第26話 家族の形はいろいろある

 今回は、家族の話とおじさんの視野の狭さの話だね。

「家族?」

 まぁ…ロリちゃんとおじさんの関係みたいなもんだよね。

「おじさんは、多分、親戚の変なおじさんだと思う」

 リアルにありそうな距離感を言われた。

「だって…ねぇ?おじさんが親ってちょっと嫌。あ、これ、さくさくして、美味しい…」

 今日のロリちゃんのおやつは、バターがたっぷり使われているクッキーだ。丸いアルミ缶に入っている。


 おじさんの家族ってさ。ゲームで例えると多分、SRスーパーレアぐらいなんだと思う。

「なんで、そう思うの?」

 家族仲、悪くないからね。子供の頃、食べるものがなくて困ったなんてことはなかったしね。だから、おじさんにとって、家族って、ほっとする場所なんだよね。

「家族ってそういうもんじゃないの?」

 おじさんも、そう思って生きてきたけど…最近、家族に関しての良いコミックエッセイがいっぱい出ててさ。で、例のごとく暇だから読んだんだけど。

「ふーん。それで?」

 崩壊してる家族もあるんだなぁって。

「崩壊してる家族?」

 うん。家族なのに、暴言吐いたり、暴力されたり。

 最近じゃあ、『毒親』とかっていう言葉も出てきたよね。

 そういう人にとっての家族って、ほっとする場所じゃないんだよ。

『家族を大事にしないといけない』って、おじさんみたいな家族だったら、当たり前だよなぁって思うんけど。そうじゃない人もいるんだなって。むしろ、縁を切った方がいい家族もいるんだよね。

 おじさんの同級生にも、多分そーいう家庭の人がいた。『親が嫌い』ってぽつりと言ったとき、つい『そういうこと言っちゃいけない』って言ってしまった。

 当時、中学生で自分の家族しか知らなかったおじさんは、自分の当たり前の価値観を他人に押し付けたんだ。その同級生は『そうだよね』って言って、それで会話は終わっちゃったけど。

「それって悪いことなの?」

 う~~~ん。悪くはないけど、良くもないよね。

 言葉って、辞書にのってある意味は同じだけど、その人にとっての言葉の存在感は違うから難しいよね。おじさんにとっての家族は、空気と同じぐらいの…ないと生きていけないぐらいの存在だけど、他人によっては、ゴキブリと同じくらい見たくはない存在だったりするんだよね。

「ふーん…難しいね」

 いろんな人がいるからさ。言葉の意味は統一できても、その言葉が表す価値・存在は統一できないんだ。それにさ、自分の感情を否定されるほど悲しいこともないからね。一般的な価値観とは、外れてるなぁっと思いつつ、自分の価値観を大事にした方がきっと、生きやすいと思うよ。

「う~?…家族が嫌いっていう価値観の人もいて、それを否定してやるなってこと?」

 うん。おじさんがもう一度、そういう場面に遭遇したら、今度は『そうなんだ』って言おうと思うよ。無理に共感する必要もないよ。人それぞれだから。

「無理に共感する必要ないかぁ…最近、なんというか共感しなきゃ…って圧を感じるもんね」

 同調圧力ってやつだよね。

「感動できないあたしって、情緒が死んでる?性格悪いの?って思ったりするけど…」

 そんなことはない。人それぞれ。人それぞれ。


「こーいう缶に入ってるクッキーってさ、早く食べないとしけっちゃうよね」

 うん。だいたい残り1~2枚残して、湿気るんだよね…。残ってるクッキーもそんなに美味しくないやつだし。

「世の中には、このしけったクッキー美味しいって思う人もいるの?」

 いると思うよ。

「その人の目の前で、まずいでしょ!ありえなーい!って言ってやるなってことでしょ?今回の話って」

 そうそう。『そうなんだ』って相づち打って終わりでいーじゃんって話。

「ふーん…サクサク」

 ロリちゃんは、相づちを打ちながら、クッキーを食べた。

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