第5話 合併してから増える幸せな時間

それから数ヵ月が過ぎ、春4月。


私達の高校は合併をし、学校生活がガラリと変わった。




「何かガラリと変わったよねー」と、亜衣。


「本当だよねー。女子ばっかのクラスに男子だよ!何となくだけど、女子の雰囲気とか、会話も大人しくなった気しない?」



「するする」


「やっぱ、女子が加わると華だよなー」

「そうだねーって……えっ?敏基?」

「ねえ、ねえ、勇史知らない?」


「知らないよ」と、亜衣。


「見てない。その前に来てるの?」と、私。


「うん、学校には着いてるって事だったし……迷子になってんのかな?」


「一緒に教室行く話、してなかったの?クラスとか随分変わってるし、校舎も極端に違うから。ちなみにクラス一緒なの?」


「うん。俺達一緒だったけど、合併したら別行動にしようって事になって……共学になるとアイツ、どっちかっつーとモテモテコースだろうし。性格はイマイチだけど」



ガシッとヘッドロックされる敏基。



「うわっ!」


「だーれーがー、性格イマイチだって?尾北 敏基くーーん」


「えっ?あっ……いやぁ~…えっと…それは…」


「深沢 勇史君と言って~、イケメンだけど~…何故かこうさ…」


と、私。




「成美、テメーまで言うか?」

「エヘッ♪」

「エヘッ♪じゃねーよ!」



敏基から離れ、私の両頬を摘まんだ。



「痛い…だって…事実じゃん…」

「性格は、お前が上だろう?」



摘ままれた頬の手を払う。




「……痛ぁ…私は純粋で可愛い~女の子だよ♪」

「はあっ!?なあコイツぶん殴って良い?」

「暴力反対!」



私達は騒ぐ。


そして、新しいクラスと新しい高校生活を過ごすのだった。




それから1ヶ月が過ぎ。



「最近、嫌な事件、増えてるわね。あなたも気を付けて帰るのよ」


と、ママ。



「大丈夫、大丈夫。男友達と帰る事多いし。偶然、同じクラスに帰り道が一緒の仲良い子と一緒だから」


「じゃあ、出来る限り一緒に帰るようにしてくれる?心配で仕方がないから」


「うん」




ある日の学校帰り、私は友達と寄り道る事にし、日も暮れ辺りは暗かった。



「じゃあねー」



私は友達と別れ帰ろうとした時、例の事件の事はすっかり忘れて鼻歌混じりにご機嫌で帰る私。




その途中 ――――



「すみません、駅の方に出たいんですが、教えてもらえませんか…?」



車がじわりじわりと近付き、窓が開くと、声を掛けて来る男の人の姿。


私は自転車を止め降りる。



「駅ですか?すみません案内したいんですけど帰らないとヤバ…」




ナイフを出した。



「えっ…!?」



車を降りてくると腕を掴まれた。



ビクッ



「や、やだっ!離してっ!」



何とか押し退け私は走り去った。




そして ――――



キキー


急ブレーキの音がした。



≪えっ!?嘘っ!追い付かれた!?≫



振り向くとそこには自転車。


視線を辿ると、そこには……




「…勇…史…」

「…成美…?つーか、飛び出して危ねぇ……」

「…ごめん…」

「……どうか…したのか?」


「……車……」


「えっ?」


「…車…変な人に…今…」

「……えっ!?…大丈夫だったか?…それで自転車は?」

「置いて…逃げて…来たから…」



フワリと抱きしめられた。


ドキン



「送る。荷物は?」

「自転車…」

「じゃあ取りに戻ろう!行けるか?」



私はゆっくり頷き、逃げて来た先に移動した。




「自転車、邪魔にならない所に…」

「ううん…持って帰る…」

「でも…」

「明日も学校だし…置いておけないから…」

「…分かった。じゃあ一緒に帰ろう」



私達は自転車を押しながら帰る。





次の日 ――――



「成美ーー、お迎えよーー」

「お迎え?」



私は玄関に向かう。



「勇史?どうしたの?」


「いや…すっげー、怖かっただろうし気になっていたから、今日から俺の後ろ、お前乗ってけ!」


「えっ!?」


「お前の特等席」

「特等席って……」

「成美」

「何?ママ」



ズシッ

私の両手を掴み学校の荷物を渡された。



「行ってらっしゃい」



笑顔でそう言うと私を追い出すようにすると玄関の鍵を掛けられた。




「えっ!?」


「クスクス…やるなぁ~、お前の母親」

「いや…つーか…信じられない…」

「忘れ物は?」

「えっ?あっ、うん、大丈夫みたい」


「じゃあ行くぞ!」

「うん……」



私は後ろに乗る。



「乗った?」

「うん」

「しっかり掴まってな!」

「うん……安全運転でお願いします」

「やだっ!」


「なっ…!酷っ!」


「クスクス…恋人同士みたいにエロくぎゅうっとして離すなよ~。赤河 成美ちゃーん」


「馬鹿っ!」


「馬鹿とは何だよ!ここから学校まで歩いて行きますかぁ~?降ろしても良いんだよ~。成美ちゃーん」



私達は騒ぎながら学校に向かう。


その途中。



「よー、お二人揃って、ご出席ですかぁ~?」



茶化す敏基。



「いやぁ~、色々と事情あってさぁ~、昨夜、コイツ連れて行かれそうになったみたいで」


「あー、今、ニュースで言ってるもんなぁ~。大丈夫だった?成美」


「うん……勇史のお陰で、今、無事に勇史様様の背中に抱き付いてます♪」


「エロいよ!成美」と、敏基。


「そう?」


「成美がエロくぎゅうっと抱き付いてるから、しばらく送迎する間、俺、そのうち理性失いそう!」



と、勇史。



「もうっ!勇史っ!また、そうやって」



私達は騒ぐ。




「そのうち付き合うようになったりしてな」



と、敏基。




「いやいや、あり得ねーだろ?」と、勇史。


「うん。断じて無いよ」と、私。



私達3人は色々話をしながら登校する。


その途中、亜衣と合流し私4人は学校へと向かうのだった。




それから数週間後の学校帰り ―――




「二人って、こうして見ると、お似合いじゃね?」


「確かに良い感じだね」




敏基と亜衣は私達の姿を見つめながら話をする。



「良く言い合ってるけど何処か惹かれ合ってるような感じ?まるで、磁石みたいに」


「例え、お互いに想いなくても、その気がなくてもってやつ?」


「そうそう」





私達の


この幸せな時間は


いつまで続くのだろう?

















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