第24話 創作者はお気に入りキャラをメアリー・スーしがち問題
「メアリー・スーって何?」
しっかりした定義はないけど、簡単に言うとロリちゃんみたいなキャラだね。
「そうなの?」
うんうん。創作者の寵愛を受けたキャラ。物語はこのキャラを中心に回っているのだ。
「うーん…つまりは、“俺つえー”ってやつ?でも、それって問題なの?」
そこらへんが難しいところなんだよね。なんかさ。こういうおじさんみたいに、趣味で1人でシコシコ書いてるんだったら、別に好き勝手書いてもいいわけよ。
それに、この話はロリちゃんとおじさん以外出す予定ないしね。おじさんがロリちゃんをよしよーすしてても問題ないのだ。
「げぇッ」
嫌がられてる。
えっと…つまりは人気作で、登場人物が多くて、どのキャラにもそれなりにファンがついてる物語を書く人は大変だってこと。好きなキャラの扱いが悪いと、ファンは攻撃してくるもんだ。
「えー…ファンって怖いね」
一番の味方で、敵だからね。
前回のゲームの話にも関係あるんだけど、ゲームのシリーズものっていわばリレー小説みたいなもんだよね。同じ会社、同じタイトルだけど、作ってるスタッフはじわじわと入れ替えしている。
「…?それと、さっきのメアリー・スーって関係あるの?」
ちょっとだけね。
前作のキャラの扱いが悪いゲームって案外あるんだよね…。ファンとしては、思い入れのあるキャラをなんで???っと、ずっと疑問に思っていた。
でも視点をぐりっと変えて、創作者側に立って考えると、リレー小説を引き継いだ側としては、自分の創ったキャラを可愛がりたい。前の書き手が作ったキャラに愛着はない。だから扱いが雑になる……まぁ…ファンとしてはふざけんなって感じになる。創作者のファンじゃなくて、物語のファンだからね。
引き継いだ創作者が、そこをちゃんとわかった上で、続きを書いた作品はよかったりするんだよね。
でも、それがとてつもなく難しいって、いまならわかる。自分が創作したキャラに思い入れがあって、
「だから、題名が創作者はお気に入りキャラをメアリー・スーしがち問題?」
そうそう。いわば、創作者は学校の先生みたいな立ち位置じゃないといけないよね。一部の生徒にあからさまに贔屓したらいけないっていう。
「平等って難しくない?」
難しいけど、難しいからこそ、それが出来た物語は面白いんだよね。
「へ―…不思議。物語って好き勝手、書いていいって思ってた」
私も漫画家やゲームのシナリオライターって好き勝手に書けるもんだと思っていたんだ。でも、実際違う。1人じゃない。チームで作っている。好き勝手に出来ない部分もでてくるんだなーって。製作納期も決まっていて、描きたかったシーンを泣く泣く削ったなんて話を攻略本のスタッフ談話や小説のあとがきとかに書いてあるんだ。読んだ当時は、わからなかったよ。いや、なんで削るの?入れればよくない?ってね。
「えーほんとだよ。…なんで削ったりするの?」
前後の繋がりとか展開、テンポが悪くなる、ページ数とか、データ容量とがあるんだと思うよ~。
「ファンにはわからない舞台裏の苦労ってやつ?」
そうそう。
(閑話)
おじさんが、読んできたシナリオライターさんで印象に残った話をしたい。
変わった人がいて、自分の書いたシナリオのメインヒロイン嫌いって公言してる人がいた。当時、全く理解できなかった。…だって、自分が書くなら、自分が好きな女性のタイプをヒロインを書かない?
「うん。おじさんとか、まさに今そうしてるもんね…。うーん…その人が、すごくひねくれ者ってこと?」
それはあるかもしれないけど。いや、でも逆にね。創作者側はキャラに思い入れない方が淡泊に平等に描写してくれるのかもしれないって思った…ヒロイン嫌いって言ってる割には、しっかり主人公とヒロインがひっついて幸せエンドを書いてるんだよね~、その人。…嫌いだからこそ、ちゃんとそのヒロインの悪い所、良い所を書いてるんだよ…。シナリオを読み込むと…こういう性格の女は創作者の自分は嫌いだけど、この物語の主人公は好きなんだよ…ってスタンスが見えてきて…すごいな思ったよ。
「へぇー…面白いね」
うん。そういう書き方って面白いって思うけど、なかなか難しいんだよね。小説の書き方本とかに、よく『神の視点』なんて言われてるよ。
「神の視点?」
つまりは、読者・プレイヤー目線ってことだよ。これを意識して書くって本当に難しい。
「ふーん」
(閑話)
もうちょっと、メアリー・スーについて語ろうかな。
メアリー・スーの特徴はとにかく周りのキャラが持ち上げる!!具体的なエピソードもないけど、他キャラがべた褒めする。あと、かなり偏った思想を言っているのに、その考えに反発するキャラがいてもいいぐらいなのに、世界中、洗脳でもされたんか?というぐらいにすっごい!賛成!!君の言う通り!!って大絶賛の嵐だったりする。
「なんか、それって…今どき流行りの転生物でよく見かけない?」
あぁ…あれは、上手いよね。転生物を分析して思ったのは。ベースにする物語が上手い。だいたい転生先ってゲームの世界が多いじゃん。イージーモードだったら、つまらないと思うけど、そこは工夫してハードモードから始めてる話が多いよね。主人公の頭の中に攻略本がある状態だけど、選択肢を間違えると『死ぬ』という、結構過酷なものが多い。そこがハラハラして面白いって思う。
だから、転生ものって純粋に最初から俺つえーをやってるわけじゃないんだよね。やってる話は、あるかもだけど、人気のある話は、何かしら、読者をワクワクさせる工夫をしてると思うよ。
「いままでの話聞いてて思ったけど…それじゃ、この物語でメアリー・スー的なあたしは、何か試練があったほうがいいんじゃないの?」
うーん…なくていいじゃないかな?この話って成長とか無縁の話だし。
「成長と無縁なの!?」
うん。無縁。停滞こそ真実。
「うわぁ…」
よし!じゃあ、今日のうだうだタイムは終わり!ロリちゃん、おやつ食べよ!
「最後に、病んだこと言ってったけど…でも、まーいいや。やっと終わった…今日のおやつは何?」
えびせんべいだよ。
「珍しく、和菓子ね。ぼりぼり。しょっぱくてうんまい」
止まらないよね。
「やめられない。ぼりぼり」
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