよ!勇史の後ろの特等席は成美専用なんだから!」


「…亜衣…」



スッと両頬から手を離す。



「ねっ!私達、成美の今の姿はずっと見たくないんだよ。私達の幸せは成美の笑顔だから…第一、私達の恋のキューピットは成美なんだよ」


「えっ?」


「私と敏基を引き合わせてくれたのは成美あんたなんだから!だから…私が成美の恋のキューピットになってあげるから」


「…亜衣…」




亜衣はフワリと抱きしめた。



「大丈夫。今度は成美が本当の幸せ掴もう!絶対に届くよ。成美の想い」


「うん…」




その日の学校帰り ――――



「成美」



名前を呼ばれ振り返ると、敏基がいた。



「敏基…」

「最近、どう?」

「えっ?」

「アイツの事、気になるんだろう?勇史」



ギクッ



「えっ!?あっ…いや……」


「見てて分かるから。すっげー、辛そうにしてんの。亜衣にも言われたんじゃない?」


「それは……」



私達は自転車を止めた。




「成美と勇史が俺達を引き合わせてくれたように…今度は、俺達が恋のキューピットするから幸せになれ!」


「えっ?」



私はクスッと笑った。



「亜衣も敏基も恋のキューピット?私…勇史と本当に離れられない関係みたいだね?」


「俺達、成美の笑顔が見たいから。構ってほしくないかもしれないけど放っておきたくても目が離せないから…成美の事…」


「…敏基…ありがとう……。だけど…勇史、彼女いるじゃん!亜衣は、友達から付き合ってるって言っていたけど……」


「うん、それは本当。だってアイツ……あ、いや…何でもない」


「えっ?何?」




≪何?気になるんだけど…≫

≪好きな人いるとか…?≫

≪だったら尚更駄目じゃん!≫




「…だけど……友達とはいえ、あんな親しそうにしてるの見て仲壊すみたいで…無理だよ…勇史に好きなんて言える訳……」


「言わなきゃ何も始まらなくねぇか?」




ビクッ


声のする方に目を向けると、そこには、自転車のハンドルに肘をおき寄りかかるようにいる勇史の姿。



「いや……偶々、通り掛かった…つーか…こんな所で立ち話してるお前らが悪くねぇか?場所変えて話せば良い訳じゃん!どう見たって足止めたくなるだろう?知ってる奴等なら」



「……………」



「まあ、確かに…間違っていないよな」



≪今の…聞かれた?≫



「なあ成美、好きなら想い伝えろよ。相手に気持ち伝えねー限り相手に気付かれねぇままだし後悔して次の恋したくても出来なくねぇか?」



「…それは……ていうか私の事なんて良いじゃん。彼女との事、考えろっつーの!」


「はいはい。お前の人生だもんな。想いを伝える伝えないは、お前次第だからな。後悔しないように行動しろっつー話。じゃあ、お先」



勇史は去って行く。


私と敏基は顔を見合わせる。



「今の…聞かれたかもな?」

「えっ!?やっぱりそうだよね……」

「でも、逆に良かったんじゃない?」

「えっ?」



頭をポンとする敏基。



「当たって砕けろ!」

「ええっ!?」



クスクス笑う敏基。



「さっ!帰ろうぜ!」

「うん、そうだね」





――― あなたが好き ―――



その一言が言えない


でも素直になる事は


大切だよね…?



あなたは


私の想いに


どう応えてくれる?














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